ラグビーワールドカップ

ここ数週間、ラグビー熱が急上昇しました

 

これまでラグビーを見たことがなかった人まで熱狂している様子を見ていると、自国開催のパワーってすごいなと思います

 

決勝トーナメントで敗退しましたが、このイベントの日のために努力を積み重ね、ラグビーの魅力をバンバン伝えてくれた選手の皆様を尊敬する次第です

 

ラグビー漫画

オリンピックの体操競技で金メダリストの森末慎二氏とタッグを組んだ『ガンバ! Fly high』、そして同じく金メダリストの内村航平氏とタッグを組んだ『THE SHOWMAN』という体操漫画を描いている菊田洋之氏が、以前『HORIZON』というラグビー漫画を描いていました

 

 

 

 

 

 

徐々にラグビーのルールを説明し、ラグビーの試合の描写が中心となり、高校ラグビーの地方大会でこれから盛り上がるというところで突然伏線の回収がはじまり、何でそんな早く終わっちゃうんだというくらいのあっさりした終わり方をしてしまったのですが、ラグビーの認知度とか、当時の状況を考えると仕方ない部分があったのかもしれません

 

今、盛り上がっている時ですから、ぜひみんなに読んでほしい作品です



ラグビーと脳震盪
 

さて、スポーツにはけががつきものですが、特にラグビーは激しいタックルが行われる分、危険も大きいです

 

タックルで倒れこむ時は相手をかばいながら倒れなければならないという紳士的ルールがあるものの、頭から地面に打ち付けられるということもまれではないです

 

そして脳震盪を起こします

 

 

プロがいくら紳士的タックルのトレーニングをしても、脳震盪リスクは軽減できないとされています



ところで、脳震盪ってどんな症状が出るのかと問われると、意外と返答に困るかもしれません

 

なんとなく曖昧に、頭を打った後意識障害やなんらかの症状を呈するものだと認識されているかもしれません

 

様々な症状を呈するので、なんかおかしいと思ったら脳震盪を疑うスタンスで良いと思いますが、International conference on concussion in sport(国際スポーツ脳震盪会議)では、以下の項目を1つ以上満たせば、脳震盪として適切な対応がなされるべきであると提言されています

 

a. 自覚症状:身体(頭痛など)、認知(霧の中にいるように感じるなど)、感情(情動不安定)
b. 身体的徴候(例:意識消失、健忘、神経障害)
c. バランス障害(例:歩行不安定)
d. 行動の変化(例:易刺激性)
e. 認知障害(例:反応時間の遅延)
f. 睡眠/覚醒障害(例:傾眠、無気力)

 

McCrory P, et al. Consensus statement on concussion in sport-the 5th international conference on concussion in sport held in Berlin, October 2016. Br J Sports Med. 2017;51:838-47.

 

 

多くの場合、脳震盪症状は1週間程度で改善しますが、数カ月程度長引く場合もあります

 

成人で10~14日以内、小児で4週間以内に回復しない人は脳震盪後症候群と呼ばれています

 

初期症状が重篤なほど、長期に症状を及ぼす場合が多いことが知られています

 

2度目の脳震盪の方が深刻な症状を呈する、いわゆるセカンドインパクト症候群も知られておりますので、慎重な対応が必要です



頭部への機械的外力で神経機能障害を呈することは古くから知られていましたが、スポーツが盛んになり、そしてスポーツ医学が発展し、脳震盪もきちんと定義と評価を行わなければならない病態として認知されてきました

 

近年はスポーツ中に脳震盪が疑われる状況になった場合、根性で何とかしろという風潮や、美談にするような風潮はさすがに下火になりつつあるかと思いますが、プロ・アマ関係なく、選手のその後を見据えて、安全面に配慮した対応をしてくれるといいなぁと思います

 



脳震盪の評価
 

国際オリンピック連盟は、国際ラグビー評議会も含む種々のスポーツ連盟と共に、数年ごとに前述の国際スポーツ脳震盪会議を開催し、決定事項をまとめて共同声明として発表しています

 

この時、脳震盪の評価・対処法をまとめたSports Concussion Assessment Tool(SCAT:スキャット)や、一般人が脳震盪を認識するためのツールであるConcussion Recognition Tool(CRT)なども発表されます

 

最新のSCAT もダウンロード可能なので、興味があればご覧ください

 

次回は2020年改訂予定です



先日の日本代表の試合でも、脳震盪が疑われた選手がおり、フィールド上で脳震盪の評価が行われておりました

 

SCAT5はいくつかの段階からなりますが、まずはフィールド上での評価となります

最初に救急搬送が必要なほどの諸症状がないかチェックし、起き上がることができないなどの、見て分かるような脳震盪症状がないかチェックします

 

そして記憶能力が保たれているかを調べ、GSC(Glasgow Coma Scale)を用いた意識障害の評価をします

 

さらに頸椎の評価も行います

 

脳震盪が疑われる場合、直ちに競技を終了させ、症状が消失していたとしても、医師の診察なしに運動に復帰させてはならないとしています

 

試合が中断したら、こうした評価をしながら、安全に配慮して試合進行しているのだなと思ってください

 

 

予選トーナメント全勝し、そして決勝トーナメント進出という歴史を作った選手の皆様を心から讃えたいと思います

 

本当にお疲れ様でした

 

 

まだ決勝トーナメントは続きます

 

他国の精鋭の安全と健闘を願っています