~チャンミンside~
乱れて皺の寄ったシーツが居心地悪くて。
全身びっしょりの汗とか、とめどなく溢れた涙とか、・・僕のアレ、・・とか、とにかく気持ち悪くて。
身体中を覆う倦怠感や腰の痛み、・・無理な体勢で引きつったように痛む筋。
まるでいいところのない今の状態で。
「─────チャンミナ。もっとこっちへ来いよ?」
「──────ユノ。/////」
────こんなにも幸せだとか。
グイッと腕を引かれ、勢いのままユノの首筋へ腕をまわした。
隙間なく密着した素肌がやっぱりベタベタするけど、それでも気持ちよくて。
チュッと軽くキス、少し隙間をあけてまどろむ僕の髪を優しく梳きながら。
「おまえ、さ。・・俺とはこれきりのつもりだった?」
何気なく言われたその言葉に息をのむ。
返す言葉が見つからず視線が泳いだ。
確かにユノの言うとおり、
留学を機に僕らの関係はなかったものにするつもりだった。
恋人としての今を失くしても、将来の奥さんが絶対に入りこめない仕事という領域で、ユノを助けて側に居続けることを選びたかったんだ。
「・・・ユノ。」
そうだ、・・と、ひとこと言ってしまえばいい。
最初で最後のいい思い出になりました、と。
それなのに、どうしてもその言葉がでない。
顎を掴んで強引に合わされた目線。
驚くほど真剣な目をしたユノからは先ほどまでの甘さは微塵も感じられなくて。
「・・・ユノ、・・ごめ、・・
「・・・させねーよ。」
それは、ほぼ同時に。
「え?」
「おまえを諦める気なんかないって事。」
「最初から分かっていたことだ。
ここで手離すつもりなら最初から受け入れない。」
───ユノ、・・でも・・と、言いよどむ僕に。
吸い込まれそうなほどの深いアーモンドアイ、─────。
「留学してもっと学びたかったんだろ?
思う存分勉強してきな?」
「───でも帰る場所は俺だ。
これは絶対だから、・・迷うな。」
無口で不器用なくせに、
ほんの時々、絶対的な自信を纏った言葉をくれる人。
その自信の根拠はなに?と聞きたいけど、たぶん教えてくれそうにないから。
それでも、───ユノについていきたいと、僕に思わせるには充分なほどの力があった。
「・・ユノ、・・僕は、貴方の側にいて・・いいんですか?」
「・・・ユノを、諦めなくて、・・いいの?」
ぶわっと視界が滲んで。
声が震える。
先行きの見えない未来は変わらないけど。
貴方の揺るぎない想いを聞けた、・・それだけで。
───僕は今より少しだけ強くなれる。
ふっ、と頬を緩めて、ぎゅうっと僕を抱く腕に力をこめたユノ。
「心配するな、ちゃんと考えてるから。
もし駄目だったら、・・最悪、2人で逃げるか?」
って冗談まじりに笑う。
「・・そうですね、・・2人で無人島にでも行きましょう。」
なんて僕も泣き笑いで。
愛しくて、愛しくて、・・どうしたって離れられないと、誓った夜。
「ちょっ、・・ユノ!ちゃんと引っ張ってくださいよ。」
ベッドの反対側ではシーツの端を面倒くさそうに持つユノ。
「なぁ、こんな夜中にベッドメイキングってどうよ?
おまえの部屋に移動すればいいだろ?」
なんてぶちぶち言ってるけど、あのままのシーツを翌日スヒさんに見られたらと思うとぞっとする。
どう見てもその行為が残る痕。
───これは明日密かに洗おう、と、新しいシーツを出してきたのに。
そのやる気のなさ、───あまりに隠す気が無さすぎて呆れる。
「じゃ、いいです。気を使えないなら、こういう事は今日を最後にもうしませんから。」
ぷい、と、ユノの手からシーツを奪ってひとりで整えていく。
そうだよ、・・身の回りの世話をあんな身近な人にお願いしてる部屋で、こんなこと!
─────無理、・・絶対ムリ!
ぶんぶん頭を降ったらその頭をぐっと掴まれた。
なに?───って言う前に。
押しつけられるように、───熱い唇。
「ん、・・っ、///・・ハァ、・・。」
怒りの色を隠そうともせず、───「もっかい、・・する。」とか。///
「絶対やだ!」って逃げる僕と。
「いーや。絶対する!」ってムキになって追っかけてくるユノ。
結局キレイに整えたシーツでドタバタと掴み合いをしてまたしわくちゃにしてしまったばかりか、───本当にその気になっちゃったなんて。
それはユノだけじゃなくて、僕もっていうんだから始末に負えない。
────僕の色ボケはまだまだ続いてるみたいだ。