がん治療の革命を実現させた画期的な研究と新薬開発でノーベル医学生理学賞の受賞は素晴らしい研究でございますね
でも、ちょっと夢の抗がん剤のイメージをメディアが報道しすぎることが心配です。少し最近の昔に「分子標的剤」が夢の抗がん剤として鳴り物入りで医療界に登場しました。この時もメディアは今回と同じように報道していたことを覚えているでしょうか。
夢の新薬"分子標的剤"には副作用が少ない
そして、こぞって使われた結果はご存じの通り、肺線維症による死者が続出しました。その後、注意喚起が医療機関に行われ、現在もそれなりの効果と副作用を出しながら使われております。夢の抗がん剤から、単なる1薬剤となりました。まあ、選択肢が増えることは悪いことではありません。
*参考サイト:薬害イレッサ事件 http://iressabengodan.com/about/
ですから、報道の言葉の意味を正しく理解しなければなりません。
従来の抗がん剤と比較すると副作用は少ない
これを → 「無い」に勘違いさせる報道に問題
今回のオプジーボも似たような状況になっております。ノーベル医学生理学賞は素晴らしい。日本人がノーベル賞を取った!という報道は素晴らしい。しかし、内容についてはいいところだけが報道がされている感じ。しかも、過熱報道気味。
今朝の新聞にも「再発の危険性が軽減した」と書いてあるが、間違えではない。ただ「従来の薬剤が起こす副作用の率と比較して」が抜けている。実は新たな副作用がてんこ盛りなのである。中日新聞に「効果があるのは2割程度」と書いてある点は比較的、冷静な記事かな。
当初は1人当たり年間3500万円の費用がかかることが問題となり、医療費が破綻する可能性があるということで1000万円に薬価が引き下げられた。しかし、藤田保健衛生大学病院では2年前の5倍の投与数になっているという。今回の過熱報道により、全てのがん患者さんが投与を希望するだろう。似たような新薬も同じ価格帯でどんどん登場する。値下げされた製薬会社の心情としては使用枠の拡大を望むだろうから、保険適応の拡大も時間の問題だ。年々、がんと診断される人は増え続けており、使用量は格段に増えることも想像するに難くは無い。医療費を破綻させるわけにはいかないから、健康保険料や税金を上げるしかないだろうな、きっと。
だから使うな という話ではない。それなりの効果は期待できるが、夢を膨らませすぎず、正しい知識を持とうという話である。
「オプジーボ 添付文書」で調べてみよう。PDFファイルをクリックすると、医療関係者か? という画面になるが、堂々と医師とか薬剤師のボタンを押しちゃおう。あとで謎の請求が来ることもないし、消えない脅し画面が出ることもない。
なぜ誰でも入れるのか? そういう法律なのだろう。なぜこの画面が出るのか? 1人でも見ない人が増えるように願っているとしか思えない。
真剣に読むと難しいから、ボーッと眺めているだけでもいい。使用上の注意も「**における本剤の有効性及び安全性は確立していない」がたくさん書いてある。更に進むと、添付文書を読み慣れている私でも、かつて見た事もないほどの、おびただしい、副作用の、数々が、列挙されている。この%を加算していくだけで、何も起こらないはずはないということが分かるだろう。ただでは済まないぞと。
この副作用の内容を見て直ぐに分かることは、自己免疫疾患系統のオンパレードだということである。新聞雑誌にも薬剤が効果を発揮する仕組みが図解されているから分かりやすい。
*「オプジーボ 仕組み」 → 「画像」 で検索
対がん免疫細胞にはON/OFFのスイッチを持つ。がん細胞はOFFのスイッチを押して無力化することができるが、そのスイッチにカバーを掛けて押せなくさせるのがオプジーボの仕組み。ノーベル賞のポイント
ということは?
対がん免疫細胞は常時ON
例えて言うと、
派出所で事務仕事をしている警察官(OFF)
指名手配犯を発見し逮捕行動へ(ON)
刑務所へ護送して派出所へ戻る(OFF)
この警察官を常時ONにしたらどうなるか? 派出所に戻っても逮捕時と同じ興奮状態で、下手をしたら椅子を蹴飛ばすとか投げるとかして窓ガラスを割るとか壁に穴を開けるとか、自己破壊の世界に行くかも知れない。
その「自己破壊」系統の副作用(自己免疫疾患:難病)がずらりと並んでいるのである。
がんを小さくする可能性と同時に、
難病を請け負う可能性がある。
その点を充分に理解しておいて欲しいものです。
それだけです。
はい。
*著書:あなたが信じてきた医療は本当ですか?(評論社) にも書いてます〜 Amazon