これまでのお話 → 

 


 

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陣痛室でまさかの2晩過ごし、

 

モルヒネと笑気ガスでぐでんぐでんになり、

 

例えるなら

 

二晩徹夜でウォッカを空けまくった人

 

レベルの混沌状態だった私。

 

硬膜外麻酔によって

 

ようやく持ち直した時には

 

すでに入院してから36時間経過していた。

 

正気に戻って一番に目に映ったのは

 

私よりよほどくたびれ切った

 

エリックと助産師である。

 

 

 

皆さんお疲れ様です。

 

 

 

お陰様で硬膜外麻酔は大変よく効いたが

 

それでも陣痛のピークになると

 

お腹のぎゅっとした張りと

 

生理痛レベルの痛みは感じるので、

 

再び呼吸法によって緊張をほぐす。

 

と、ここで私のリクエストした(らしい)

 

クラシック音楽のCDが分娩室に到着。

 

さっそくそれがかけられたのだが、

 

例によって私は

 

テンポ60の呼吸法を実践中だった。

 

 

 

テンポ60と違う!!!

 

 

 

と再び音楽相手にキレて、

 

速攻で消されるクラシック音楽。

 

かつてこんなに

 

テンポにうるさい妊婦がいただろうか・・・

 

いやそもそも私は

 

なぜあれほどテンポにこだわっていたのか

 

と今なら思うが

 

当時の私はそれはそれは無敵状態であった。

 

多分アドレナリンの為せる業である。

 

 

 

さて、この辺りで

 

疲労困憊のエリックが白目を剥き始めたので

 

私は助産師に

 

エリックを一旦帰しても良いか尋ねてみた。

 

ちなみに自宅までは車で片道20分ほどかかる。

 

 

助産師 「えぇ、もちろん帰宅して構いませんよ。

いつでも好きな時に戻って来られます。」

 

私 「いえ、出産時には立ち会ってもらいたいので、

あと数時間で生まれたりすると

いろいろと困るのですが。」

 

助産師 「大丈夫です。生まれませんから!

 

 

 

いや、それはそれで

 

全然大丈夫じゃないんだが。

 

 

 

恐る恐る確認してみれば

 

なんと36時間も粘ったくせに

 

私の子宮口はこの時点で4cm。

 

お前、鍵でもかかってんのか

 

という鉄壁さだが

 

エリックが安らかに仮眠を取れたので

 

そこはまぁ良かったのかもしれない。

 

その後子宮口9cmまで粘ったが

 

とうとう入院から42時間が経過してしまい、

 

非常に気の毒そうな顔をした医師の口からは

 

「帝王切開にしましょう」

 

の一言が飛び出した。

 

正直もうこの際

 

鼻からだろうがワキからだろうが

 

好きなところから生まれて来てくれ

 

という心境だった私としては

 

こうなっていっそ一安心である。

 

むしろ

 

もうすぐぽんたに会える

 

という興奮から

 

アドレナリンが過剰分泌され

 

意識はしっかりして会話もできるのに

 

上半身が勝手にバタバタ暴れ出してしまい

 

両腕を抑えられて手術したせいで、

 

ここに

 

 

二日徹夜でウォッカを空けまくった挙句

 

悪魔に憑依され磔にされた人

 

 

の完成である。

 

 

 

 

状態異常すぎるわ!!!

 

 

 

 

あまりに両手が荒ぶるので

 

産後すぐに抱っこできなかったのは悔やまれるが

 

まるで天下一品のこってりスープのように

 

超濃厚な44時間であった。

 

 

 

〈しかし続く〉