- 子供の生きる国―産んで育てて、ニッポン・イギリス・フランス/薗部 容子
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出版社からのコメント
日本、イギリス、フランスで出産経験を持つ著者が、子供がイキイキ成長していくには、何が必要なのかを提言
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■子育てしやすい社会?
少子化対策基本法の目的は「子どもを産み、、育てる者が真に誇りと喜びを感じることのできる社会の実現」だという。この日本で子供を産み、育てている母親たちはどの国の母達よりもがんばっていると思う。
父親だって頑張っているし、本当に子供のことを考えてくれている先生も沢山いる。しかし社会として、子供にたずさわる大人たちに対してその仕事に真に誇りと喜びが感じられるようなサポートがほんとうになされているだろうか?
私が暮らしたイギリスやフランスは、明らかに日本よりも「子育てしやすい」社会であり、子育てしていることを両親が誇りに感じられる社会であった。
イギリスでは出産後三日で退院となり、その後10日にわたり保健師さんが自宅まで訪問してくれる。
そして何か問題があれば、保健師さんが書いたメモを持って病院にいくと無料で診察が受けられる仕組みになっている。
退院後さっそく我が家にきた保健師さんはこういった
「一日も早く、赤ちゃんがお母さんの生活に合わせられるようにしてください。お母さんは毎日自分自身が規則正しくしてくださいね」
日本の指導の場合、同じ規則正しくであっても、お母さんが赤ちゃんに合わせることを意味しており、赤ちゃん優先だった。一日誰かのスケジュールに合わせるというのは結構大変なもので、出かけようとおもってたのに寝てしまって出られなくなることもあった。
日本では出産後は常に赤ちゃんが中心となる。しかし私が暮らした国では基本的にお母さんの生活が軸であぅた。
退院後しばらくするとベビーマッサージ教室の案内が来た。早速参加してみると助産師さんを交えて15組ぐらいの母子が来ていた。自己紹介をして和やかに会が始まった。
助産師さん 「何よりも大切なことは、ママ自身が気持ちがいいと感じることです。ママが気持ちがいいと感じると、その嬉しさが赤ちゃんに伝わり、ママがにっこりすると赤ちゃんもにっこりします。
できれば一日一回お風呂上りなどにマッサージしてあげてください。こうでなくてはならないということはありません。ママと赤ちゃんが気持ちがいいねと思い合えればいいのです」
この言葉を聞いたとき
赤ちゃんや子供が見たいのはママが眉間にしわを寄せて必死に「あなたのためよ」と頑張る姿でなく、ママがにっこりと幸せそうに自分の存在を見つめている姿なのだよといわれている気がした。
■働くママ
ある日、次女の眼科の受付から連絡があり、「今日の診療は都合によりキャンセルさせてくれ」という。
その日私はばったりその眼科医に出会った。独身だと思っていた彼女は子供を二人連れていた。「ベビーシッターさんが急にお休みで今日はママをやるの」だという。彼女はその日の診療のキャンセルについては一言も謝らなかった。そう、この国では、子供の病気で仕事を早退するときも、家族の用事で仕事の予定が変更になってもいちいち周りのひとに謝らない。子供の病気や、子供を見る人がいないなんていうのは、当然優先されるべき事情なのだ。
それまで仕事をバリバリやって、夫婦の時間もしっかり取るフランス女性はそれほど子どもが好きではないのかと思っていたが、彼女に関してはそうではないらしい。子供を抱き上げて「可愛いでしょう」と言った彼女の笑顔は病院でみた彼女とは別人のようであった。
仕事をして、自分の時間も持っているから子供との時間はあんなに愛情いっぱいに接することができるのかもしれない。私など24時間こどもと一緒にいると、いかにして子供を自分から遠ざけるかとか、自分の時間をどう確保するかばかりに気がいってしまう。
幼稚園に迎えに来たときのフランス人ママたちの大げさにも思える抱擁は彼女達にとって「さあママをやるわよーー」という勢いの表れなのかもしれない。
■日本がフランスに学ぶこと
2003年、ソニーの当時会長出井氏がパリでフランスのシラク大統領と会談した際、日本通の大統領は日本のハイテク製品を褒めた後でこう言ったという。
「日本も一つだけわが国から学ぶ点がある。それは子供の数を増やす政策だ」
フランスでは一時1・6まで落ち込んだ出生率を10年で1・9に引き上げた。この政策とはどんなものだろうか?
まず妊娠4ヶ月目から出る「妊婦手当て」がある。これは所得制限を越えていなければ、産後の膣筋トレーニングなどの産後ケアまでカバーしている。
膣筋トレーニングはフランスでは保険の範囲内で受診でき、このリハビリ療法士も大きな病院だけにいるのではなく各地域にいて個人で開業しているひともいる。
フランスの女達にとって産後の身体を回復する上で当然受ける権利であり、医療的行為として認識されているのだ。現在日本で尿漏れ経験のある40代は三人に一人。担当は泌尿器科だが女性医師はわずか。またクスリも開発されているようだが、クスリで解決するのと自分の筋力を鍛えなおすのではまったく違う。
日本が少子化対策に取り組むというのであれば二人目三人目を出産すると女性の身体にどんな変化が起こるのか?まずその事態を把握し、こういった療法士を育ているとか、トレーニングを取り入れるなど適切な対策をとって、子どもを沢山産んだ女性が安心して年齢を重ねられるよう国として真剣に考えていただきたい。
出産には条件を満たしていれば「出産準備金」がでる
子供が生まれるともらえる児童手当は、一人目については所得制限があるものの二人目以降は所得制限はなくなり、数に応じて支払われる。
そして子供が学校にいくようになると、学期はじめに「新学期手当て」が出て、何かとお金がかかる時期に学用品を買うことができる。
さらにすべての家庭において、子供が三人になると国中のいたるところで「大家族サービス」をうけられる。そのおもたるものがSNCFだ。(日本で言うJR) 2000円の手数料で三年間有効な大家族パスポートが発行され、18歳以下の子供が何人いるかによって割引率が違ってくる。30パーセントから始まって、最大75パーセントオフ!
したがって場合によっては子供が二人より三人のほうが旅行運賃が安くなることもある。
またフランス国内では遊園地、映画館、プール、美術館などでこの大家族パスポートによる割引が受けられる。
そして夏休みのコロニー・ド・バカンスの制度では子沢山の家の子供も、所得の低い家庭の子も休暇中に旅行ができるようになっている。
ここまでが国の政策で、このほかにも各自治体が独自の政策を立てて、「子供を育てやすい地域を目指す」
たとえばブローニュ市では、子供が三人以上の家庭では「お稽古券」が配られ、市が主催しているお教室に参加することができる。お稽古券は家族対して配られているので、家族の誰が使ってもいいことになっている。つまりお母さんが英語を習ってもいいし、子供がバレエを習ってもいいという具合だ。
しっかりものの友達のフランス人ママは「色々計算してみたんだけど、フランスでは子供が3人って言うのが一番お得なのよ。二人って言うのは損だわ」なんていうのだ。
フランス政府は色々な状態の家族を想定していて、制度を細分化している。この国ではここまでに述べた優遇措置は、養子縁組の子供たちにもなんら変わることなく受けられる。母子家庭に対しては「母子家庭手当て」がでるのはもちろん、体外受精にも国の保険が適応されるのだ。
本気で国をあげて少子化対策に取り組むとはこういうことを言うのではないか?
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日本のお母さんが可愛いお弁当を作ってあげているころ、フランスやイギリスのママはポテトチップスやパン、リンゴなどを素材ごと袋に入れてやる。
フランスやイギリスのお父さんが子どもを学校に送っていくころ、日本のおかあさんは子どもを自転車にのせ幼稚園まで送っていく。
日本のお母さんが丁寧に裏ごしした離乳食を手作りしているころ、フランスやイギリスのお母さんは「今日はどれにしようかしら?」と離乳食のビンを選ぶ。
日本のお母さんが子どもの上靴を洗ってやっているころ、イギリスやフランスのお母さんは上靴も洗濯機に放り込む。
日本のお父さんがゴルフに行ったり、疲れてグーグー寝ているころ、イギリスやフランスの家族は自然の中で休日を過ごす。
日本のお母さんはよく頑張っている。眉間に皺よせ頑張っている。この違いはなんだろうか?? 日本にいると日本の常識で子育てすることになる。でも、たまに息苦しく感じることもある。そういう時はこういう本を読んだらいい。日本の常識は世界の常識ではないのだ。たまには離乳食もビンでいいさ、たまには子どもを預けて自分の時間を過ごしたっていい。
そう、日本は子どもが王様であり生活の中心になりがちだ。フランスの夫婦は子どもを預けてデートに行く。それが当然の姿だと彼らは思っている。いつでも自分達には何が必要か、どういう人生を送りたいのか??そう考えること。
この本の中の言葉のように
赤ちゃんや子供が見たいのはママが眉間にしわを寄せて必死に「あなたのためよ」と頑張る姿でなく、ママがにっこりと幸せそうに自分の存在を見つめている姿なのだ
そして日本ではまだ産後のケアがほとんど行われていません。実は妊娠、出産というのは女性の身体にも沢山の変化を与えることなのです。このケアの必要性については私が勉強しているマドレボニータのこちらの本がおすすめです。
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