僕は歓喜した。なぜなら、冷蔵庫を開けたら、マグロがあったからだ。
僕はバイト帰りに金麦を買った。ついでに、ビーフジャーキー(又の名をカルパス)を買った。ウチに帰ったら、一杯やろうと思っていたからだ。
ビーフジャーキーは、この前のゼミ合宿でも食べて、かなり美味しかったから買ったのだ。ビーフジャーキーを食べることを楽しみにしていた。
しかし、それを超えた喜び。感動。
冷蔵庫を開けたら、マグロがあったのだ。
ウチに帰るのは、久しぶりだった。なぜなら、ここ最近、一人暮らしの人のウチに泊まっていたからだ。まともにご飯は食べていたが、生ものは値段が高いので避けていた。
僕の大好きな食べ物。それは、お寿司、それと刺身。つまり、魚が大好きだった。
魚派か肉派かと問われたら、必ず魚派と答える。
肉は僕の中でA級。しかし、魚はS級で好きだ。
その中でも、マグロはかなり好きだ。お寿司屋さんに行ったら、必ず食べる。サーモンよりも、マグロだ。もちろん、サーモンも好きだが、やはりマグロだ。今まで一番口にした魚は、マグロだ。
もう一度言う、僕はマグロの刺身が大好きだ。
そして、バイトから帰ってきて、久々にウチに帰って、ビーフジャーキーと金麦で一杯やろうと思っていた矢先、冷蔵庫を開けたら、マグロの刺身があった。それも、たくさん。居酒屋で売られるなら、3人前くらいの量のマグロがだ。ビーフジャーキーの存在は既に霞んでいた。
僕はとても嬉しかった。
母に、
「食べていい?」
と聞くと、
「いいよ。」
と、返事がきた。
ダメと言われたら、どんなにショックだったろう。
でも、GOサインが出た。僕はマグロの刺身が、金麦と食べれると思うと、最強に嬉しくなった。
例えて言うならば、好きな女の子に告白し、OKの返事をもらった時と同じくらい。
そんなわけあるかい、と思う方もいるかもしれないが、その時と同じくらい、心が動揺し、そして歓喜した。緊張もしていたかもしれない。
そのくらい嬉しかった。本当に。これが、塩辛とか、豆腐とか、キムチとかだったら、バイト先が決まった時くらいの喜びだろう。
しかし、冷蔵庫にあったのは、マグロの刺身だった。しかも3人前くらいの。好きな女の子とこれからどんなデートしようか、どんな素敵な毎日が待っているんだろうか、そのくらいの楽しみが湧いた。
僕は、最近流行りの、真空パックの醤油を手に取り、お椀に入ったマグロにかけ、わさびを少し入れ、漬けた。マグロ漬けだ。みりんも入れたかったが、ウチになかった。それは少しショックだった。ただ真空パックの醤油は普通と違い、みりんぽい感じのが混ざっているので、まろやかや美味しい醤油なのだ。それだけで、全然いけるやつなのだ。
にんにくも混ぜようかと頭をよぎったが、今回は混ぜなかった。なぜなら、マグロ本来の美味しさを味わいたかったからだ。
ご飯と一緒に食べようか迷ったが、マグロだけで臨んだ。なぜなら、金麦と一緒に、一杯おつまみ感覚で、食べたかったからだ。
最後に、万能ネギを混ぜ、もう一度醤油をかけ、僕は箸と金麦を持ち、部屋へと向かった。
気分は最高潮だった。美味い飯を食べる直前。これはいつだっていい。いつだって最高の時間だ。三度の飯より~が好きという言葉があるが、僕にとってご飯を食べることは、とても幸せなことなので、そういう言葉を述べる人に理解を示すことができない。演劇はもちろん好きだし、これからも続けていきたいが、飯は欠かせない。ご飯なくしては、生きることはできないのだ。
「プシュッ」
金麦を開ける。この、美味しいつまみを前に、ビールを開ける瞬間は、初デートで例えるなら、好きな女の子と待ち合わせて、会った時と同じくらいの、感動だ。
グビグビとビールを飲む。やはり金麦は、コクがあり、美味い。
果たして、漬けマグロの方は、、
意気揚々と、漬けマグロを口にする。
ああ、、、美味い、、、!!
こんなに美味いなんて、、、!!
マグロと醤油の絡まりがなんともいえない。わさびの刺激が、味を取り締まる。万能ネギの存在が、単調な味でないことを証明してくれる。
スジを噛む。スジは嫌いな人が多いようだが、スジや脂身などは、僕は大好物だ。
マグロのスジは、いつまでも噛んでいたい。
ああ、幸せだ。酒がすすむ。
生きていてよかった。至福の時間である。
ごちそうさまでした。とても美味しかった。
はて、一つ気がかりが、、
果たして、全部食べてよかったのだろうか、、
おわり
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