過去の話とか | DTS-RainBowのブログ

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ワンコのトレーニングの事や当スクールからのお知らせ、
時にはくだらないことまで綴っているブログです。

私が訓練所に住込で働いていた見習2年目に入る前当時の話。


私は一頭の柴犬の預りトレーニングの担当を任されました。名前をAとしましょう。Aがトレーニングにきた理由は【飼主さん、他人、他の犬に激しく咬みつく】からです。

卒業生さんと在校生さんからみると、意外かも知れませんが、当時の私は訓練所の方針に従い、体罰NG・おやつを使ってトレーニングをしていました。

Aのトレーニング契約期間は3ヶ月。

預かりした日から一週間。Aは食器からは食べ物を食べるもの、いざ、トレーニングの際に室内にハウスから出し、手からおやつをあげようとしても、おやつにAも気付かないくらいの勢いと興奮で手を咬もうと激しく向かってくる・リードを咬み切ろうとして常に暴れてうかつに手を出せない…という状態でした。

そんなAをまだ見習い2年目前の私が制御出来る訳もなく、訓練所の経営者(公認訓練士)がその時ばかりは周りからみたら虐待と思われる方法を使用して、Aの興奮を抑えました。
興奮を抑えるまで掛かった時間は30分位でした。
そしてそれ以降、今までハウスからでたら直ぐに暴れて私にも見習いの先輩訓練士にも手がつけられなかったAはハウスから出ても、暴れず、常に歩き回ってはいますが、この一件以前と比べると多少落ち着いたといえる感じになりました。

ただ、それはあくまでハウスから出た直後の暴れがなくなっただけで、気に入らない事が起こったらAが他者に咬みつく癖はそのままでした。
※ちなみにAが気に入らないと思うことは、人が干渉しようと何らかのアクションを起こすことです。
(例:触られそうな雰囲気を少しでも感じると咬みつきにきました)

ハウスから出て、暴れずになったAをみて、訓練所経営者は私におやつを沢山使い、先ずは【お座り、ふせ】を教えるように指示し、私はそれに従いました。

ある程度、興奮が収まり、私がおやつをくれる【おやつの自動販売機】だと認識したAは体に触れなくても、おやつの誘導のみで、すぐに【お座り、ふせ】の体勢は覚えてくれました。
その内におやつを見せなくても、持っていなくても、Aはお座りの体勢で1分以上でも、その場で【動かずに待つ】ことが出来るようになりました。

でも、Aはしばらく体を触らせてくれませんでした。

上の文にある通り、Aはその場で【動かずに待つ】ことは出来るようになっても、あくまでAは後から出てくるおやつが欲しかったから動かずにいただけで、結局、頭のなかでは【おやつが欲しい】という気持ちよりも【人に触れられたくない】という気持ちの方が強く、また、そんな時には【咬みつけば嫌なことが起きるのを阻止できる】という学習をしていた為、まずは触られないように【動かずに待つ事をやめる】選択を毎回したからです。

この状態を続けると「Aはいつか【動かずに待つ】ように座らせられたら、人が触ろうとしてくる、だったら先に起こる事を予想して座らせられる前に咬みついてやろうと学習してしまう」と思った私は、同シチュエーションでAが咬みつこうとした時にAを叱るというトレーニングを続けていきました。もちろん、咬みつかずに体に触らせたらご褒美におやつという条件も合わせて…。

結果、Aは人からおやつが貰えそうな雰囲気を感じたとき、おやつの匂いがしたときのみ体を少しだけ触らせるようになりました。しかし、機嫌が少しでも悪かったりおやつ絡みの条件がないと、咬みつきにくるのは変わりませんでした。


そしてある日、Aの飼主さんが訓練所にAの様子を見に面会へやって来ました。
事件は直ぐに起こりました。
飼主さんが事務所に入ってきた時、事務所の扉前には犬の脱走予防の仕切りがあったのですが、部屋にリードつきで離れていたAは飼主さんの元へ猛ダッシュし、そのまま上半身は仕切りにのせた形で飼主さんのお腹あたりの高さに咬みつき、頭をそのままふってしまったのです。
幸い、噛まれたのは上着のみだったので飼主さんは無傷だったのですが、これが幼児とかだったら、間違いなく大事故に繋がるレベルの咬みつきかたでした。

そんなこんなで面会は10分ほどで終わり、残りの預かり期間もおやつおやつの訓練をくる日もくる日も繰返して、常におやつを持っていたり、もっている雰囲気を出していないと他者を咬んでしまうAは訓練所を卒業していき、社員スタッフ(その方も公認訓練士です)による出張訓練が始まりました。※出張訓練は基本的に社員が行く訓練所でした。


そしてAが訓練所からいなくなった数ヶ月後。

こんな話が同列系列の他店舗に社員として入社していた後輩訓練士から、私に伝わりました。

「経営者からは先輩に言うなと口止めされてたんですけれども…Aですが、飼主さんを咬み続けて、飼うのは危険なので殺処分になるそうです…」と。

それをきいた私は慌てました。

本当ならAを私が引き取れれば良かったのですが、既に愛犬トリガーがいましたし、当時の給料は食費光熱費家賃は掛からないもの3万、業務で使う携帯は私物・業務で使った分の電話代もメール代も自腹、副業禁止、外出も必要最低限は禁止、休みは週一住込の見習いであった身では、とても無理な話だったからです。

次に私は複数の友人と獣医師に連絡しました。

友人には里親になってもらう代わりに、休日はもちろん無料で訓練する事と、友人が途中で飼えなくなった場合は、独立時にAを里子に迎えると。

獣医師には、Aの歯を全て丸く削るか抜くことが出来ないか…(もちろん全ての獣医に当然断られました。しかし、中にはそんな犬殺せという方も…)

今考えればとても危険で無責任な行動をしたと思いますが、当時の私にはそれくらいしか出来ませんでした。
…ですが、友人で一人だけAを里子に考えたいと言ってくれた人がいました。

その後、経営者に後輩から話を聞いた件と里親の件を伝え、後は飼主さんへ話を通してもらい、返事待ち状態でした。

飼主さんからの返事は、気持ちが変わりAは飼い続ける事・里親の話はなし…ということになりました。




そして現在、Aがどうなっているのか私にはわかりません…。どこかで元気にやっていてくれればと思いますが、正直なところ、あの後、殺処分になっていないか心配です。


飼主さんはAの問題行動を矯正目的で、訓練所にAを預けていました。
本来、訓練士であれば見習いだろうがなんだろうが、お客様が問題行動矯正を依頼されたのであれば、おやつ目当てだけの【曲芸】ではなく、犬に人とが共生する上での【良い行動】と【悪い行動】の区別を教えるのが仕事なのではないかと思います。特にそれが時に犬の生死に関わるものなら尚更。




~長くなったので続く(かも)