people 吉崎昇一さん | 四谷デッサン会

四谷デッサン会

四谷ひろばで毎週土曜日18:00-21:00開催中。誰でも参加できます。四谷ひろば施設利用一般団体登録:No.B-25。

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吉崎昇一さんの展示募集については本ページの最下をご確認ください。

 

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四谷デッサン会を利用する人々を紹介するコラム「people」。第2回は、四谷デッサン会プロデュース〝Dessin3.0〟第2弾として、2月19日からギャラリー・ゑいじうで個展「もっと暴れたい。もっとデッサン力つけたい。もっとつよい描くを描きたい。」を開催する、吉崎昇一さんが登場します。

 

――まずは、個展の開催おめでとうございます。

 

吉崎 ありがとうございます。

 

――吉崎さんのご職業を教えてください。

 

吉崎 長く海産物などを取り扱う商社を経営していましたが、一線を退き、現在は息子の会社に取締役という立場で携わっています。

 

 

 

――吉崎さんはどのようなきっかけで絵を描かれるようになったのですか?

 

吉崎 もともと、子どもの頃から彫刻などに興味を持っていて、いつか美術に携わりたいと思っていましたが、長男だったため家業を継ぐことをイメージしていました。それでもものづくりへの想いを抑えることができず、高校在学中、セツ・モードセミナーに通い始めました。

 

――セツ・モードセミナー(以下セツ)は、四谷ひろば(四谷デッサン会の開催会場)の近隣にあった学校ですね?

 

吉崎 ええ。セツは2017年、惜しまれつつ閉校してしまったのですが、私が通っていたのは現在も新宿区舟町に遺る校舎が、まだ青山の高樹町にあった頃のことです。当時は幼稚園の2階で運営されていました。

 

――セツは、ファッション、イラストの世界で著名な長沢節さんが開かれたのですよね?

 

吉崎 はい。当時『週刊よみうり』で連載されていた小説のカットを長沢先生が描かれていたのですね。そのカットに一目惚れして入学を決めました。セツ在籍期間中はいろいろなエピソードがあったのですが、長沢先生にはずいぶんかわいがってもらいました。ついにセツの校舎で、先生立ち会いのもと自身の結婚式を挙げさせてもらうほどでした(笑)

 

――学生時代の思い出を教えてください。

 

吉崎 その頃は、長沢先生が様々な世界で活躍されていたときで、先生の周りには多くの才能をもった人が集まって来ました。セツには、絵画科のほか、ファッション科が開講されていたのですが、当時は、ファッション界で活躍中のイッセイ・ミヤケさんや花井幸子さん、金子功さんなどが学校に出入りしており、すごく刺激的な日々を過ごしました。

 

――吉崎さんは、どのような絵を描かれていたのですか?

 

吉崎 長沢節先生は、写真があまり普及してなかった時代、ヨーロッパの最新ファッションの情報を絵で日本に伝える役目を担っていました。やがて、それまでの日本になかったファッションイラストというジャンルを築くことになるのですが、私もその影響でファッションイラストを志しました。

 

――ファッションイラストは、モデルの容姿と服飾を自由に表現する、スタイル画などとも呼ばれる作品のことですね?

 

吉崎 はい。当時は雑誌全盛期の時代です。たくさんの華やかなイラストを中心に、誌面が構成されていました。それだけファッションイラストレーターの活躍の場があったわけですね。私はセツ在学中からたくさんの作品をつくり、『平凡パンチ』という当時大人気だった青年誌のコンペでグランプリをもらいました。

 

 

 

――受賞の反響はいかがでしたか?

 

吉崎 一世風靡した雑誌での出来事だったため、様々なお声掛けをいただきました。けっきょく、家業を継ぐことになったため、本業にはしなかったのですが、絵は描き続けていて、作品は個展などで発表していました。

 

――四谷デッサン会には、どのようなきっかけで訪れるようになったのでしょうか?

 

吉崎 ほかのデッサン会に通っているときに噂を聞き、少しずつ足を運ぶようになりました。安価で描け、そして自由に描ける雰囲気が居心地良いと思って、毎週通うようになりました。

 

 

 

――吉崎さんが利用されている画材のことなどを教えてください。

 

吉崎 私は会に許可をもらって椅子を使用させてもらっているのですが、いつも、ほかの人よりひと回り大きな紙で描いているため、常設の画板が利用できません。絵画の持ち運び用ケースを画板代わりにして描いています。おもに鉛筆や筆で描きますが、ときに色鉛筆も利用しています。

 

――どんなことを考えてデッサン(クロッキー)を描いていますか?

 

吉崎 「オリジナルを大事に描く。そうすれば作為的でないものが出てくる。」こんな言葉を頭に置いて描いています。これは長沢先生に言われたものを自分なりに言葉にしたものなのですが、節先生の華麗なデッサンは、とかく真似されがちで、それは表面的には美しいものです。でも私はそういうものでない、自分の作品を模索することが大事だと思っています。あと先生は「うんこを出すみたいに描け」とも言ってましたね(笑)

 

 

 

――最後にひと言おねがいします。

 

吉崎 四谷デッサン会は、先に述べたように自由な雰囲気が素晴らしいと思います。自由な雰囲気の中、たくさんの自由な作品が生まれる場がいつまでも続くよう、心から応援しています。今回の展示で、そんな私の想いをくみ取ってもらえればと思います。そして最後に、私が自由に絵が描き続けられているのも、支えてくれる家族がいるからです。とくに妻にはこの場を借りて感謝の気持ちをつたえたいです。

 

――ありがとうございました。


取材・文 門脇大

写真 鈴木章記

 

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吉崎さんの展示の詳細は以下のとおりです。四谷デッサン会で描いた作品を中心に約30点を披露します。ぜひ皆さん足をお運びください。

 

吉崎昇一展

四谷デッサン会企画〝Dessin3.0〟


もっと暴れたい。

もっとデッサン力つけたい。

もっとつよい絵を描きたい。

 

セツ・モードセミナー出身。

人気画家を輩出した著名賞を受賞するなど

雑誌黄金時代に活躍した伝説の

ファッションイラストレーター吉崎昇一。

時代を超えて描き続ける

デッサン・スタイル画の〝いま(3.0)〟

を発表

 

会期:

2月19日(水)~27 日(木)

11 時00 分~19 時00 分 

最終日は17 時00 分まで

 

場所:

COFFEE& GALLERYゑいじう

新宿区荒木町 22 - 38

地下鉄丸の内線「四谷三丁目」より徒歩6分

都営地下鉄新宿線「曙橋」より徒歩5分

tel&fax 3356 - 0098

 

主催:四谷デッサン会