カール・ニールセン

 

というデンマークの作曲家がいます

 

 

交響曲第4番「不滅(滅ぼし得ざるもの)」

 

が有名です

 

 

 

オーケストラの友人に不滅をやろうよと以前誘われたのですが、仕事の折り合いがつかずに乗ることができず残念な思いをしたことがあります

 

いつかは不滅やりたいです!!

 

 

さて、前回書いた結核ですが、こちらは滅したい感染症です

 

結核菌の鏡検のためには、チール・ニールセン染色というのを行います

 

カール・ニールセンと一文字違いです

 

 

最近は通常グラム染色を行いますが、結核菌をふくむ抗酸菌は菌体に脂肪酸が多く染色液に染まりにくいので、わざわざチール・ニールセン染色を行うのです

 

 

 

研修医の頃、外来に結核を疑う患者さんがいらっしゃった際に、当時の内科の偉い先生(オーボエ吹き)から

 

「不滅染色しとけ」

 

と言われて、とっさに何のことかわからずいたら

 

「アホ、カール・ニールセン染色や!皆までいわすな!!」

 

 

と怒られたのは良い思い出です

 

今思い出しても不滅と結核は遠すぎる・・・

 

さらにいくら僕がチェロ弾きだからと言っても

 

 

「結核とカール・ニールセンは結びつかねーよ!」

 

 

と今になっても思いますので、まったく良い思い出ではないですね

 

こんな理不尽なアイディアをもらえる私はきっと特別な存在なのだと感じました

 

 

 

今では私が指導医

研修医にやれと伝えるのはもちろん「不滅染色」

 

なぜなら彼もまた特別な存在だからです

(なんのことか全くわかってもらえません)

 

 

 

 

さて、真面目な話を

 

抗酸菌の存在するチール・ニールセン染色では、青く染まった組織の中に赤い桿菌が浮かび上がります

 

 

(赤紫の細いのが結核菌)

 

 

初めて自分の目で結核菌を発見したときは、嬉しさと悲しさと複雑な気持ちが芽生えました

 

抗酸菌を見つけるのは大変ですが、見つけた時点で目の前の人が結核かもしれない可能性がぐっと高まります

 

 

 

結核菌数の記載方法は、以前はガフキー号数でしたが、2000年に改定された結核菌検査指針からは−〜3+までの5段階記載する簡便な方法に改められています

 

 

記載法

チール・ニールセン染色結果

(1000倍鏡検)

ガフキー号数(参考)

0/300視野

G0

±

1-2/300視野

G1

1+

1-9/300視野

G2

2+

≧10/100視野

G5

3+

≧10/1視野

G9

 

基本的にはこれは集菌法(検体を遠心機にかけて、沈渣を塗抹)での記載なので、直接塗抹の場合には陽性か陰性かで記載します

 

つまり、上の写真では

「抗酸菌染色塗抹 陽性」

です

 

 

 

さて、ここで表をもう一度ご覧ください

 

ご覧になればお分かりの通り、集菌法ですら300視野に数個みたいなものを探すことになります

 

これ、かなり大変なんです

 

 

直接塗抹ならなおさら大変ということは想像に易いわけです

 

 

いるかいないかわからないものを探すことになります

 

「ウォーリーをさがせ!」の何倍も難しいのです

 

 

 

 

ウォーリーは絶対にいてくれるので、どんなに見つからなくても頑張って探そうという勇気がでてきます

 

しかし「いるかいないかわからないウォーリーを探せ!」では誰も買わないと思います

 

 

そうはいっても、結核菌を排菌している人を野放しにはできないので、頑張って探すのです

 

 

当院では、夜間は染色を技師さんが安全キャビネット内で行い、医師が顕微鏡で探すというシステムになっております

 

 

深夜に泣きそうになりながら探していたわけです

 

いないことの証明は本当に難しいです