とある雑誌に寄稿した文書を転載しています(ほぼそのままです)



糖尿病という病名が、多くの人に誤解を招いていると感じています。糖が尿に出る病気ですと、軽い病気の印象を受けてしまうでしょが、これはとんでもない事なのです叫び

エネルギー源として取り入れた糖質を身体の細胞が使えないという、異常事態なのです。例えて言いますと、お腹が減って回転寿司へ行きましたが、手が動かずに皿を取る事が出来ないようなものです。殆どのお客(細胞)が皿(糖質)を取れないので、グルグル回っている寿司は溢れ(高血糖)、あふれた皿はカウンターから落ちて周りを汚染(糖化ストレス:酸化環境)するでしょう。

この様な状態が全身の細胞で起こっているのですから、溢れた糖が腎臓を経て尿へ出たという事だけを示した 糖尿病 という旧態依然とした病名はやめて、全身糖代謝機能不全病とでも代えるべきだと考えています。

高血糖の状態が続きますと、糖化ストレスという活性酸素が猛烈に発生する状態となるのです。この糖化ストレスによって、急速に全身の血管が動脈硬化を引き起こし、血管がボロボロになっていきます。

糖尿病の三大合併症糖尿病性網膜症・腎症・神経障害ですが、そんな甘いものではありません。少し詳しく説明しますと、その血管が目に起これば糖尿病性網膜症で失明に、腎臓に起これば糖尿病性腎症から腎不全となり人工透析になりますが、心臓に起これば狭心症や心筋梗塞に、脳に起これば脳梗塞や脳内出血に、足の血管に起これば壊疽(足が腐る)を起こして足の切断に至るだけの話しなのです。

糖尿病性神経障害は、神経を栄養する血管の劣化によって引き起こされる神経障害です。ですから、全身のどこの血管に起こってもいいのです。故に、病名は更に変更して糖代謝機能不全性全身性動脈硬化症とすべきです。


あと、教科書的、経験的に免疫力の低下が著しい事も知って下さい。風邪から肺炎で亡くなることも珍しくはありません。歯肉炎から敗血症になり亡くなった方もおられました。あと、毛のう炎から巨大な皮下膿瘍を引き起こすなど普通ではあり得ない膿みかたをしたりと、一度坂道を転がるとそれを止める余力がないのです。26年弱の医師人生の中で、この糖尿病が最も治療の足を引っ張り、足元をすわれてきた病魔です。

血糖を下げるホルモンにインスリンがあり、膵臓から分泌されます。実は、このインスリンで血糖を下げているのは30-40%程と思いの外少ないのです。残りの殆どは筋肉で消費しています。ですから、インスリンを出すことが出来なくなっている糖尿病には、必ず運動が必要と言われるのです。どうせ動かすならば、大きな筋肉を動かした方が糖の消費も大きいですから効率的です。大きな筋肉とは、主に下半身についていますからスクワットやウォーキングが良いと言われる所以です。

殆ど運動らしい運動せずに糖分を取る事は、膵臓にインスリンを出させる負荷をかけ続けることになるので良くありません。ましてや、空腹でケーキバイキングへ行くのは糖尿病を作りに行くような行為です。また、喉が渇いたからと言ってジュースを飲むことも同じです。ジュースに良く使用されている液糖は吸収が早く、血糖値の上昇が急峻となりますから膵臓への負担が大きいのです。

ジュースのカロリーをよく見て下さい。1本のジュースに120カロリーと表示されていた場合、砂糖に換算しますと30gになるのです。皆さんはご家庭で喉が渇いたからと言って350mlの水に30gの砂糖を溶かして飲むでしょうか。この美味しく飲めるジュースという物は、香料と酸味料などの添加物による、単なる砂糖水を美味しくする高度な技術のたまものなのです。カロリーゼロも大流行ですが、人工甘味料が使われていることが多く、発癌性が危惧されていますのでお勧めは出来ません(発癌の危険性を負ってまで飲みたいなら仕方有りません)。となれば、水かお茶になるのですが、市販のお茶飲料の茶葉が無農薬かどうかは不明ですから恐いです。やはり水ですね。


医師が行う栄養指導というと甘い物は控えなさいと言われる事が多いと思いますが、これでは不十分で「炭水化物を控えなさい」が正しいのです。1日のカロリー制限も必要です。理論的には、初期に血糖上昇の元となる炭水化物を可能な限りゼロに近づければ血糖の上昇は抑えられるのです。炭水化物は、砂糖、ごはん(白米)、パンが代表的となりますが、禁止すると皆さん嫌がります。ご飯とパンでは、ご飯の方が血糖上昇は緩やかと言われています。あと、丼ものやカレーライスなどのご飯中心のメニューは止めましょう。お餅もいけません。とはいえ、炭水化物はあらゆる食材に多かれ少なかれ入っていますので、本当に「ゼロ」にすることはできません。薩摩芋やカボチャも分類状は炭水化物ですが、それ以外の栄養素が豊富なので外すには惜しく、食べ過ぎないようにすれば良かろうと思います。そこで考えられた食事が低GI食です。

低GI食(低グリセミック・インデックス食:低インスリンダイエット)とは、膵臓から緊急的にインスリンを分泌させない食事の仕方であると受け止めて下さい。これが基本です。
1 最初に繊維質から食べる(線維で絡めて吸収を遅らせる意図)
2 食事は良く噛み、ゆっくりと(早食いは血糖上昇を招きます)
3 少量の炭水化物はなるべく最後にする
4 蛋白質を中心として脂質を加える感じ
5 総カロリーは大まかにでも計算すること
6 糖質を控えるのは当然です(甘味などです)

* 糖尿病ではない人が極端に炭水化物を控えることはお勧めできません。


血糖が高いと必ず糖尿病薬が出ます。様々な種類がありますが、スルホニル尿素系の処方を受ける事が多く、これは膵臓からインスリン分泌を促す薬剤です。疲弊した膵臓にこの薬剤は作用しますと、疲れ切った馬に鞭を入れるようなものなので、やがては動かなくなります。ご自身の薬剤が、インスリンの分泌を促すタイプであれば要注意です。医師は膵臓が機能しなくなるまで使い続けますが、その先は「もう薬は効きませんからインスリン注射です」と言うのです。

いろいろ書きましたが、恐ろしい病気であることが伝わることを願っています。