「スペインでも著名なスポーツダイレクターと話した際に、『スペインでベスティア系指導者の居場所がなくなってきてるね』という話になりました。ベスティアは野獣派という意味で、いわゆる吠えるタイプの指導者を指します。延々と指示出しを続け、時にペットボトルを叩きつけたり、審判や相手チームに圧をかける。一昔前までは、情熱的だ、熱血監督だなどと美化されていました」

 

この文章は、スペインの名門ビジャレアルで指導者をしていた佐伯夕利子さんの著書「教えないスキル〜ビジャレアルに学ぶ人材育成術〜」という本から抜粋させて頂いたものです。

 

スペインでは、カテゴリーを問わず、そういった指導者は年々減ってきている様です。なぜそうなっているかは、この本を読んで頂いた方がわかりやすいのですが、一言で言うと、怒って無理矢理、指導者の言う通りにやらせたところで、認知力(状況を見極める力)や応用力が養われないということが明白になってきているからです。

 

日本のスポーツ界では、昔から厳しさや頭ごなしの指導方法が横行してきましたが、五輪やW杯などの世界大会で、ここ一番に弱い、という実情を何度も見させられてきました。厳しくすると、精神力が鍛えられ、強くなる、というのは幻想で、自ら見て、考え、確信を持った上で行動できる人こそが本当に強くなれるものだと思います。不確定要素の多いフットボールという競技において、そういった資質の重要度は極めて高いと思います。

 

それは何も、フットボールに限った話ではなく、ピッチ外においても、何をするにも、基盤になるべきものだと思います。例えば、どんな職業に就いたとしても、主体性を持って、自ら行動を起こす人が求められるものです。言われたことだけをこなしていくといった、いわるゆ“指示待ち人間”の居場所は、年々無くなってきている様に思います。

 

これは、余談ですが。ウェブデザイナーの中村勇吾さんが話していたことですが、美術大学で講師をする時に、技術の向上より、観察することが大切だと伝えているらしいです。例えば、“木のゆらぎ”をウェブ上でデザインする際、リアルに描くには、木を観察することから始めなくてはならず。実際、木というのは、幹があり、その先に枝があり、またその先に枝があり、それが続いていて。そして、それらがちょっとずつ振動していくことによって、揺らいでいるのです。そういったことを理解していなければ、幾ら上手に絵を描く技術があったところで、リアリティを出すのことは難しいのでしょう。

物事を自分の眼でしっかり見て、理解していくという作業が、やはり大事なのだと思います。

 

日常生活においてもそれは同様で。我々は、何気なく過ごしていると、大切なものを見落としがちです。

私も余裕がある時は、空の青さや夕焼けの美しさ、人の優しさや“普通の生活”の有り難み、に感謝することができるのですが…日頃の忙しさにかまけていると、あらゆる大切なものを見落としていることに、後から気づくことが多々あります。

そういう意味では、あらゆることをしっかり観察し、当たり前のことに感謝できる視野を持てる様にしていきたいものですね。

 

ということで、終盤少し脱線してしまいましたが…これからも子供達に「見て、考えて、行動する」という習慣を身につけ、主体性を持った人間になれる様、しっかり指導していきたいと思います。

それでは、また!