アイザック・アシモフ「はだかの太陽」 | アルバレスのブログ

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1957年発表。
文庫1冊、360ページ
読んだ期間:3.5日


[あらすじ]
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ニューヨーク市警のイライジャ・ベイリ私服刑事はある事件の調査のため宇宙へ旅立つ事になった。
場所は宇宙国家連合の1つ、惑星ソラリア。
事件とはソラリアで初めて起こった殺人事件だった。
彼の相棒は、かつて同様に殺人事件を解決した宇宙国家オーロラのロボット、R・ダニール・オリヴォー。

惑星ソラリアは、宇宙国家連盟の中でも特異な存在だった。
人口わずか2万人に対して人間に奉仕するロボットは2億台。
1人あたり1万台もの比率は異常とも言える値だった。
人間はあらゆる事をロボットに任せ、悠々自適な生活をおくっていた。
そしてもう一つ特異な事があった。
ソラリア人は極端に人との接触を嫌う。
幼少時と遺伝子的に決められた結婚相手以外とは直接的な接触は全く行わないのだった。

そのため殺人事件の加害者は最初から1人に絞られていた。
被害者で胎児技師のリケイン・デルマー博士の妻、グレディアだ。
デルマー博士が頭部を撲殺されたその場にいたのは1体のロボットと気を失って倒れていたグレディアだけだった。

一見簡単な調査に思われたが、凶器は見つからず、グレディアも否認している。

ベイリはソラリアの国家安全保障の責任者グルアーとの会談の際、グルアーからソラリアに存在する秘密組織の事を聞かされる。
そしてその直後、グルアーが飲み物に混入された毒物による殺人未遂事件が起こる。

ベイリは慣れない惑星の上で、執拗な捜査を続けるが…

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地球人のベイリ刑事とロボットのオリヴォーの凸凹コンビ(と言うと語弊があるかな?)が活躍する「鋼鉄都市」の続編。


今回ベイリは嫌々ながら地球を離れる事に。
地球人は80億人もの人口を閉鎖されたシティに閉じ込め一切外に出る事無く過ごしているため、閉所恐怖症ならぬ開所恐怖症に陥っている。
ベイリも当然その範疇に入っているため、空を見るたびに、外を歩くたびに、気絶しそうになり、また、気絶してしまう。

そんな状態で向かう惑星ソラリアは地球とは真逆で、広大な大地の上にたった2万人しか住んでいない。
もともと富裕層が避暑地として開発し始めた惑星だったため、人とのふれあいよりも一人のんびり過ごす事が目的だった。
そのため、開発が進むにつれて人口の上限を2万人に定め、繁殖も完全に制御し、幼少期の頃から人との接触が禁忌である事を徹底的に教え込まれる。
人との会話は非常にリアルな立体映像のみで行われ、触れ合う事は恥ずべき事と同義。
唯一認められるのは遺伝子プールを満たすために選ばれた相手同士の結婚だけ。
生活はあらゆる場面でロボットがサポートするため、ロボット工学は宇宙国家連合の中でもトップクラス。
人との直接的接触がほぼ皆無であるため、人が人を殺す事が可能なのは夫婦のみ。

この単純な図式に違和感を覚えたベイリが、ほぼ単独で捜査に挑んで行きます。
ほぼ単独と言うのは、今回オリヴォーはベイリの保護者役程度に収まっているため。

ベイリの開所恐怖症と惑星ソラリアの特異性を両輪に、ロボット3原則の盲点を突いたミステリーの展開は、さすがにアシモフ先生、巧いですね。
ちょっと展開が単純に思えるところもありますが、読ませます。

そして最後には地球の未来に関わる重大な問題点にまでたどり着き、続編「夜明けのロボット」へと続いて行くわけです。

で、ちょっと間をおいて、次は「夜明けのロボット」を読む事にしよう!













[あらすじの続き]
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ベイリは被害者のデルマーと被疑者グレディアの関係者への聴取を続けるうちに、ロボット3原則の盲点に気づく。
第1条「ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。」
では、ロボットが、自身が行う行為が人間に危害を加えるものと自覚していない場合はどうなのか?
危険を危険と認識できなければどうなのか?
そしてついに真相にたどり着く。

直接的な殺人犯はグレディア。
ただし彼女は逆上し、自分の行為を理解しないままの行動だった。
グレディアはソラリア人の中では特別にふれあいに寛容であり、それを求めてさえいた。
しかし、典型的なソラリア人の夫、デルマー博士はそれを一切許さなかった。
そしてある時、激しい口論の末、逆上したグレディアが手渡された凶器を夫の頭に振るってしまった。
誰が凶器を手渡したのか?
それはその場にいたロボットだった。
そのロボットはデルマー博士と共同研究していたロボット工学の権威、リービック博士の送り込んだものだった。
リービック博士は、ソラリアを宇宙国家の頂点に導くため、陽電子頭脳制御の航宙艦を作ろうとしていた。
彼はロボット3原則の盲点を知り尽くしていたため、第1条に背く行為をロボットに行わせる事が可能なのを知っていた。
しかし、デルマー博士はそんな行為を認めようとはしなかった。
そのため、リービックはデルマー殺害を決意した。
デルマー博士とグレディアの夫婦仲が悪い事を知っていたリービックは、夫婦が激しい喧嘩をした際に、自分の腕を外してグレディアに渡すようロボット命令していた。
その行為がどんな事態を引き起こすか想像すらしていないロボットは命令に素直に従ったのだった。
そして目の前で起こった惨劇にショックを受けショートしたのだった。

しかし、ベイリはグレディアを追及はしなかった。
グレディアはソラリアを離れ、オーロラへと旅立っていった。

そしてベイリは1つの結論に達した。
地球はソラリアの裏返しである。
狭い地球の中に閉じこもっていては地球人はいずれ滅ぶ。
地球人の新陳代謝は宇宙への進出に十分耐えられるはずだ。
自分の次の世代、その次の世代こそは、ドームの殻をやぶってはだかの太陽の元に足を踏み出すべきだと…
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