ある日のパリにて
よく見かける紙モノディーラーのおじいさんに
「香水ラベルはありますか?」と尋ねたところ
未使用ラベルがごっそり入った箱を出して見せてくれました。
テーブルに箱をどさっと置くと
「勝手に見てね」とばかりに
よいしょと椅子に座り込む、
商売っ気の無い無愛想なおじいさんですが、
いつも素敵な紙モノを持って来て下さいます。
1900年初頭、クロモリトグラフ(多色刷り石版印刷)で
印刷された香水と石鹸のラベル
ほこりまみれの箱の中から
可愛らしい石版印刷の石鹸や香水ラベルがぎっしり。
香水瓶やパッケージに貼り付けていたというラベルは
印刷工場のデッドストックとして残っていたというもので
絵柄ごとに薄紙の帯に
そっと巻かれ入っていました。
薄紙からチラリと透けて見る
美しく儚げな色合いの印刷に
ひと目で心をわしづかみ。
たかが紙ラベルといってしまえば
それまでなのですが、
使い捨ての商品パッケージとはとても思えない、
バラ、スミレ、すずらんといった可憐なモチーフに
金彩の愛らしいリボンやラインが入った
芸術性の高い美しきラベルや箱モノ・・・
恐る恐るおじいさんに
あるだけ全部欲しいと告げ大量のラベルを手渡すと、
あまりの多さにちょっとびっくりした様子。
「細かいことはめんどうだから」とばかりに
ぶっきらぼうにラベルを袋に詰めながら
1枚、また1枚と無言でおまけを放り込んでくれている。
無骨な(失礼)おじいさんの
こんな粋な計らいが嬉しい。
こういう古くからのディーラーさんが年々
リタイヤして減ってゆくのが残念・・・