僕は今、非常に腹が立っている。
それは3Gの遅さに苛立っているわけでも、前髪の癖っ毛が何回直しても直らないことに対してでもない。
こんな怒りは久しぶりだ。この怒りを誰にぶつけることもできない。やるせない気持ちでいっぱいだ。
体から全てのやる気を削がれる。
言うなれば、失恋の時のような、演劇の大会で落ちた時のような、そういうレベルのどうしようもない落胆具合だ。
それは、ドトールのポイントカードが使えなくなったからだ。
ドトールで一つ飲み物を頼むと1ポイント貰える。10ポイント貯まると、無料でSサイズの飲み物をなんでも注文できる。
僕は8ポイントまで貯めていた。今日で9ポイント目。そろそろポイントでどんな飲み物を頼むか考える頃合いだ。
僕は一番安いアイスコーヒーを注文すると共に、普段は頼まないちょっと高めのドリンクに目を運ばせていた。
アイス・ハニー・チャイ・ラテなんか普段頼まないし、いい値段だし、これにしよう、いい贅沢だ。せっかくのポイントカードでアイスコーヒーなんかを頼むバカがいるものか。よし、アイス・ハニー・チャイ・ラテだ。それで決まりだ。
そんな思いを抱きながら、Tポイントカードと一緒に8ポイントまで貯まったドトールポイントカードを出した。
「すいません、このポイントカード、昨日で期間が終了しちゃいました。」
「、、、は？」
事態を把握するまで時間がかかった。幸い僕の後にはお客はいない。間髪入れずにドトールの店員は続けた。
「こちらでこのポイントカードを破棄させていただいてもよろしいでしょうか？」
いやいやいや、何を言ってるんだ。こっちは8ポイントまで貯めたんだぞ！4月頭くらいから、コツコツと貯めたんだ。スタバやタリーズなんかに行かずに、ずっとお宅のお店を利用し続けたんだぞ。全てはこのポイントカードのために！
もちろんドトールさんは普段から安いですよ。だから、利用させていただいてますよ。でも、このポイントカードがあるから、いつもより気にして、お宅のお店を利用させていただいてるんですよ。そのことわかって言ってるんですかあなた。
もちろん、大の大人がこんなこと言えるはずもない。破棄することにイエスと言うことしかできない。
「このポイントカード、もう一生使えないんですよね？」
最後の悪あがきだ。店員から見たら、酷く滑稽だったろう。
しかし、無情にも、使えないという。
落胆した。
なぜだ！なぜ使えないのだ！くそめ！この野郎！
貯めたんだぞ8ポイントも！セコいかもしれないが、この二ヶ月半、ドトールでポイントを貯めることを、人生の喜びベスト10に入れてもいいくらい、一つのポイントを貯める度に、密かに喜んでいたんだぞ！
僕の持ってるポイントカードは、Tポイントとポン太カードとドトールとすた飯くらいだ！
それなのに！それなのに！それなのに～！！
僕はアイスコーヒーを貰い、席へと着いた。
ああ、苦い、、ガムシロ2個も入れたのに、今日のは一段と苦く感じるよ、、
おわり
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