北国の小さな町の小さな牧場に

艶やかな「たてがみ」と

一番星のようにキラキラ輝く大きな瞳の

とても美しい馬がいました。

馬体も立派で 現役時代は競走馬として優秀な成績を上げ

引退後は繁殖牝馬としてこの牧場にやってきました。

お腹には子供がいて、牧場の人達は それはそれは産まれるのを心待ちにしていました。

「産まれる子は きっと立派な競走馬になる」

誰もがそう信じていました。


ある夜 この馬のお産が始まりそうだということで スタッフみんな厩舎にかけつけました。

ところが 産気づいているはずが なんだか様子がおかしいのです。

ベテランスタッフも
「産気づいているのか?腹痛か?見分けがつかない…。」とオロオロ。

すぐに獣医さんが呼ばれましたが、
やはりどちらかわからず。

痛み止めの注射を打ったら少し落ち着いたようでした。

しかし約一時間後…

また苦しみ出し あまりの痛がりように
「馬運車(ばうんしゃ)で大きな獣医さんに運ぼう!!!」ということになりました。

でも 極寒の町の馬運車はバッテリーが上がってしまい なかなか動かせません。

男性スタッフ一同が馬運車の復旧に向かっていき

女性スタッフは1人で馬のそばについていました。

「負けるな!!負けるな!!」
「さっきまでご飯ちょうだいっておねだりしたでしょ!!」

ついには馬は倒れて苦しみ うめき声を上げながら寝藁に埋もれていきました。

「窒息するでしょ!起きて!」

女性スタッフは必死で寝藁をかき分け 馬の顔や首を叩いたりさすったりしましたが、、、

だんだんに体が冷たくなり 女性スタッフに見守られながら…

お空に昇りました。


あのキラキラ輝く大きな瞳のようなお星さまになったことでしょう。

お腹の子も お母さんと一緒にお星さまに…。


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……先日 このようなことがありました。
解剖の結果 死因は「子宮大動脈破裂」。


2月から4月頃まで どこの生産牧場もお産シーズンを迎えています。

私とジャガイモ🥔くんは 初のお産で母子共に亡くなってしまった、という経験でした。


あまりにも衝撃すぎる出来事で 落ち込んでしまったのですが

親方が
「悲しむ気持ちより 勉強させてくれてありがとう!という気持ちを持ちなさい。」と言ってました。


毎年 多くの仔馬が産まれますが、
競走馬としてデビューできるのは その半分ほどなのだそうです。


競馬というと 単なるギャンブルと思われるかもしれませんが、

私は 今回の出来事で

競馬は 無事にデビュー出来た馬達を讃えるもの
…と思っています。


今年 ウチの牧場はあと14頭のお産を控えています。


「あの時 もっと注意してみてやれば良かった」と後悔しないように…私もジャガイモ🥔くんも頑張ります。


動物も人間も
「産まれて当然」と思っちゃいけないよ。

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https://youtu.be/1jseFSy_2R8

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お時間あれば見て下さい♪


競走馬は 生産牧場 育成所 獣医 装蹄師(馬のヒヅメの手入れをする) 厩務員…ホントに多くのスタッフが手をかけて育てられます。


私は 馬には全然興味もなく、

ただジャガイモ🥔くんが北海道に行って馬の仕事をしたい、というので着いてきたわけですが。



馬と触れ合っているうちに この仕事が大好きになりました。



…いつまでこの仕事が出来るかわかりませんけど

たぶん身体が動くうちは続けるんじゃないかな。



…悲しいお話を書いてしまいましたが

あのお馬さんをきっと一生忘れないし、想い出のつもりで書きました。


読んでくれてありがとうございます。