前回までのお話 → 

 

 

 

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さて、さほど乗り気でなく

 

しぶしぶ病院へ向かった私だったが、

 

ぽんたが空気を読んだのか

 

はたまたスコットランドの凸凹農道のせいか、

 

車に揺られて数分もしないうちに

 

陣痛が強くなり始め

 

全集中で呼吸しなければならなくなった。

 

ちなみに私は妊娠中暇さえあれば

 

テンポ60でゆっくり深く息を吐く呼吸法

(※テンポ60=時計の秒針の速度)

 

を練習していたのだが、

 

私が集中し始めたのを見たエリックが

 

リラックスさせようと思ったらしく

 

何故か車内でPerfumeの曲をかけ始めた。

 

しかも結構アップテンポな曲である。

 

 

 

テンポ60っつってんだろ!!!!

 

 

 

とキレる私と困惑するエリック。

 

こうして若干の混沌を乗せた車は

 

無事病院に辿り着くのだが

 

ちょうどここでさらに私の破水が進み、

 

もう移動式ナイアガラの滝状態。

 

破水かどうか検査に来た助産師も

 

一目見るなり

 

「あぁ、うん、これは検査するまでもないわね」

 

と苦笑である。

 

 

 

というか、破水じゃなかったら逆に怖い。

 

 

 

陣痛はまだ強い生理痛レベルであったが、

 

このまま入院することになった私。

 

エリックは陣痛室には泊まれないので、

(分娩室に移動後は付き添い可)

 

私は一人で眠れぬ夜を越すことになった。

 

と言ってもスコットランドでは

 

陣痛中に鎮痛剤をもらうことができる上、

 

TENSマシーンという強い味方が付いている。

 

これは電気式のマッサージ機みたいなもので(多分)、

 

背中がビリビリ痺れる代わりに

 

陣痛の痛みを緩和してくれる優れもの。

 

ちなみに私が使用したタイプは

 

レベル15まで強さが設定できる物だったのが、

 

結局レベル10くらいまでしか使わなかった。

 

というか、

 

レベル15の電気ショックの方が陣痛より痛かった。

 

 

 

 

いつ使うねんレベル15・・・。

 

 

 

 

こうして頼れる相棒TENSマシーンを握りしめ

 

明け方くらいまでは順調に呼吸に勤しんだ私。

 

しかし朝7時を回ったあたりから

 

段々我慢が出来なくなり

 

バランスボールにもたれかかって

 

うんうん唸る不思議なオブジェと化す。

 

ちなみにスコットランドでは

 

無痛または和痛分娩が主流なので

 

私は心から無痛分娩希望だったのだが、

 

麻酔を入れてもらえるのは

 

ある程度お産が進んでからである。

 

 

 

全く進む気配がないのだがそれは・・・。

 

 

 

なお私がぐるぐる唸っている最中に

 

食堂のおばちゃんが来て

 

「朝ごはん始まってるから、食堂に来て。」

 

と声をかけて行ったのだが

 

ドスの利いた声で

 

「結構です・・・。」

 

と返事をする以外に

 

一体私に何ができたと言うのだろうか。

 

そもそも這って行ったところで

 

貰えるのはトーストと紅茶である。

 

 

 

エリックはよ来ーい!!!!

 

 

 

私は心の中で叫んだ。

 

 

 

〈続く〉