スウェーデン検察当局は21日、民間告発ウェブサイト「ウィキリークス」創設者のジュリアン・アサーンジ氏(39)に対するレイプなどの容疑による告発を一転して取り下げた。

 検察当局の出した声明によると、アサーンジ氏がレイプなどを行ったと疑う根拠はない、という。

 同氏は先月、米紙ニューヨーク・タイムズなどと協力して機密文書9万点を公表。今月12日、インターネットを通じてロンドンでの討論会に参加し、さらに 1万5千点を公表すると公言しており、簡易ブログ、ツイッターを通じて「告発活動を妨害するための卑劣な策略だ」と反論していた。
(8月22日 産経新聞)

ウィキリークス、残りの機密文書を公開へ 米国防総省は猛反発

AP通信によると、アフガニスタン駐留米軍などの機密文書を公開した民間ウェブサイト「ウィキリークス」の報道担当者は12日、これまでに公開していなかった残りの機密文書を近く公開すると発表した。詳しい日程は明らかにしなかった。
記事本文の続き
 米国防総省のモレル報道官は同日、さらなる機密文書の公開は、アフガンで活動する米兵や一般市民をいっそう危険にすると指摘し、ウィキリークスを「無責任の極みだ」と強く非難した。

 同省によると、ウィキリークスは既に約7万6千点の機密文書を公開しており、約1万5千点の文書が未公開となっているという。未公開文書は、これまでに公開された文書よりも米軍に与える打撃はさらに大きいとしている。(共同)

(8月19日 産経新聞)


【取材最前線】ネットの時代の新聞の使命感と良識

民間のウェブサイト「ウィキリークス」が、アフガニスタンでの対テロ戦に関する機密文書9万点以上を公表し、大きな波紋を広げている。こうした安全保障上の機密文書が公にされると、決まって政府と報じた側との軋轢(あつれき)と論争が生じる。「国家、国民の安全」vs「国民の知る権利、報道の自由」という構図である。

記事本文の続き 今回も米政府は、機密文書の公表によって「米国の安全保障が脅かされる」(ジョーンズ大統領補佐官)と非難し、ウィキリークス側と機密文書の提供者を、情報漏洩(ろうえい)罪などで立件することも視野に入れている。一方、ウィキリークスの創設者で、元天才ハッカーのジュリアン・アサンジ氏は「機密文書はアフガンで進行する戦争の真実を物語っている」と、公表したことの正当性を主張して譲らない。

 政府は真実を隠し、うそをつくものである-。そのことは米国では、1970年代の米紙ニューヨーク・タイムズによるベトナム戦争に関する国防総省の調査報告書「ペンタゴン・ペーパーズ」、米紙ワシントン・ポストによるウォーターゲート事件の報道などを通じ、如実に示された。そうした政府を、国民の知る権利を代表するものとして監視する報道機関が、司法、行政、立法に次ぐ「第四の権力」と称されたのもまた、主にこの時代だった。そこには、“古き良き時代”の新聞の熱い使命感と良識が感じられる。

 時は移りインターネットの時代。ウィキリークスから提供された機密文書をニューヨーク・タイムズなども報じたが、そこにも息づいていたであろう使命感と良識は、ウィキリークスから膨大な機密文書が瞬時に、広範に垂れ流された現象の前に色あせてみえた。

 機密文書の内容は新味がなく、米政権がベトナム戦争の泥沼へとはまっていく過程を明らかにしたペンタゴン・ペーパーズほどの意義はない、との見方が少なくないことも要因だろう。

 対テロ戦ともなると、テロリストを利する機密情報の漏洩には留意する必要もある。だが、そうした良識を、「調査報道」を自負する元天才ハッカーがもち合わせているのか疑問だ。ネットの時代だからこそ、新聞の良識と使命感はますます重要なのだと自負している。
(8月12日 産経新聞)

アフガン機密文書流出 各国有力紙、意義めぐり評価バラバラ

アフガニスタンでの対テロ戦争に関する米軍などの膨大な機密文書が米民間サイト「ウィキリークス」に流出した問題が、論議を呼んでいる。ベトナム戦争下の1971年、米紙にリークされ、反戦世論に影響を与えた米国防総省・調査報告書(ペンタゴン・ペーパーズ)の場合と違い、その意義をめぐって有力紙の評価は分かれている。

■「ペンタゴン・ペーパーズに匹敵せず」ニューヨーク・タイムズ(米国)

 ウィキリークスから情報の事前提供を受けた報道機関の一つである米紙ニューヨーク・タイムズは、7月27日付オピニオン欄に、「特に驚くべき内容でも、特筆すべき点があるわけでもない」と、文書の暴露を批判する軍事専門家、アンドリュー・エクサム氏の寄稿を掲載した。

 エクサム氏は、文書から読み取れる3つの主な「新事実」について分析していく。第1に、パキスタン情報機関がイスラム原理主義勢力タリバンや他の武装勢力と結びついているという指摘について、「そうした見方は何ら新しいものではない」。第2に、民間人の死者が相次いでいるとの指摘は「すでにNGO(非政府組織)によってそうした報告書がまとめられており、実際に米軍の決定にも影響を及ぼしている」。

 さらに米国が対テロ秘密部隊を組織しているとの指摘については、「仮にそうだとしても米国民はむしろ、自らの税金の使い道にふさわしいと考えるのではなかろうか」と切り返した

 また、ベトナム戦争に関する「ペンタゴン・ペーパーズ」の暴露に匹敵するというウィキリークス側の主張に対し、エクサム氏は「まったく違う」と反論する。ベトナム戦争について整理された内部の見方を提供したペンタゴン・ペーパーズに対し、今回の文書群は統一された見解も説明もなく、ただ戦闘の現場からの報告がばらばらに投げ出されているだけだというのだ。

 従来のメディアはなんだかんだと批判されつつも、報道が兵士の死につながらないよう気を使ってきたが、「ウィキリークスは別だ」とエクサム氏は言い切り、「彼ら自身が思っているほど平和の実現には役に立たない」と切り捨てている。(ニューヨーク 松尾理也)

 ■「『反戦への転向』か『報道の危機』か」ウォールストリート・ジャーナル(米国)

 米紙ウォールストリート・ジャーナルは7月27日付社説で、「アフパク・ペーパーズ」(アフガン・パキスタン機密文書)と題し、「私たちは米政府が文書を機密にしすぎていると長らく信じてきたが、今、それが確かであることを知った」として膨大な機密文書公開に意義はあるとした。

 そして、米上院外交委員会のケリー委員長(民主)が発表した、「不法な手段で明らかになったとしても、米国の政策の真実性に重大な懸念を抱かせる」との声明を引用しつつ、「米国の政治家たちにとって、かつて支持した戦争に反対する転向の言い訳になるかが重要だ」と指摘した。

 
ところが、そんな同紙社説が29日付で微妙に変わる。

 流出した機密文書に新たな情報はなく、ただ、アフガンの情報提供者や米兵の生命を危険にさらすのみだ-。

 真偽不明な約9万2千点の情報が垂れ流しにされたウィキリークスの情報流出に深い懸念を表明し、情報を事前入手して報道した米英独3紙誌の手法にも疑問を投げかけたのである。

 その理由として同紙社説は、流出情報のほとんどがすでに公になっているもので、「一般市民の知る権利に基づく情報としての価値が低い」点を挙げる。

 また、米軍の戦術や通信手法を詳細に暴露することは、米国の敵を利するだけだとも警鐘を鳴らした。

 特に問題視したのは、情報提供者であるアフガン国民の実名が一部で明らかにされ、本人や家族が迫害の対象になりかねない危機に直面したことだ。

 報道の自由は民主主義の根幹を成すものだが、あまりに自由すぎる報道は国民の反感を生み、結果的に「報道の自由を危機にさらすことになりかねない」と社説は指摘している。(ワシントン 犬塚陽介)

 ■「これが糊塗されていない現実だ」ガーディアン(英国)

 9万点を超すアフガン関連機密文書を入手したウィキリークスは、米紙ニューヨーク・タイムズ、英紙ガーディアン、独週刊誌シュピーゲルにも、7月25日の公開まで記事にしない条件で膨大な文書を提供した。

 そのうちガーディアン紙は26日付社説「糊塗(こと)されていないアフガン」で、機密文書の信憑(しんぴょう)性を精査し14ページにわたって特報した同紙の判断の正しさを強調した。

 2004~09年にかけ、民間人が亡くなったり負傷したりした約150件の大半が公表されていなかった事実をえぐり出した同紙は、社説で「アフガンの戦況の混迷は異常なほど深まっている」と指摘する。民間人犠牲者1人に対する“値段”(補償額)は1500ポンド(約20万円)とされる。

 そして、パキスタンの情報機関がアフガン反政府武装勢力を支援していたとの疑いがくすぶり、開戦から9年が経過したアフガンの混乱は悪化する恐れがある-と社説は悲観的な見通しを示す。

 また、駐留部隊や情報提供者、協力者を危険に陥れる可能性のあるいかなる機密文書も、報道前に取り除いたとして、「安全保障への脅威だ」とするオバマ米政権の批判を退ける。

 5月末、ガーディアン紙きっての特ダネ記者、ニック・デービス氏が、膨大な機密文書を抱えていたウィキリークス創設者のジュリアン・アサーンジ氏と接触。「ネットを混乱させるだけの事態は避けたい」という同氏に、デービス記者が3紙で機密文書を精査した上で、一斉に報道したらどうかと提案したという。

 デービス記者は「アサーンジ氏との間で金銭の話は一切なかった」と、公開した動機の正当性を強調している。

(8月2日 イザ!)

いずれにせよ、アフガンの紛争は色々と問題多い内容となっていることは事実である。米軍の攻撃の際に兵士が浴びる劣化ウランの問題、アフガニスタンに広がる広大な麻薬畑の裏にいる人物の問題など、ウィキリークの情報と同じか、それ以上に解明されなければならない問題がある。

また、各紙のコメントがおかしすぎる。明らかに報道規制を受けた後の物であることは、見てとれる。そして、スウlェーデンの告発であるが、何故かいつもこう言う類の事件のものは、痴漢とかレイプで告発されるお決まりのパターンである。つい先だってアル・ゴア氏が訴えられたのもその類であり、この手法が使われたと言うことは、その筋からの手回しがあったという証拠にもなる。

こうやって、注意深く読み進めて行くと、逆に良く見えて来るものである。報道は、リークした者を色々と攻め立てたり、持ち上げたりしているが、「敵と味方を同時に作り、最後は勝利する」という方法を必ず取るということである。怪しまれない為の鉄則のようだ。背後に控えている輩の行動指針となる大原則をしっかり読み返しながら、こういった現象を分析して行くと面白い結果が得られる。

また、以前に機密文書を流した兵士が逮捕されたニュースを扱ったが、今回あの記事に関しては、言及されていない。アフガンで活動する米兵や一般市民をいっそう危険にすると指摘しているが、危険な状態にさらされるのは、兵士ばかりでなく、暴露された背後に控えている輩の方かもしれない。

引き続き追いかけて行きたい。