財政破たんガーと税の役割と機能的財政論 | 真の国益を実現するブログ

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 財政破たんガー(日本の財政状況を過度に危惧する人)の中には、消費増税は必要なく、現在は積極財政が必要であり、歳入不足額は国債発行で対応すべきとの論に対し、では無税国家も成り立つのかとの反論を行う方があります。
 
 また、リフレ派の中には、現状の日本においてはマネタリーベースをいくら増加させても、インフレ率等経済への影響は小さいとの論に対し、では日銀が無尽蔵に政府発行の国債を買い取ってマネタリーベースを増加させれば、無税国家も成り立つのかと反論を行う方があります。

 いずれも、極論ではありますので無視すればよいレベルなのですが、政府の経費調達以外にも税金には役割があるという視点が抜け落ちています。

 もちろん、通説では、税金の主な役割は、国や地方自治体の経費を調達することとされています。http://xn--het921eba52kfp927h.com/tax/about_tax/role.html
 
 一方、従の役割としては、次の4つが上げられています。

1.富の再分配
 税の支払い能力という点ではすべての人が同じであるわけではありません。所得や資産などの負担能力の大きい人、つまり、税金を負担する能力の高い人に対して、より多くの税金を課し、負担能力の小さい人には税金を少なく(あるいは免除)すると共に、社会保障を厚くして国民の間の富の格差を縮め、社会の安定化・公平な社会秩序を維持する役割があります。
 このように税を利用して、所得や資産の再分配を図ることが行われています。

2.景気調整
 好況期には所得が増えることで税収も増加し、 逆に不況期には所得が減ることで税収も減少するので、民間の需要を自動的に調節するという景気の調整弁としての役割も担っています。これを自動調節機能(ビルトイン・スタビライザー)といいます。
 また、政府により景気調節のために景気後退時に減税、 景気過熱時には増税という手段がとられることがあります
 また、景気対策の一環として、減税や設備に増設に特別償却を認めるなど消費や投資の促進を図る事で景気を刺激する役割も税金にはあるのです。

3.経済政策の推進
 税金には、経済政策の手段としての役割があります。
 租税特別措置法によって、特別償却や税金免除の税額控除、早期償却などのほか軽減税率などを取り入れることによる減税措置などによって、経済政策を補充する事ができます。

4.国内産業の保護
 輸出を促進するために、輸出に対して減税したり、輸入を増やした業者に対して税の特典を与えたりするという役割も担っています。
 また、外国からの輸入に対して関税を課すことで、海外産業から国内産業を保護する役割もあります。ただ、最近はWTOなどの国際的な取り決めから、あまり国内産業を保護し過ぎると海外から非難されてしまいます。

 これに付け加えるとすれば、外部不経済の抑制があろうかと思います。例えば、大気汚染や水質汚濁を発生させるような財や経済活動に対する課税です。

 以上、税には政府等の経費調達以外にも重要な役割があるのです。

 一方、主たる役割である政府等の経費調達という通論に対して、否定的な考え方もありますので、そのような論をご紹介します。

 有名なものとしては、ラーナー(Abba P.Lerner)の機能的財政論というものがあります。
 ラーナーは、マクロ経済の根本的な目標は完全雇用と物価の安定にあり、政府にはそれの達成に向けて努力する責任があるとします。
 これは当たり前と言えば当たり前のことではあるのですが、その手段としての税金や国債に対する考え方において、伝統的な財政論を拒否します。

 政府は、マクロ経済の目標である完全雇用と物価の安定をはかるようなかたちで支出のトータルな比率を小さすぎないよう大きすぎないよう維持することにのみ集中すべきであり、政府が貨幣の支払いを必要とするという理由のみによって課税が実行されないというものです。
 つまり税金の主な目的は経費調達のためではなく、あくまで完全雇用や物価の安定などマクロ経済的な目的のための調整手段ということになります。

 さらには、金融の技術的な話になりますが、政府の借金、つまり国債発行も、経費調達のためというよりも、その第一の目的は、短期金利(インターバンクレート)を制御することにあるとします。
 つまり、短期金利市場において、完全雇用と物価の安定をはかるようなかたちで、一定の範囲内(利子率が低すぎても、短期金利市場に支障をきたします)に短期金利を制御するために、国債発行量を調節するということになります。実際に、米、英、日本等の中央銀行では、このような金融調節が行われてきました。

 まとめると、機能的財政論では、均衡財政主義(単年度であろうと、一定期間内に達成しようとする目標も)完全に拒否します。
 現政権において、是非取り入れて欲しい理論です。

 なお、こちらの研究ノートを参考に記載しております。
 http://www.unotheory.org/files/2-14-3.pdf

 次に、このラーナーの機能的財政論の後継として、レイ(L.Randall Wray)等による現代貨幣理論(Modern Money Theory、国家貨幣論とも訳されます)というものがあります。

 この貨幣理論では、ラーナーの論よりも、貨幣を駆動させるための税の役割がより明確に、さらには、完全雇用達成のための最後の雇用者としての政府支出プログラムといったような具体策が提示されるなどしています。
 興味がある方は、こちらのブログに詳しいので、一読をお勧めします。
http://blog.goo.ne.jp/wankonyankoricky/e/0703a2e62f1fd15d621657b63f5c6130


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