『桐島、部活やめるってよ』
監督:吉田大八
出演:神木隆之介
橋本愛
東出昌大
前野朋哉
大後寿々花
清水くるみ
山本美月
松岡茉優
太賀
菊池宏樹は放課後、学校の校舎裏で帰宅部の竜汰、友弘とバスケをしていた。
理由は三人と同じ塾に通う桐島の部活が終わるのを待つため。
宏樹も野球部に入っていたけど、しばらく前から部活に顔を出さなくなっていた。
キャプテンとは顔を合わす度に、試合だけでも、せめて応援にだけでも来てくれないかと言われている。
クラスでも目立たない存在の前田涼也は映画部部長。
最近高校生を対象にした映画コンテストで一回戦を突破したが、それさえ同級生からは嘲笑の的。
憧れているクラスメイトもいるけれど、そもそも女子と言葉を交わすことさえない。
映画部顧問からコンテスト作品の続編を撮るように言われているが、彼は自分の撮りたい脚本を執筆中。
今日も副部長に見せるため、『映画秘宝』を持ってきた。
バドミントン部に入っている東原かすみは、学校で行動するときは同じバドミントン部の実果、それに帰宅部の沙奈、梨紗と一緒にいる。
梨紗は学校で一番人気のある女子で、バレー部キャプテンの桐島の彼女。
沙奈は菊池宏樹と付き合っている。
お互いの心を探り合いながらも、行動を共にする四人。
クラスの中では頂点に君臨する。
バドミントン部はいつもバレー部の隣で練習をしていた。
キャプテンの桐島がリベロを務めているが、ポジションの重なる風助は身長の低さもあってサブとして備えていた。
試合出場の機会がないにも関わらず、一心に練習に打ち込む風助を、いつも実果は隣のコートから見守っていた。
「ところで桐島、部活やめたんでしょ?」
いつものようにバスケをするため、先にボールを取りに行ってた竜汰が言った。
しかし桐島の親友だと思っていた宏樹は、耳を疑った。
そんなこと一言も聞いていない。
同じ頃、桐島の彼女である梨紗もそのことを耳にする。
彼女も何も聞いていなかったらしく、何度携帯を鳴らしても連絡がつかない。
キャプテンを務めていたバレー部でもそのことが伝えられ、桐島の代わりに風助がスタメンとして試合に出場することになった。
瞬く間にこの話題は校内に広がり、桐島が中心となっていた生徒たちの学校生活が少しずつ崩れていく。
そんな事件から一番遠い存在だった前田率いる映画部は、念願だった作品
『生徒会・オブ・ザ・デッド』
の撮影に校内の片隅で取り掛かった。
現在学校内で起こっている問題など、自分に全く関係ないかのごとく・・・
バレー部のキャプテン、桐島が部活を辞めた。
小さな歪みは、やがて学校中に広がり、その事件に全員が振り回される。
吉田大八監督は、朝井リョウ原作のこの青春群像劇を見事に映像化。
と言うのはウソで、原作読んでないので見事かどうかわかんない。
物語は高校生の何気ない日常に起こった、些細なはずの事件が発端の5日間。
淡い恋心、グループ内での駆け引き、汗と涙、進むべき道、そしてゾンビ。
悩む内容や興味のあることは、やっぱり昔から変わらない。
ただ学校での生活は、さすがに20年以上経つと変わるもんだな。
世の中への希望とかも無いし、大人への反抗心も見られない。
何よりケンカになりそうな雰囲気になった時、みんな自分の気持ちを抑えて我慢しちゃんだよね。
ぼくらの頃より、かなり大人っぽい雰囲気。
「出来るヤツは何をやっても出来るし、
出来ないヤツは何をやっても出来ないってだけの話だろ」
クラスでも人気者の3人。
左から、
竜汰(帰宅部)
友弘(帰宅部)
そして菊池宏樹(野球部に籍を置いている帰宅部)
スポーツ万能、成績優秀、ルックスも良く女子にも人気。
特に宏樹は桐島の親友で、野球部での実力も一番、総合的に桐島に次いで校内№2らしい。
でも最近野球部に顔を出さなくなって、気の向くままに過ごす彼らとツルんでいる。
勝ち負けに興味がなく、理不尽な命令も従うことが嫌いだったぼくも、高校時代は帰宅部。
バイトに行って給料を貰ったり、学校とは違う人たちと知り合うことで、部活よりも充実した時間を過ごせると思ったから。
あっ、そうそう男子校だったから、
どんなに頑張っても女子に見てもらえない
ってのも大きかったかも。
今となっては部活を頑張ることで、人生において得られるものも大きいこともわかってる。
映画部があったら入ってたかも知れないな!
「やろうよ、俺たちのやりたい映画を撮ろうよ。
映画甲子園がダメなら、NHK、ぴあもあるし!」
前言撤回!
さすがにこれはムリだわ。
左から
部長の前田涼也
副部長の武文
頼りなさそうな部長もどうかと思うけど、
副部長キャラ濃すぎだろ!!
クラスの一番最下層だと思われている映画部。
顧問が脚本を書いたコンクール出展作品のタイトルも、
『君よ拭け、ぼくの熱い涙を』
そりゃ朝礼で嘲笑の的にもなるわ。
『映画秘宝』を愛読してる彼ら、当然青春映画は撮りたいテーマと思ってない。
映画作りに情熱を注ぎこむけど、教室では目立たないように存在感を消している。
彼の偏った作品の嗜好に、恥ずかしいながらもスゴく共感。
「先生、ロメロ知ってますか?『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』とか」
「し、知ってるよ、しかしお前マニアックなの知ってるな」
「全然マニアックじゃないですよ、フツーですよ」
フツーじゃないぞ!
偏ってることに早く気付け!
「そう、女子って面倒くさい生き物なの・・・」
クラスの派手系女子4人組。
仲良くツルんでいるように見える彼女たち。
でも4人とも性格、考え方もバラバラ。
こんなに気を使って一緒にいるなんて、ホントに友達だと思ってんの!?
何だか気持ち悪くない?こんな関係。
ホントにメンドくさい!!
東原かすみ(バドミントン部)
何も考えていないように見せているかすみは、いつも他の3人を一歩引いた目で見ている。
実は仲の良い実果にも言えない秘密がある。
中学の時にクラスメイトだった前田は密かに彼女に憧れている。
このコ、いまどきの黒髪女子ってやつですか?
目力の強いクールビューティで、派手な4人の中でも静かだけど主張が強い。
彼女の前でセクハラ発言をしたら、冷たい視線で吊し上げられそう。
苦手なタイプだな。
撮影時まだ15歳、マジでか。
宮部実果(バドミントン部)
義姉に憧れてバドミントンを始めたが、その義姉と父が事故死。
かすみのようにバドミントンの才能が無いことも自覚している。
いちばん印象が薄いルックスだけど、女子の中で最も印象に残る。
時折見せる表情には影が落ちているんだけど、映画中では語られないとんでもない理由が。
(WOWWOWでミニドラマしてます。カラーが合わないから本編に入れなくて正解。)
美人でもないし上手くもないけど、こんな雰囲気の女優が突然化けるんだよな。
左側:梨紗(帰宅部、桐島の彼女)
右側:沙奈(帰宅部、宏樹の彼女)
梨紗は、大人びたルックスと高校生離れしたスタイル、そして学校で№1である桐島の彼女。
校内で最も人気のある女子として、自他共に頂点だと思っていた。
桐島が登校しなくなって、気持ちも立ち位置もグラグラ。
確かに美人だけど、それだけっていうキャラクターを演じてるのなら見事に成功。
すべてそこそこの沙奈は、学校№2の宏樹と付き合い、№1女子の梨紗の親友であることが最大のステータス。
梨紗の立場が崩れると自分の立場も危うくなるため、何とか彼女をフォローしようとする。
自分のために。
みんなに調子のいいことを言ってるつもりだけど、発言することが誰かを傷付けることばかり。
こんな憎まれ役を演じるのはイメージが悪くなって損するけど、そこを上手くできたら周りが引き立つ。
AKBっぽいけど、違うのかな?
いまだに秋元才加しかわかんねー。
「カンケーねぇーだろ、桐島は!
テメーで何とかするしかねーだろ!」
試合前で焦りが出た副キャプテンの久保は、代わりのリベロの風助に苛立ちをぶつけてしまう。
桐島が辞めたことでポジションが回ってきた風助だが、いくら努力してもその穴を埋められない自分の不甲斐なさを痛感する。
バリバリの体育会系は、昔も今も変わらない。
部活動のこういう関係が昔から嫌いだったんだ。
「私がこんな気持ちじゃダメ。
部長として私がしっかりしなきゃダメなの」
教室にいる時は菊池宏樹のひとつ後ろに座っている沢島亜矢。
吹奏楽部の部長でもある彼女は、校舎の屋上でサックスの練習をしているフリをして、
放課後にバスケをしている宏樹を遠くから見つめていた。
宏樹には沙奈という彼女がいることがわかっていても、その想いを諦めることができない。
彼を追いかけて行く先々で、なぜか毎回映画部とモメてしまう。
映画部を押しのけてまで居座った彼女が目にしたものは・・・
バレー部キャプテン。
成績優秀。
彼女は学校で一番人気。
男子も女子も憧れる理想の高校生、桐島。
自然とヒエラルキーの頂点に立っていた彼が突然来なくなった時、学校は頂点どころか軸さえ失ってしまったことに気付く。
彼にぶら下がっていたほとんどの生徒たちは、自分の立ち位置さえ見失って狼狽えるだけ。
ここまで人を惹きつける彼の存在感は、『ユージュアル・サスペクツ』の
”カイザー・ソゼ”をも凌ぐほど。
映画館で偶然会った前田とかすみ。
上映されていたのは、塚本晋也作品の『鉄男』リバイバル。
自分の好みの映画にかすみも関心を持っていることを知って、テンション上がりまくりの前田。
中学以来の会話も気のせいか弾んでいる。
「こういう系好きなんだ」
「昔観たよ、身体がバカッと割れて中から何か出てくるヤツ」
「『ザ・フライ』?『ボディ・スナッチャーズ』?
あっ、わかった!『遊星からの物体X』だ!」
ああっ、自分と被って恥ずかしい・・・
もはやベテランの神木隆之介は、歩き方からジュースの飲み方まで、見事に前田のキャラクターを捉えている。
橋本愛も貫禄の演技。
このコ絶対負けずギライだよ、きっと。
この作品の真の主人公、菊池宏樹。
桐島が学校に来なくなってから、自分が今まで悩んでいたことに初めて気付く。
好きなことに打ち込む前田を見て、今まで抑えてきた感情が揺さぶられる。
「自分に足りなかったことは、これだったのか・・・」
彼を演じた東出昌大は演技初挑戦。
演技を知らない分、本気で宏樹になっている。
彼を含めた演技経験の浅い俳優たちが作品の脇にいることで、マンガ的になりそうな物語にリアリティを持たせている。
「桐島が来てる!」
それぞれ確かめたい想いを胸に、みんな桐島がいるという校舎の屋上へ駆けていく。
屋上で撮影をしていた映画部も混乱に巻き込まれてしまい、
とうとう前田の脳内補完装置が暴走を始める。
(妄想とも言う)
そして驚愕のクライマックスへ・・・
『現金に体を張れ』
『レザボア・ドッグス』
『エレファント』
『グラインドハウス』
『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』
上の映画以外にも、この作品を観て思い出した映画は数知れず。
どっちかっていうと洋画っぽい演出なんだけど、洋画好きは絶対に観ないジャンルだな~。
めっちゃ、もったいない!
後ろの席で観ていた高校生たち。
「何コレ、ワケわからん!」
「めっちゃモヤモヤしたまま終わるし」
そうだよ、青春とはモヤモヤするもんだ。
キミらはそのど真ん中にいるから、まだワケわかんねーんだ。
自分のモヤモヤに気付くときが来たら、この映画が言いたかったことも理解できるさ。
菊池宏樹に感情移入してしまったぼくとしては、個人的に今年一番と思えるくらい心に残った。
まるで思春期に悩んでいたことを誰かに見られていたよう。
何も行動せず、流れに身を任せていたことの歯痒かった記憶がよみがえる。
何もしなくても、どんなに悩んでも、時間は待ってくれない。
「僕たちはこの世界で生きていかねばならないのだから」
『生徒会・オブ・ザ・デッド』のセリフなんだけどね。
主題歌『陽はまた昇る』高橋優
その後の前田涼也が出演。
暑苦しい曲だけど、映画を観終わった時に流れるとスゴく合ってた。
塚本晋也監督 田口トモロヲ主演 『鉄男』
注:超グロいっす
桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)/朝井 リョウ
¥500
Amazon.co.jp
出演:神木隆之介
橋本愛
東出昌大
前野朋哉
大後寿々花
清水くるみ
山本美月
松岡茉優
太賀
菊池宏樹は放課後、学校の校舎裏で帰宅部の竜汰、友弘とバスケをしていた。
理由は三人と同じ塾に通う桐島の部活が終わるのを待つため。
宏樹も野球部に入っていたけど、しばらく前から部活に顔を出さなくなっていた。
キャプテンとは顔を合わす度に、試合だけでも、せめて応援にだけでも来てくれないかと言われている。
クラスでも目立たない存在の前田涼也は映画部部長。
最近高校生を対象にした映画コンテストで一回戦を突破したが、それさえ同級生からは嘲笑の的。
憧れているクラスメイトもいるけれど、そもそも女子と言葉を交わすことさえない。
映画部顧問からコンテスト作品の続編を撮るように言われているが、彼は自分の撮りたい脚本を執筆中。
今日も副部長に見せるため、『映画秘宝』を持ってきた。
バドミントン部に入っている東原かすみは、学校で行動するときは同じバドミントン部の実果、それに帰宅部の沙奈、梨紗と一緒にいる。
梨紗は学校で一番人気のある女子で、バレー部キャプテンの桐島の彼女。
沙奈は菊池宏樹と付き合っている。
お互いの心を探り合いながらも、行動を共にする四人。
クラスの中では頂点に君臨する。
バドミントン部はいつもバレー部の隣で練習をしていた。
キャプテンの桐島がリベロを務めているが、ポジションの重なる風助は身長の低さもあってサブとして備えていた。
試合出場の機会がないにも関わらず、一心に練習に打ち込む風助を、いつも実果は隣のコートから見守っていた。
「ところで桐島、部活やめたんでしょ?」
いつものようにバスケをするため、先にボールを取りに行ってた竜汰が言った。
しかし桐島の親友だと思っていた宏樹は、耳を疑った。
そんなこと一言も聞いていない。
同じ頃、桐島の彼女である梨紗もそのことを耳にする。
彼女も何も聞いていなかったらしく、何度携帯を鳴らしても連絡がつかない。
キャプテンを務めていたバレー部でもそのことが伝えられ、桐島の代わりに風助がスタメンとして試合に出場することになった。
瞬く間にこの話題は校内に広がり、桐島が中心となっていた生徒たちの学校生活が少しずつ崩れていく。
そんな事件から一番遠い存在だった前田率いる映画部は、念願だった作品
『生徒会・オブ・ザ・デッド』
の撮影に校内の片隅で取り掛かった。
現在学校内で起こっている問題など、自分に全く関係ないかのごとく・・・
バレー部のキャプテン、桐島が部活を辞めた。
小さな歪みは、やがて学校中に広がり、その事件に全員が振り回される。
吉田大八監督は、朝井リョウ原作のこの青春群像劇を見事に映像化。
と言うのはウソで、原作読んでないので見事かどうかわかんない。
物語は高校生の何気ない日常に起こった、些細なはずの事件が発端の5日間。
淡い恋心、グループ内での駆け引き、汗と涙、進むべき道、そしてゾンビ。
悩む内容や興味のあることは、やっぱり昔から変わらない。
ただ学校での生活は、さすがに20年以上経つと変わるもんだな。
世の中への希望とかも無いし、大人への反抗心も見られない。
何よりケンカになりそうな雰囲気になった時、みんな自分の気持ちを抑えて我慢しちゃんだよね。
ぼくらの頃より、かなり大人っぽい雰囲気。
「出来るヤツは何をやっても出来るし、
出来ないヤツは何をやっても出来ないってだけの話だろ」
クラスでも人気者の3人。
左から、
竜汰(帰宅部)
友弘(帰宅部)
そして菊池宏樹(野球部に籍を置いている帰宅部)
スポーツ万能、成績優秀、ルックスも良く女子にも人気。
特に宏樹は桐島の親友で、野球部での実力も一番、総合的に桐島に次いで校内№2らしい。
でも最近野球部に顔を出さなくなって、気の向くままに過ごす彼らとツルんでいる。
勝ち負けに興味がなく、理不尽な命令も従うことが嫌いだったぼくも、高校時代は帰宅部。
バイトに行って給料を貰ったり、学校とは違う人たちと知り合うことで、部活よりも充実した時間を過ごせると思ったから。
あっ、そうそう男子校だったから、
どんなに頑張っても女子に見てもらえない
ってのも大きかったかも。
今となっては部活を頑張ることで、人生において得られるものも大きいこともわかってる。
映画部があったら入ってたかも知れないな!
「やろうよ、俺たちのやりたい映画を撮ろうよ。
映画甲子園がダメなら、NHK、ぴあもあるし!」
前言撤回!
さすがにこれはムリだわ。
左から
部長の前田涼也
副部長の武文
頼りなさそうな部長もどうかと思うけど、
副部長キャラ濃すぎだろ!!
クラスの一番最下層だと思われている映画部。
顧問が脚本を書いたコンクール出展作品のタイトルも、
『君よ拭け、ぼくの熱い涙を』
そりゃ朝礼で嘲笑の的にもなるわ。
『映画秘宝』を愛読してる彼ら、当然青春映画は撮りたいテーマと思ってない。
映画作りに情熱を注ぎこむけど、教室では目立たないように存在感を消している。
彼の偏った作品の嗜好に、恥ずかしいながらもスゴく共感。
「先生、ロメロ知ってますか?『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』とか」
「し、知ってるよ、しかしお前マニアックなの知ってるな」
「全然マニアックじゃないですよ、フツーですよ」
フツーじゃないぞ!
偏ってることに早く気付け!
「そう、女子って面倒くさい生き物なの・・・」
クラスの派手系女子4人組。
仲良くツルんでいるように見える彼女たち。
でも4人とも性格、考え方もバラバラ。
こんなに気を使って一緒にいるなんて、ホントに友達だと思ってんの!?
何だか気持ち悪くない?こんな関係。
ホントにメンドくさい!!
東原かすみ(バドミントン部)
何も考えていないように見せているかすみは、いつも他の3人を一歩引いた目で見ている。
実は仲の良い実果にも言えない秘密がある。
中学の時にクラスメイトだった前田は密かに彼女に憧れている。
このコ、いまどきの黒髪女子ってやつですか?
目力の強いクールビューティで、派手な4人の中でも静かだけど主張が強い。
彼女の前でセクハラ発言をしたら、冷たい視線で吊し上げられそう。
苦手なタイプだな。
撮影時まだ15歳、マジでか。
宮部実果(バドミントン部)
義姉に憧れてバドミントンを始めたが、その義姉と父が事故死。
かすみのようにバドミントンの才能が無いことも自覚している。
いちばん印象が薄いルックスだけど、女子の中で最も印象に残る。
時折見せる表情には影が落ちているんだけど、映画中では語られないとんでもない理由が。
(WOWWOWでミニドラマしてます。カラーが合わないから本編に入れなくて正解。)
美人でもないし上手くもないけど、こんな雰囲気の女優が突然化けるんだよな。
左側:梨紗(帰宅部、桐島の彼女)
右側:沙奈(帰宅部、宏樹の彼女)
梨紗は、大人びたルックスと高校生離れしたスタイル、そして学校で№1である桐島の彼女。
校内で最も人気のある女子として、自他共に頂点だと思っていた。
桐島が登校しなくなって、気持ちも立ち位置もグラグラ。
確かに美人だけど、それだけっていうキャラクターを演じてるのなら見事に成功。
すべてそこそこの沙奈は、学校№2の宏樹と付き合い、№1女子の梨紗の親友であることが最大のステータス。
梨紗の立場が崩れると自分の立場も危うくなるため、何とか彼女をフォローしようとする。
自分のために。
みんなに調子のいいことを言ってるつもりだけど、発言することが誰かを傷付けることばかり。
こんな憎まれ役を演じるのはイメージが悪くなって損するけど、そこを上手くできたら周りが引き立つ。
AKBっぽいけど、違うのかな?
いまだに秋元才加しかわかんねー。
「カンケーねぇーだろ、桐島は!
テメーで何とかするしかねーだろ!」
試合前で焦りが出た副キャプテンの久保は、代わりのリベロの風助に苛立ちをぶつけてしまう。
桐島が辞めたことでポジションが回ってきた風助だが、いくら努力してもその穴を埋められない自分の不甲斐なさを痛感する。
バリバリの体育会系は、昔も今も変わらない。
部活動のこういう関係が昔から嫌いだったんだ。
「私がこんな気持ちじゃダメ。
部長として私がしっかりしなきゃダメなの」
教室にいる時は菊池宏樹のひとつ後ろに座っている沢島亜矢。
吹奏楽部の部長でもある彼女は、校舎の屋上でサックスの練習をしているフリをして、
放課後にバスケをしている宏樹を遠くから見つめていた。
宏樹には沙奈という彼女がいることがわかっていても、その想いを諦めることができない。
彼を追いかけて行く先々で、なぜか毎回映画部とモメてしまう。
映画部を押しのけてまで居座った彼女が目にしたものは・・・
バレー部キャプテン。
成績優秀。
彼女は学校で一番人気。
男子も女子も憧れる理想の高校生、桐島。
自然とヒエラルキーの頂点に立っていた彼が突然来なくなった時、学校は頂点どころか軸さえ失ってしまったことに気付く。
彼にぶら下がっていたほとんどの生徒たちは、自分の立ち位置さえ見失って狼狽えるだけ。
ここまで人を惹きつける彼の存在感は、『ユージュアル・サスペクツ』の
”カイザー・ソゼ”をも凌ぐほど。
映画館で偶然会った前田とかすみ。
上映されていたのは、塚本晋也作品の『鉄男』リバイバル。
自分の好みの映画にかすみも関心を持っていることを知って、テンション上がりまくりの前田。
中学以来の会話も気のせいか弾んでいる。
「こういう系好きなんだ」
「昔観たよ、身体がバカッと割れて中から何か出てくるヤツ」
「『ザ・フライ』?『ボディ・スナッチャーズ』?
あっ、わかった!『遊星からの物体X』だ!」
ああっ、自分と被って恥ずかしい・・・
もはやベテランの神木隆之介は、歩き方からジュースの飲み方まで、見事に前田のキャラクターを捉えている。
橋本愛も貫禄の演技。
このコ絶対負けずギライだよ、きっと。
この作品の真の主人公、菊池宏樹。
桐島が学校に来なくなってから、自分が今まで悩んでいたことに初めて気付く。
好きなことに打ち込む前田を見て、今まで抑えてきた感情が揺さぶられる。
「自分に足りなかったことは、これだったのか・・・」
彼を演じた東出昌大は演技初挑戦。
演技を知らない分、本気で宏樹になっている。
彼を含めた演技経験の浅い俳優たちが作品の脇にいることで、マンガ的になりそうな物語にリアリティを持たせている。
「桐島が来てる!」
それぞれ確かめたい想いを胸に、みんな桐島がいるという校舎の屋上へ駆けていく。
屋上で撮影をしていた映画部も混乱に巻き込まれてしまい、
とうとう前田の脳内補完装置が暴走を始める。
(妄想とも言う)
そして驚愕のクライマックスへ・・・
『現金に体を張れ』
『レザボア・ドッグス』
『エレファント』
『グラインドハウス』
『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』
上の映画以外にも、この作品を観て思い出した映画は数知れず。
どっちかっていうと洋画っぽい演出なんだけど、洋画好きは絶対に観ないジャンルだな~。
めっちゃ、もったいない!
後ろの席で観ていた高校生たち。
「何コレ、ワケわからん!」
「めっちゃモヤモヤしたまま終わるし」
そうだよ、青春とはモヤモヤするもんだ。
キミらはそのど真ん中にいるから、まだワケわかんねーんだ。
自分のモヤモヤに気付くときが来たら、この映画が言いたかったことも理解できるさ。
菊池宏樹に感情移入してしまったぼくとしては、個人的に今年一番と思えるくらい心に残った。
まるで思春期に悩んでいたことを誰かに見られていたよう。
何も行動せず、流れに身を任せていたことの歯痒かった記憶がよみがえる。
何もしなくても、どんなに悩んでも、時間は待ってくれない。
「僕たちはこの世界で生きていかねばならないのだから」
『生徒会・オブ・ザ・デッド』のセリフなんだけどね。
主題歌『陽はまた昇る』高橋優
その後の前田涼也が出演。
暑苦しい曲だけど、映画を観終わった時に流れるとスゴく合ってた。
塚本晋也監督 田口トモロヲ主演 『鉄男』
注:超グロいっす
桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)/朝井 リョウ
¥500
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