尿管結石で救急搬送

先日、美容室を新規開拓

 

髪を切ってもらっていると美容師さんが

 

「そういえば僕この間救急搬送してもらったんですよね……」

 

と言ってきました

 

 

 

「もしかして尿管結石ですか?」

 

と聞いたらビンゴでした

 

 

エスパーかと突っ込まれましたが、若い男性が救急搬送される場合というのは、交通事故か尿管結石の可能性が高いのです

 

ただ交通事故であれば救急搬送されたという話ではなく、事故った話そのものをするでしょうから、尿管結石ですかと聞いたわけです

 

若い男性が搬送される理由について説明したら美容師さんも納得していました

 



明け方、いかんともしがたいという感じでひたすら悶絶している大人が搬送されたら(男性の方が多い印象)、問診を取るまでもなく尿管結石を疑うことになります

 

多くの場合、超音波検査で腎盂の拡張や尿管の拡張、結石所見(結石の検出感度は低い)を探し、数十秒で診断がつきます

 

ボルタレン(ジクロフェナク)を坐薬で使用し、痛みが治まったところで冷静に病気の説明をすることになります

 

 

石の大きさと痛みの関係

通常は自然排石されるので放っとけばいいのです

 

排石されやすさは石の大きさにより、自然排石される可能性は、5 mm未満で68%(95%信頼区間[CI]:46~85%)、5〜10 mm で47%(95%CI:36〜59%)ということです[1]

 

石のサイズが10mmを超えると破砕が必要になります

 

今は超音波ですが、昔は器械で石を砕いていたようです

 

砕石位は尿道に器械を入れるための姿勢というわけです

 

 

 

縛り付けられて尿道に器械を突っ込まれて砕石・・・

 

想像しただけで悶絶ものです

 



さて、石は大きいほど出にくいのですが、石が大きければ大きいほど痛みも強いのでしょうか? 

 

この度、この疑問に対する答えを提示してくれた文献を見つけました[2]

 

尿管結石による疼痛をVisual Analog Scale(痛みの強さを100%のうちどの程度かを主観的に評価)で定量し、CTで測定した結石のサイズとの関係を調べています

 

 

その結果、意外なことに

 

結石のサイズと疼痛の強さには相関がないと結論されたようです

 

大きい方が痛そうなのに……!

 

 

悶絶する痛みをどうする?

目の前で悶絶する患者さんの鎮痛への第一選択は非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)です

 

尿管の攣縮を減らしたり、腎血流を減らして腎皮膜の内圧を減らすことも期待されます

 

たまに急速輸液をして「結石を流すんだー」みたいなことをする人がいますが、急速輸液は排石や疼痛軽減に寄与しないとされていますので、無益な大量輸液はお控えください[3]

 

疼痛がどうしようもない時にはオピオイドの導入を考えることもあります

 

臭化ブチルスコポラミンが使用されることもありますが、エビデンスは乏しい状況です

 

一方、鎮痙目的に芍薬甘草湯を使うと即効性もあって良いです[4]

 

悶絶する人を見たら使用を検討してください

【参考文献】
[1] Preminger GM, et al. Eur Urol. 2007;52:1610-31.
[2] Sasmaz Mİ,et al. Am J Emerg Med. 2019. pii: S0735-6757(19)30390-0.
[3] Worster AS, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012 Feb 15:CD004926.
[4] 日本泌尿器科学会、日本泌尿器内視鏡学会『尿路結石症診療ガイドライン 2013年版』(金原出版、2013年)