劇団フェルマータ十周年記念公演『残響』にお越しくださり、まことにありがとうございました。
ご来場いただいた方々のほか、都合がつかないながらも温かいご声援をくださった方々、公演実現のためにご助力くださった方々のお陰で、無事全三回の公演を乗りきることができました。
劇団フェルマータを代表いたしまして、演出の木村みずきがお礼申し上げます。

2016年から3回連続して、劇団フェルマータはザムザ阿佐谷で公演いたしました。第6回公演『ここからみたぱんだ2016』、第7回公演『ゆうかい』を経て、次回何をしようかという話が出たとき、第3回公演『殘響』を候補にあげたのは、ひとえにザムザ阿佐谷の魅力を知っていたからが故でした。『残響』の舞台である、取り壊しされる直前の塔の雰囲気を、天然木を使った有機的な空間を有するザムザが補強してくれるだろう、と直感したのです。
劇場に入り、舞台ができあがって、照明ができて音響が加わり、そして客席についたとき、ザムザでこの作品を上演したのはやはり正解だった、と確信しました。
劇場ごと含めた、劇団フェルマータの舞台空間、役者や調光から出来上がる時間を楽しんでいただけていたら、まことに嬉しい限りです。

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、劇団フェルマータが『残響』を公演するのは二度目です。
前回の『殘響』は、2011年の震災後に劇団フェルマータがはじめて上演した舞台でした。
実は『殘響』がかなり私情が絡んだ作品なので触れるのを迷ったのですが、この場をお借りして少し皆様のお時間いただいてお話しますと、震災のとき私は学生でしたが、濁流にのまれた場所の一部は私がよく見知った土地でした。当日、私はその出来事を自分の身ひとつで受け止めきれずもて余してしまい、たまたまそれをそばで見てしまった漆野が書いたのが『殘響』という芝居でした。どうやったら、同情ではなく、同じ出来事を同じ立場で共有することができるのか?この作品は、まさに私から放たれ、漆野が受け取ったものの残響で出来上がっているのかもしれません。今ではそれが6年越しに新たな劇場と役者という媒体を得て、お客様に届けられたという事実を、最も感慨深く思っている人間の一人です。

劇団フェルマータは十周年を迎えることができましたが、ここに来てようやく劇団フェルマータの舞台、というものができあがってきた気がします。それはひとえにいまの劇団フェルマータを担う人たちが、それまでの劇団フェルマータの残響を受け止めているからでしょう。
そして、劇団フェルマータが届けた残響ができるだけ長くお客様の中で鳴り響いてくださることを祈るばかりです。
これからも、劇団フェルマータをよろしくお願いいたします。