台北で、アジアで話題のシェアバイクObikeを使ってみた | ちょっとそこまで☆増刊号

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最近、ロードバイクの走行日記は書いていない。ぼちぼちと走ってはいるのだが、ほぼ武庫川日記になってしまう。理由は五十肩とかいろいろあるのだが、そちらはまたいずれ記事にする。


自転車に比べて旅行関連の記事は定期的に書いているが、それもいわゆる旅行記そのものではない。旅行×SIMとか旅行×自転車とか、タグを絡めて断面を取り出し、記事にしている。旅行記そのものを書くには膨大すぎて、ツイッターでリアルタイムに段落と写真ごとに小出しにでもしない限り、無理だ。もっともそうすると、大半は旅行×グルメになってしまうだろうけれど。


ということで今回のタグは、旅行×自転車×シェアバイク。2017年8月末、台湾の台北でシェアバイク、Obikeを使ってみた話。


台湾では、公共レンタル自転車システムが発達している。台北のU-bike、高雄のc-bike、台中のiBike(U-Bike)、最新は台南のT-bikeだ。これらに乗って来た記事は次の通り。

 

 台南の公共レンタル自転車、T-Bikeに乗ってきた…奇美博物館

 台中の街を公共レンタサイクルU-Bikeでサイクリング

 台中の公共レンタルバイク UBikeに登録して乗ってみた

 高雄の街をサイクリング その2…公共レンタサイクルc-bikeで蓮池潭へ行く


今回のObikeは、これまでのシステムとは似ているようで根本的にちがう。従来の公共レンタル自転車システムは、ステーション(ドック)を拠点としてレンタルの開始・終了を管理していた。課金は、交通カードやクレジットカードで行う。基本的に、ステーションからステーションへの移動を軸に利用することになる。


これに対して、Obikeなどのシェアバイクシステムは、ステーションを持たない、ドックレス自転車だ。スマホアプリで個別の自転車にアクセスし、どこででもレンタルを開始し、どこででも終了出来る。ステーションに紐付けられていた自転車が解放されて、街中どこにでもばらまかれて乗り捨て自由になったわけだ。実際に利用してみて、この違いは想像以上に大きかった。その使い心地を中心にレポートしてみる。

 


Obikeアプリをダウンロードして登録しておく

 


Obikeはアプリの利用が前提なので、あらかじめダウンロードして設定しておく必要がある。日本の携帯番号で日本にいる間に登録できるので、旅行前に済ませておくといい。上の画像はObikeのサイトにリンクしてあるので、そちらからアプリのダウンロードができる。

 

登録時の日本の携帯番号と、実際に現地で使用するSIMの番号が違っても構わない。登録するときにSMSが返ってくるので、それを受けられる状態でさえあればOKだ。

 


登録(サインアップ)は難しくない。Facebookアカウントでも登録できる。電話番号を入力すると、認証のためにSMSで4桁の数字コードを送ってくるので、それを入力する。数字コードの有効時間は2分なので、もたついて中断したときは、またクリックすると再送信してくれる。

 

 

コードが通ると、自分で作ったパスワードを入力。途中の確認画面を何枚か省略しているが、自然な流れでとても分かりやすい。

 

サインアップが終了するとマップ画面になる。日本で登録すると現在地付近のマップが表示されるので、スクロールして台湾などObikeを利用できる都市にしてやると、どれだけの数の自転車が街にばらまかれているかがわかる。上の画像中央は、高雄の美麗島站付近。

 

画像右はメニュー画面。実際にObikeを使用するときは、この中のMy Walletで支払いの登録をする必要がある。現地で自転車を前にしてカード情報を入力するのはスマートでないし、道端で財布からカードを出すのもなんだか危ないので、事前に登録しておくことをお勧めする。

 

 

支払い登録をしていくと、最後にデポジット(保証金)がUS$49、というのが出てくる。保証金だから解約するときには戻ってくるのだが、5,000円となると一瞬ためらってしまう。しかしこのデポジットを払わないことには、Obikeのサービスは受けられない。なるほど、そういうビジネスモデルか。

 

実際に借りて乗るといくらかかるかは後述するが、タダ同然とは言わないが、ちょい乗りだとタダの隣だ。それでは民間企業であるObikeは儲からないので、デポジット運用で商売をする。このあたりが自治体主導の既存の公共レンタル自転車と根本的に違うところだ。それは自転車そのものにも表れているが、それも後述する。

 

 

実際にObikeに乗ってみた

 

 

それでは街へ出て実際にObikeを使ってみよう。

今回のホテルは台北車站の横。自転車で朝の散歩に行く。Obikeアプリを立ち上げてみる。

 

 

歩いてすぐの場所に何台かある。マップを見ながらその辺りに行ってみると‥

 

 

あった。黄色いのがObikeだ。しかし、誰か知らんけど、こんな所に停めたらあかんやろ。自分の自転車なら車道沿いの駐輪スペースとかに停めるんじゃないの?

 

 

壊れていないか、ひと通りチェックする。

 

 

変速無し、前カゴ無し、前後ドラムブレーキ、ママチャリ的な発電機とライト、チェーンステー省略のフレーム。既存のUbikeに比べると、ずいぶんチープでライトな自転車だ。また、ホイールにはバルブが見当たらない。メンテナンスフリーのノーパンクタイヤだ。

 

 

個体識別用のバーコード。リアフェンダーとハンドル基部についている。乗る前でもまたがってからでも、アプリで使用開始出来る。自転車とアプリはBluetoothで交信するので、スマホのBluetoothはオンにしておくこと。

 

 

画面左は、デポジットの払い込みをしていなかったので、乗ろうと思ったときにデポジットの請求画面が出てきて支払ったところ。US$3のおまけがついてくるので、とりあえず保証金だけで走り出すことができる。

 

使用開始は、アプリのマップ画面でUNLOCKをタッチすると、カメラモードに切り替わる。バーコードを読み込むと、個体を認識して後輪のロックがガチャッと自動解錠される。あとは走り出すだけ。

 

画面右は、注意書き。

・手動でロックするとき(返却するときのこと)は、ブルトゥースがONになっていることを確認すること

・走り出す前にシートバックルを締めてください(シート高を調節したあとロックを忘れるな)

・ブレーキをかけるときは右(後)をつかうこと

 

シート高を合わせて走り出す。早朝ですいている車道を走る。全身に風が当たって気持ちいい。

 

 

台北車站の南側、二二八和平公園に来た。中華圏に限らず朝の公園はいい。皆それぞれに楽しんでいる。

 

 

ここであらためて自転車をチェックする。

 

 

パネルには使い方の説明が。

 

 

共享自行車は、シェアバイクという意味。

 

 

公園内をサイクリング。早朝なので主要施設はオープンしていないが、国立台湾博物館、台北二二八紀念館はお勧めだ。時間があれば公園を抜けて、総統府も見ておくべき。自転車なら余裕だ。

 

 

返却するときは、後輪のロックをかけるだけ。スマホの操作も不要。ただしBluetoothはONにしておくこと。ステーションでなく、どこでもいいので、もはや返すという感覚すらない。自分の自転車を停めるのと何も違わない。

 

返却にスマホ操作は不要だが、ロックすると、スマホには画像右のような画面が現れるので、確認のために見ておこう。17分、0.8kmのレンタルで、NT$0.07。0.26円と、タダ同然。日常的にはこういう使い方が多いのではないだろうか。ステーションで借りてステーションで返すという制約がないので、小刻みな使い方になる。

 

 

翌朝。今度は早餐店へ朝食を食べに行く。ホテルを出てアプリのマップを見ながらちょっと行くと、あんなところにポツンと1台。

 

 

なんでこんなところに、と思ったが、おそらく前に使った人は、ここに停めて扉から入っていったのだろう。帰りまでこの自転車がここにあればラッキー。なくても2分も歩けばどこかにある。

 

 

ちょっと走って近所の早餐店に来た。ホテルに朝食がついていても、まず早餐店で食べることにしている。

 

 

Obikeは店の前に停める。従来の公共レンタル自転車なら、ここでワイヤーキーをかけるところだが、Obikeは後輪のリング錠をかけるだけ。すべてにおいてお手軽だ。昨日借りたのと違って前カゴもついている。

 

 

店の前に停めている間に誰かが乗って行ってしまったら、また自転車を探さなくてはいけないのか? ちょっと面倒だなと思うが、10分間なら予約しておくことができる。

 

上の画像左は、0.5km、6分乗った後にロックをかけて終了したときのもの。これくらいだと無料だ。

ここで Reserve Again をタッチすると、10分間のカウントダウンが始まる。朝食を食べている間、キープしておける。

 

予約するタイミングだが、乗る前にも出来る。ただ、行ってみたら壊れていた、ということもありうるので、その点は少々不安だ。まあその場合も、5分も歩かずにどこかにあるから、気にするほどのこともない。

 

 

 

朝食は超定番の豆漿と油條。ホテルへ帰ってからも食べるので、これだけにしておく。

 

 

食べ終わって、自転車でそのあたりを散歩。この写真、道の両側に1台ずつObikeが写っている。黄色いホイールは良く目立つ。

 

 

ここにも1台。あれ、倒れてる?

 

 

立ててみる。このタイヤはちょっとMTBっぽいブロックパターンだな。あれ、ハンドルが曲がっているぞ

 

 

サイドスタンドも立ち気味だし、よく見たらペダルが片方無いじゃないか。これは事故車だな。乗ってた人、大丈夫だったろうか。

 

しかし、こういう壊れた自転車をすみやかに回収しないと、放置自転車になってしまう。新しいうちはいいが、年数がたってきたときに、どの程度メンテナンスするのかが今後の課題だろう。せめてアプリには、故障車のフラグを立てるボタンを付けておいてほしい。

 

ところでこの写真を見て気が付いたのだが、クランクは軸の部分も一体になっていて、1本の丸棒を曲げて作られている。こんなところにも徹底的なコストダウンが図られている。

 

 

自転車を返すときは、駐輪場などしかるべき場所に返しましょう、となっているが、マナーを守れない者もいて、問題になっているそうだ。自転車専用の駐輪場はなかなか見当たらないが、バイクが多いからそのための駐輪スペースはいくらでもある。そこへ並べて停めておけば違和感はない。

 

しかし、私が乗った2台は、他に誰も停めていない場所にポツンと置かれていた。誰が何号車をどこからどこまで乗ったかは、すべてデータとして残っているから、マナーの悪いものはレンタル料を上げるとされている。

 

また、Obikeは何千台という規模でひとつの市に投入されるので、駐輪スペースが足りなくなり、オートバイ用の駐車スペースを圧迫して歩道や車道が乱れる、という問題が指摘されている。新北市のように、公共駐輪場に駐車されたObikeを市が撤去する事態も出ている。行政が整備した公共駐輪場で、駐輪されたObikeが客待ちをしているのは、民間企業の営業行為にあたるというわけだ。

 

ドックレスが売りの公共自転車システムだが、駐輪する場所を確保しないと混乱を招くという矛盾を含んでいる。また、自治体が主導して発展させてきた既存のシステムと、外国から参入してきた民間企業とのせめぎあいもある。まだまだ課題は多いが、シェアバイクというシステム自体は、本当に便利なものだ。すでに高雄市にもObikeは展開されているので、いずれそちらも乗ってみるつもりだ。日本への導入はどんな形がふさわしいのか、そんなことも考えながら今後の成り行きを見守っていきたい。