AI wo Motto(16) | えりんぎのブログ






~ユノside~







「はぁ─────っ、…ねぇ、ユノ?」


「…………………。」


「ちょっ、…!!!…ユノ!!!」


「…………………。」


「おいっ!!!……ユノ。聞いてる?」


「……………聞いてない。」


「…なんだよっ!!!聞こえてんじゃん!!!」


大音量のハウスミュージック。


楽しそうに踊る若者たち。


俺のもうひとつの店。


ちょっと奥まったカウンター内で俺の真ん前のスツールに座るチャンミン。


「俺、今、仕事中。」


「なんだよっ!!!客と喋るのも仕事だろ?」


────なんなの?コイツ。


あれだけキツく言ったつもりなのに、まるで効いてないな。


俺のこと、いつでも受け入れOKの男だと思ってねぇか?


「……ユノォ~~~!」


って、グラスを拭いてる俺の手の上から両手を重ねてくるし。


「触んな!…落とすだろ?ってか、おまえ、酔ってるだろ?」


「ふふ~ん!酔ってませ~ん。話を聞いてほしいだけで~す!」


──────酔ってるな。


デッカい目をさらにクリクリっとさせて、………なんだよ、もう。


そんな顔で笑いかけてくんな!


「ほら!───水飲め?」


水の入ったグラスを乱暴に置いたら、波打った水がチャンミンのこぶしを濡らして。


「わぉ。冷て~~!ユノ、ひどい~!」

って、ひとりでケラケラ笑ってる。


ダスターをパサッと投げおいて。


「チャンミン、…帰るぞ?送るから。」


グイッと腕を引けば、思いっきり振り払われて。


「…酔ってない、って!!!離せよっ!!!」


──チッ、…舌打ちしながら、有無を言わせず強引に連れ出した。


どんなに暴れようが、酔っ払いに俺が負けるとでも思ってんの?


こんなに酔ってたら、いつお持ち帰りされるか心配で見てらんないし、…おまえもそれを承知でいつも俺の店に来るんだろ?


店長のシウォンに、すぐ戻る、とだけ告げて、足元も覚束ないほど酔ったチャンミンの身体を支えて駐車場へ。


ドサッと乱暴に助手席に放りこむ。


「もっと、優しく扱えっ!!!バカユノ~!!!」


ほんと、口の減らないやつ。


チャンミンのマンションはもちろん入ったことないけど、場所だけは知っていた。


いつだったか、近くを通ったときに、──あれ、僕んち、って教えてくれたっけ。


隣でウトウトし始めたチャンミンの前髪を、そうっと撫でる。


んん…、と、くすぐったいのか、口元を緩めて頭を捩る姿に、温かい何かが胸に灯って、───やっぱり憎めない。


そんなことの繰り返し。


ふと、…俺に話したかった事って、なんだろ?


そう思ったけど、…まぁ、いいか。


おまえのいい話も、嫌な話も、聞きたくないから。


「──んっ、…ん、…ユノ、……。」


ただの寝言でよばれたなまえが、こんなにくすぐったい、とか。


信号待ち、…左手で、チャンミンの頬をフワッと包んだら、寝たままなのに、…ふにゃ、と崩れる顔。


親指で唇を何度さすっても、一向に目を開く気配がなくて、───チュッ、…軽く触れるだけのキス。


内緒のキスがもうひとつ増えた夜、───。