東京平和映画祭に行ってきた。

3本見た中で、一番感動したのは「カンタ!ティモール」。

島の美しい自然や子どもたちの笑顔や歌に彩られた美しい映画。

でもそこで次第に明らかになっていくのが、独立までの苦難の歴史だ。

東ティモールが独立を宣言してから実際に独立するまでの約25年間、インドネシア軍の弾圧は激しく、住民の3人に1人が殺されるほどだったという。

そのインドネシアに最大の資金援助をしていた国が日本。

知らなかった。

日本への天然ガスの最大の輸出国がインドネシアなのだという。

そしてインドネシアが東ティモールをなんとしても独立させたくなかったのは、東ティモール沖の油田?の利権を手放したくなかったからだという。

家族全員を目の前で殺されたとか、弟8人を一度に殺されたとか、姉を目の前でレイプされたとか、崖から突き落とされたうえ、体中刺され、腹から飛び出した腸を抱えながら崖を這い登って来て一命を取りとめた、とか、悲惨な体験談には涙が止まらなかった。

隣のまいこちゃんは鼻かみまくり。

でも独立派のゲリラ軍がインドネシア兵士を捕虜にしたら、決して危害は加えず、自分たちがなぜ戦っているのか諄々と説くのだという。

インドネシア軍の兵士は理想も哲学も何もなく、ただ上官の命令に従っているだけなので、正義を説かれて、共感するものも多かったらしい。

それがインドネシア内部に東ティモール独立への共感を広げて行くことにつながったという。とても懸命なやり方だと思う。

自分の家族を何人も殺した相手をとらえて、一切危害を加えない、という方針を貫いたのだとしたらすばらしい。

人々は、戻らない家族のことを語っても、インドネシア軍に対する怒りはない、という。

もう独立したんだから、いいんだ。怒りはもうない、と。

ただ悲しみはずっと残っている。

遺体すら行方不明で弔ってもやれないのが悲しい、と。

でも決して悲惨なだけの映画ではなく、歌や、子供たちの笑顔や、海や森や田んぼなどの自然はあくまでも美しい。

走り回り、歌いまくる、子どもたちの笑顔が画面いっぱいに弾ける。

今どきの日本では見られない純真な子どもたちの笑顔はこの国の希望だ。

島の精霊の言葉を伝える祭祀者は「大地を敬い、自然とともに生きなさい。それが人々の絆を強くしてくれる」と説く。

稲を脱穀させるために、手をつなぎ籾を踏んで踊る「テベ」という踊りがある。

テベを踊って、大地を踏みしめれば、大地が人々に力を与えてくれる、と独立闘争のリーダーで、初代大統領となったシャナナも言う。

そのテベをインドネシア軍は弾圧したという。

それは「人々を団結させ、魂を強靭にするから」だ、と島の人は言う。

「ほうきだって束になってるから掃けるんだよ。バラバラじゃダメなんだ。人間も団結しなきゃ」

どんなにひどい弾圧を受けても、東ティモールの人々が決してあきらめず、一致団結して独立に向けて戦うことができたのは、誰の目にもはっきりと敵が見えていたからだと思う。

映画の後で監督の広田奈津子さんが、映画に登場する歌うたい、アレックスのメッセージを伝えてくれた。


「闘っているとき、ぼくらの仲間はたった10人しかいないのに、相手は千人もいるような気がして、無力感にとらわれるときがあるだろう。
でももう亡くなった人も勘定したら、ぼくらの仲間は千人どころかもっともっとたくさんいるんだ。

味方はいっぱいいるんだから、気を強く持っていいんだよ。

闘いの中で命を落とすことがあるかもしれないけれど、でも大丈夫。

きっとぼくらは闘いに勝てるから」。

日本では自分たちを抑圧しているのが何者なのかがはっきり見えない、敵が見えていない人がほとんど、というのが決定的に違うところだ。

その中でどう団結すればいいのか。

そこが本当に難しい。

でも家族を何人殺されても、へこたれなかった人を前にしたら、弱音なんか吐いていられない。

とにかくできることをがんばろう!