文部科学省が、6月28日に全国の大学付属病院で働く医師や歯科医師にどのくらい無給医がいるかという調査報告を出しました

 

いないいないと言っていたものの、なんと2191名の無給医がいたということです

 

僕は驚きましたが、もっと驚いたのは、2191名は今後給与を支払われることになる人で、無給にもかかわらず今後も給与を払われる予定のない人が3594名いるということでした

 

給与を支給していないが合理的な理由がある

 

ということです

 

「自己研さんや自己研究の推進などの目的で診療に従事している」

 

「大学病院とは別に本務先のある医師で、本務先の業務命令により研修として診療に従事しているため、大学病院での診療従事分も含めて本務先から給与が支給されている」

 

だから給与の支払いをしなくてもいいということです

 

 

 

僕は学生時代から大学付属病院でこういう実態があるということは伝え聞いておりましたし、父親も相当な薄給で大学付属病院勤務をしていたという話を聞いていたので、大学生の頃から変だと思っていました

 

大学病院で研修しようと積極的になれなかった理由の一つです

 

勉強させてもらっているので給与をもらえるような身分ではないという意見が多いのかもしれませんが、僕は単純にそうは思えなかったのです

 

 

それであれば教育内容を公開できるような形で提示できなくてはいけないでしょうし、教育効果も提示できないといけないでしょうし、その教育課程ではちゃんと授業料を徴収すべきですし、それとは別に労働により雇用者が得た利益の一部を給与として還元するように明文化する必要があるでしょう

 

 

差し引き考えてオチンギンなしね!とか、月5000円ね!みたいなどんぶり勘定をするのは気持ち悪いと感じてしまうのです

 

 

 

奇しくも、7月1日に厚生労働省労働基準局長から医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方について文書が出されました

 

要点をまとめると、

 

①労働時間内に、勤務場所において研鑽を行う場合については、研鑽に係る時間は労働時間となる

 

②診療等の本来業務と直接の関連性がなく、上司の指示によらずに行われる研鑽は労働時間ではないが、上司に言われて研鑽をやる限りは、本来業務と直接の関連性がなくとも労働時間

 

③論文や学会の準備は業務上必須じゃなくて上司からの指示がなければ労働ではないが、上司からの指示があれば労働

 

④手術や処置の技術向上のための見学は自発的に行う上では労働ではないが、上司の指示があったり、診療に携わったりするなら労働

 

 

 

非常にわかりやすいと思います

 

普通の感覚だと思います

 

 

 

社会は医師に一定の知識と技術を求めます

 

それには個人だけではなく、病院をあげて応えなくてはなりません

 

今や医師個人の能力ではなく、病院をあげた高度な医療の質を求められていますので

 

その為の技能維持を専門職に求めるのであれば、それに必要な時間は労務でなければならないと思います

 

 

 

近年、初期臨床研修だけではなく専門研修課程(専攻医課程)いわゆる後期研修制度も形になってきました

 

この制度は、社会が求める一定レベルの技能をもつ医師を育てる計画です

 

 

自己研鑽したい気持ちは当然若手医師にあるはずですが、その気持ちを搾取するようなことがあってはなりません

 

社会の求めに応じて技能を高める努力をしているので、そのための時間にきちんと対価が支払われるようなシステムにしなければならないと個人的には思います

 

 

診療報酬の発生する業務は当然のごとく給与が支払われるべきですが、今後、教育に関わる時間にもしっかり対価が支払われるようにしていかないといけないだろうと考えています

 

とてつもなくお金のかかることだと思いますが、とてつもなくお金のかかることを国民が望んでいるので仕方ないんじゃないかなというのが正直な思いです

 

これまでごまかしてきたものが露呈する機会となりましたが、どう変われるかが今まさに試されています

 

 

僕個人としては、研修にレクチャーしたり、勉強会などでしっかり何かを教えたりする時には、余分にお金を払ってもいいと思える内容を提供しているつもりです

余分にお金をください

 

 

教育にしっかり対価を出すことで、教育はさらに充実して、より質の高い医療の提供につながるのではないかと思います

 

レジナビフェアなどに行くと、各病院が教育の機会をどれだけ設けているかについて熱心に宣伝していますが、指導者にその分の対価を用意しているかどうかという視点が問われる時代はすぐそこまできていると信じています