バイト中に水が止まった。正確に言うと、出にくくなった。原因は水道管の故障か何かなんだけど、よくわかっていない。
ちょろちょろとしか流れない。しかし、トイレは全く流れかった。お客様用トイレも、従業員用トイレも全く流れなかった。

どうしようかと話し合い、業者を呼ぶにも、もう閉店までそんなに時間もないし、トイレだけなら、お隣のコンビニを利用してもらおうという結果になった。

僕のバイト先はファミレスで、その隣にコンビニがあるのです。


しかし、無断で借りるのも失礼かなと思い、一言言いに行くことになった。とりあえず、僕が行くことに。お店の制服の状態で、それを伝えに行った。





しかし、ここで、問題が一つ。

僕は帰りにそのコンビニによってジャンプを立ち読みするのが日課だった。

ただのお客さんならいい。立ち読みだ。お店側にとっては、あまり喜ばしいことではない。

わざわざ注意する店員こそいないが、できれば他人同士で、全く触発しないドライな関係でいたい。

僕は、埼玉県のどちらかというと東京よりの人間なので、そう思う。

コンビニのシフトも、恐らく曜日せいだ。立ち読みする時は、大体いつも同じ店員だ。

そこのコンビニは実は最近できたばかりなのだが、立ち読みは5回はしている。深夜の同じ時間に行くので、顔も少しは覚えられているだろう。

しかも、僕は立ち読みするとき、ジャンプだけでなく、スピリッツも読むし、ヤンジャンも読むし、ヤンマガも読むし、男性ファッション誌も読むし、女性ファッション誌も読む。基本30分くらいは立ち読みをしている。これは平均的にみたら、恐らく長い時間だ。
立ち読みの平均時間は恐らく10分程度だろう。僕は長く居座るので、他人の立ち読み時間が大体わかる。今まで、僕が立ち読みしてる最中に、僕より後に来た人よりも、僕は立ち読みしている。
僕より長い時間を立ち読みしている人間を、僕はまだ知らない。

自分でも思うが、面倒くさい人間なのだ。それでも、僕は読む。なぜなら、この時間がとても好きだからだ。



しかし、そんなやつがだ。そんなはた迷惑な人間が、お店代表として、トイレを貸してくださいとお願いしにいくのだ。

これは如何なものか。
僕は店員さんと、買い物以外でのコンタクトを取らなければいけなくなる。
これは、今後、ここで、立ち読みする上で、非常に気まずい。

うわ、隣のファミレスの店員さん、また立ち読みしてるよ、、みたいに思われてしまう。

しかし、言うしかなかった。

僕は言った。
「すいません、私そこのファミレスで働いているものなのですが、こちらのトイレが使えなくなってしまったので、もしよければ、お客様にこちらのトイレを利用するようお願いしても大丈夫でしょうか?」

確かこんな感じだ。詳しくは覚えていないが、確かこんな感じだ。

これで、僕はここで働いていることが、認識された。

しかし、僕は店の制服を着ていた。普段立ち読みする私服姿ではなかった。これがこの後の微妙な判断を下されることになる。


僕はバイトを終え、帰ろうと思った。
しかし、バイト中、ずっとトイレに行きたかった。しかし、トイレは使えない。僕はコンビニでしようかと思ったが、後ちょっとでバイトも終わるだろうと思って我慢していた。
バイトが終わり、店を出ると、とてもトイレに行きたくなった。今は冬だし、トイレに行きたい欲がいつもより強い。

我慢しようかと思ったが、店から出たら目の前には当然コンビニがある。
一瞬考えた末、僕はそのコンビニを利用することにした。

僕は真っ先にトイレに向かった。
"利用の際は、従業員にお声かけ下さい"という注意書きではなく、"ご自由にご利用ください"とあったので、真っ先にトイレに向かった。

僕はとてもすっきりし、店を後にしようとした。

しかし、その日は、ジャンプの発売日だった。
早くワンピースが読みたい。

気づくと僕は、ジャンプを手にとっていた。そんで、スピリッツ、ヤンジャン、ヤンマガ、男性ファッション誌、女性ファッション誌と、いっぱい読んだ。時間は30分くらい経っていた。

僕は立ち読みのルートとして、雑誌は買わないが、何か必ず買う、という鉄則のルールがある。これを破るわけにはいかない。

しかし、それには、もちろんレジを利用しなければならない。
ただし、店員は、先ほど僕が、トイレを借りるとお願いした店員だ。

今まで立ち読みの僕を見てきた人間だ。

気まずい、、

しかし、こんなにいて、何も買わずに帰るのも、かなり気まずい、、

そんで、「営業が終わったので、もうトイレ利用はないです。ご協力ありがとうございました」と、言おうか、脳裏をよぎった。

しかし、僕は私服姿だ。ファミレスの店員としてではなく、ただのコンビニのお客として、そこにいる。

言うべきか、否か。


とても迷った。

ただ、僕は前述した通り、なるだけドライな関係でいたい。
でも、僕の良心が、それでいいのかと心の扉を叩く。

僕は、金麦とカルパスを手にとった。そして、レジへ向かう。ちゃんと言おう、その時思った。



「439円になります。」
「はーい。」(1000円札を出す。)
「561円のお返しです。」
「はーい。」
「ありがとうございましたー。」
「はーい。」









僕は、店を出た。



ガッデム!!!

言えなかった!急に、まあ別にいいやって思っちゃった!
別に、俺、今、お客さんだし、別にトイレとか別にもう使わないのはあっちもわかってるっしょ、言う必要ないっしょ、てか、別にあっちも気にしてないっしょ、むしろ言うだけ無駄無駄ー!

そんなことを、「はーい。」の感情として思っていた。









果たして、僕は間違っていたのだろうか、、


そして、なぜ、そこで立ち読みしたのだろうか、、




非常に悔やまれる一日だった。





おわり


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