ハマのロッキーの野球レポート:7/14県相模原・宮崎に見た「優良制球力」の基準・・ | スポーツを語ろう-ZE!!

ハマのロッキーの野球レポート:7/14県相模原・宮崎に見た「優良制球力」の基準・・

7/14日、バッティングパレス相石スタジアム平塚で行われた高校野球神奈川県大会2回戦・県相模原ー百合丘の試合で9回を投げて2安打無失点、与四球1、奪三振は実に14を数えるなど圧巻のピッチングを見せた県相模原のエース・宮崎晃亮。直球・変化球ともに球威もそこそこあり、変化球のキレなどは抜群。被安打2とはいってもうち1安打はショートへの強襲内野安打で私自身は当初てっきり味方ショートのエラーだと思っていたほど。つまりヒット性の打球はわずかにひとつ。百合丘打線はファウルにするのすらままならず、まさしくお手上げというくらい・・文字通りキリキリ舞いさせられたといった感じだった。だがそれ以上に目についたのがピッチングテンポの速さと常にストライク先行の投球内容。与四球1を記録・・それがストレートの四球だったのだが私自身などはこれだけで異変を疑いかけるほど全体的に制球が安定しており、この四球以外はほとんどワンボールツーストライクから三振なり凡打なり決着をつけていたのだから大したものである。そうした表面的な数字面ばかりでなく、マウンド上での佇まいも堂々としたもの。迷いらしきものは全く感じなかった。それでこのピッチング内容だから相当自信を持ってこの試合に臨んでいたに違いない。



ここから本題に入ろう。27個のアウトに被安打2、与四球1ということは相対した打者はちょうど30人。
正直・・できればちゃんとした統計でもとればよかったぐらいにまで思ったものなのだがまさしく後の祭り(苦笑)。
だからだいたいの目安でしかものが言えないが、私が見た限りその30人のうち20人以上がワンボールツーストライクで決着がついていた。ということは少なくともその20人以上に限れば4球のうち3球がストライクだったのだから実に七割五分の割合でストライクを奪っていた計算になる。
(この場合ツーストライクからのファウルは対象から除外する。どういう球であれ打者が手を出したということは打者にとってはその球はストライクと同じ。だが一方でツーストライクからファウルでカットされたということは打者にとってそのボールはギリギリながらタイミングが合っていたということにもなるので・・とりあえず痛み分けというふうに解釈しよう。といっても宮崎の場合ファウル自体でさえそうそうなかった上にツーストライクからということになるとほとんどが変化球を主体にしてバットには空を切らせるかひっかけるかさせていたからほぼ対象外と考えていい。)

だがたった1つとはいえ先に述べたようなストライクなしのストレートの四球があったり、ツーボールからカウントを整え直して2-2に追い込んでから打ち取ったケースやワンボールワンストライクから打ち取ったケースもわずかながらあるのでその七割五分をそのまま当てはめるのも暴論ではある。だが先日のピッチングの条件をすべて加味して考えると、七割五分はあり得ないとしてどう計算しても七割前後・・それでも厳しければ百歩譲って六割五分はストライクが入っていたのではないかというのが私の見方である。ひとつのモデルケースとして、打者30人中ワンボールツーストライクから打ち取った打者が22人、スリーボールノーストライクからの四球=先に述べたストレートの四球=が一人、残り7人のうちツーボールツーストライクから打ち取ったのが4人、残りがワンボールワンストライクから打ち取った打者として計算すればよい。実際の球数などを含めてちゃんとしたデータをとったわけではないのであくまでモデルケースとして扱っているがキチンと計算すればやはり六割五分くらいにはなると思う。

もっともストライク奪取率がどうあろうと2安打1四球というデータだけでも好投したことを雄弁に証明しうるだけの説得力は十分備わっている。とりわけ四球がわずか1・・プロでも出せる人がそうそういないのだから堂々たるものであるのはいうまでもない。これだけの好投はなかなかできない。ましてどんなに制球力がいいといわれるピッチャーでもだいたい1試合に2、3個の四球は出しているからそのデータが正しいとしてそこに固執する必要もない。もちろん四球が少ないから勝てる、多ければ負けるといった類いのものでもない。第一制球が悪ければ球威など他の長所で補えばすむ話でもある。

ただ、六割五分もストライクをとればそれだけの好投は間違いなく可能だ、という証明には十分なるだろう。何しろフォアボールをいくつもいくつも出したって勝利投手になる人はなるのだから。で、そもそもフォアボールが出た時点でその打者に対するストライク奪取率は5割を切るわけである。となれば四球を出せば出すほどストライク奪取率はかなり低下するのである。
アマチュアはおろかプロでも制球難の投手は少なくないわけだが、それを考えれば六割五分まで計上できなくても少なくとも六割もストライクを叩き出せればその人のコントロールは十分優良なものとなる。先に述べたツーストライクからのファウルをどう扱うかというような条件もあるからあまり厳密なこともいえないかも知れない。だがそれを加味したって六割もストライク相当の球が投げられれば優良制球投手の資格は十分有していることになるだろう。何しろそのファウルの話にしたって、考えようによってはどのカウントから打とうが打者がファウルにするということは打者にとってその球は「ストライクをとられる可能性が高い」ということの表れでもあるはずなのだから。その意味ではそれがツーストライクからのものであったって、ファウルだって立派な「ストライク相当の球」なのだから・・そう考えるとかえってストライク奪取率の上昇にも繋がる。

断っておくが、もちろんストライク奪取率が高いからといってもそれだけでは好投手としての条件を満たしたことにはならない。ストライクが多くたってそのストライクが単なる甘い球でしかない、ということであればそんな投手はストライクをとる確率が高いかわり、一方では単なる「ヒット配給係」で終わりかねない。また考えようによっては勇気を持って「ボールになっても際どいコースに投げる」ことができないことの裏返しにすぎないとも言える。だからストライク相当の球を投げるといってもそれにも質があることは考えなければならない。なのでそれだけでピッチャーの価値を決めることはできないのはいうまでもない。時にはストライクを捨てる度胸も必要。ボール覚悟で打者の苦手コースをつく・・そうすることで打ち損じてくれればもうけもの。それが"投球術"というものであり、それはストライク奪取よりも大事なことである。そしてそれこそが単なるストライク奪取を超えた「制球力」なのである。

ストライクにこだわるのは大事かつ不可欠だが、それはあくまで勝利への近道。勝利よりもストライクへの意識が先行してしまって投げてみれば甘い球、それで逆転本塁打でも打たれてしまった、なんてことにでもなってしまっては本末転倒。だから、当たり前のことだがあくまで勝利が最優先テーマであってしかるべきでコントロールは副次的なものでなければならない。
だが発想を逆にすればストライク奪取率が高いほど有利になるのもいうまでもないのだから目安にして損はないはずだ。そしてその目安として漠然としたものながら出てきた数字が"六割以上"というものだ。それを県相模原・宮崎君のピッチングに気づかせてもらった。
そんな考えをふと抱かせるほど先日の彼のピッチングには惚れ惚れとしたものを感じたのである。

ただ、あえて欲を言えばツーストライクをとったあと必ず一球外してボールカウントを必ずひとつ計上していたのだが・・それも彼のピッチングのリズムを形づくる要素のひとつだとわかっていてもこれだけ見事な投球内容を目の当たりにすると「ひとつぐらいノーボールツーストライクからの三球三振を見たかったな・・」という気持ちにもなった。やはり贅沢だろうか?(笑)
そう思ってはいてもそれが少々勿体ないのだ(苦笑)

県相模原は今春の神奈川県大会で準優勝。関東大会にも出場している。一戦一戦力をつけ、今年の夏は90年横浜商以来となる「公立校の県内制覇」の期待すらかかり始めている。けれどそれ以上に感じたのがエース宮崎のみならず、ナイン全体の落ち着いた試合運び。
思えば昨年30年ぶりに準優勝に輝いた向上も春の関東大会を経験し、しかもこちらは準V。
また昨年の向上も今春の県相模原もそれまで神奈川県大会以外での公式戦を経験していないはずだが・・県外大会を経験したチームが目に見えて一皮剥けた雰囲気を漂わすのは単なる気のせい?偶然や錯覚に過ぎないのだろうか?