昨日はTPP阻止国民会議主催のTPPハワイ閣僚会合報告会が
衆議院第一議員会館で、夜にはPARC主催の同様の報告会が
連合会館でありましたので、両方とも参加してきました。

その報告を昨夜ツイートしましたので、ここでその内容をまとめて
おきます。内容のすべてを網羅したものではありませんが、最近TPP
情報発信をサボっていることへのお詫びの意味を込めて、 ご参考までに。

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昼・夜の報告会とも、ハワイに行った山田正彦氏と内田聖子氏から
報告があり、昼の部では、ハワイに行かなかった首藤信彦氏からも
興味深い報告があった。首藤氏はもう去年からTPPは漂流に入ったと
見ているとのこと。

TPAの正式名称はtrade priorities and accountability actであり、
大統領に強大な権限を与えるわけでもなんでもなく、大統領は議会の
要求に沿って交渉し、きちんと議会に説明責任を果たせ、さもなければ
権限 を取り上げるぞ、というもの。

しかもTPAが成立したとは言っても、懸案事項がいろいろ(為替操作国
への対処、環境、漁業補助金など)残っており、それらはすべて税関法
という別の法律のなかに突っ込んでしまって、その中で協議しようという
ことになっている。

税関法が成立次第、遡及法としてTPA法に組み込まれて適用される
ということになっているのだが、その肝腎の税関法も、ちっとも成立しない
というのが今のアメリカ議会の状況。 だからTPAが成立したからすぐ妥結だ!
などと浮かれていられるような状況では全然ない。

議会の監視員が交渉を監 視していて、USTRのフロマンは監視のもとに
置かれている状態。著作権問題では、議会が医薬品のデータ保護期間を
12年と要求しているので、フロマンも12年と主張せざるを得ない。現場での
駆け引きはまったく不可能。

マレーシア、ベ トナム、オーストラリアなどは5年を要求。日本が8年を主張
しても、アメリカは8年で妥協するわけにはいかない。アメリカのTPP推進
議員 オリン・ハッチ氏は、「もし12年でなければ、TPA法に合致しないため、
TPPは議会で通過させない」と交渉期間中、ワシントンで何度も発言。

今大筋合意ではなく完全合意していない限り、オバマ在任中にTPP成立は
間に合わない(これはアメリカ議会のシステムによる)。既にオバマはTPPに
対して腰が引けていて、中途半端な協定なら要らないと言っている。 今後の
交渉は面子の取り繕いのためのようなものだ。

交渉がまとまらないのはニュージーランドが悪いかのような報道は日本の
マスコミだけ。他国のマスコミはすべて日本が悪いと報道。日本とメキシコが
「原産地規則」の件で衝突して喧嘩になったという。

原産地規則とは…純粋な日本製でなくても、一定程度以上の部品がTPP
域内産であれば、日本製を名乗れるという規則。日本は、台湾やタイなど
いろいろな国で部品をつくっているため、「40%」を主張。

一方、アメリカは55%を主張。2国間協議でその中間の40%台後半に
一度は落ち着いたとみられる。ところが、それを初めて知ったメキシコは激怒。
メキシコはNAFTAと同レベルの62.5%を主張。

62.5%になると、日本でつくっている車の多くは「日本製」を名乗れなくなり、
そうするとTPPが発効しても、関税低減の恩恵が受けられない。

一方のメキシコは、62.5%にして、日本車の多くは高関税のままに残し、
自国の自動車だけを低関税にして競争力を得たい。またアメリカは自国の
部品を買わせたいという思惑も。

日本とアメリカが2国間でいろいろなことを決めてしまい、それを他国にも押し
付けるという図式に対し、メキシコが怒りを爆発させた面もあったようだ。甘利 氏も
激怒して、お互い口もきかないような状態とのこと。

甘利氏とフロマン氏はおしどり夫婦のように仲よく発言していたそうだが、
甘利氏が8月下旬に次の閣僚会合を、と発言しても、フロマンははっきり同調は
しなかった。実際には無理だろう、と内田氏。

マグロの関税が下がるという報道もあるが、マグロは巻網による混獲なので、
やめろと圧力をかけられている。漁獲量自体大幅に減る恐れあり。(漁業資源を
守るためには日本人も少し我慢しなければならないとわたし=安田は思うけれど)

今あるものは、2国間交渉の累積だけ。日米は2国間交渉の中で多くの事柄に
ついて譲歩してしまった。 2国間交渉で譲ったことは、TPPが発効しない限りは
有効でない、と政府は答弁しているが、それは嘘、と首藤氏は指摘。

首藤氏は「日米2国間交渉で決まったことはTPPが発効しなくとも、すぐにも実施
されていく。それは佐々江大使とマランティスとの間の書簡を見れば書いてある こと」
と主張。 今、その書簡
 http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2013/4/130412_syokan.pdf…  
を確認してみたが、そうは読めないように思うが……。

TPPは闘牛士の振るマントのようなもの。ヒラリヒラリと振られるむこうで、さ まざまな
2国間交渉が進んでいく、というのが首藤氏の見方。牛肉の月齢制限等々、日本が
譲歩したことで既に実施されていることはいろいろあるし、それが今後も続いて いく
可能性は高い。

TPP交渉漂流おめでとう。でもだからといって、安心していいわけではないところが
つらい。