もしも、あなたが「最高責任者」ならばどうするか?Vol.1(大前研一監修/シリーズ総集編) (.../good.book
¥1,944
Amazon.co.jp
▲レビュープラスさんより献本いただきました。
あなたはこれまで生きてきて、「もしも、あなたが最高責任者ならばどうするか?」という問いを投げかけられたことがあるだろうか?
おれは、ない。
息子には「犬と猫どっちが好き?」と50回くらい訊かれたことはある。おそらく多くの人もこうした質問をされたことはないだろうし、したこともないだろう。
なぜなら、いわゆる「常識人」であれば、そんなあり得ない状況について考えることはしないからだ。そして、「そんな夢物語について考えるより他にやらなくてはならないことがあるんだよ」といかにも現実を直視している風に答えるのだろう。
しかし、ビジネス・ブレークスルー大学は真剣にこの問いについて考察を巡らし、議論し、正解のない「現在進行形の課題」に取り組むのだ。
本書はそのケーススタディを収録したものだ。収録ケースは以下の通り。
(※それぞれのケースの抱える課題と大前氏によるその戦略案が紹介されている。「なるほど」と思えるものもあれば、「そんな課題があったのか」と思わされるものもあるので、目を通すだけでも損はないだろう)
① あなたが「Coca-Cola Company CEO」ならばどうするか?
② あなたが「ローソンの社長」ならばどうするか?
③ あなたが「NTTの社長」ならばどうするか?
④ あなたが「UBERのCEO」ならばどうするか?
⑤ あなたが「任天堂の社長」ならばどうするか?
⑥ あなたが「東京ガスの社長」ならばどうするか?
⑦ あなたが「沖縄県知事」ならばどうするか?
⑧ あなたが「イオングループ(CEO)」ならばどうするか?
どうしようもないというのが正直な感想だが、そんな体たらくではビジネス・ブレークスルー大学の学生はつとまらない。
過去完了系の経営課題を第三者が分析したケースを何時間も議論して教訓を学ぶだけでは「ブレークスルー」は起こらないし、「ブレークスルー」を起こすような人材は育成されない。
「ブレークスルー」とは過去になかったことが起こることである。「過去の分厚い壁」を壊すことである。
壁を壊すためには色々な方法があるが、やはり道具を使うことが望ましい。拳よりも鑿、鑿よりハンマー、できれば電動ハンマーが望ましい。火薬も悪くない。
ここで使われるハンマーは、「RTOCS (Real Time Online Case Study)」という教育メソッドだ。
その内容は、
『実際の企業や団体を取り上げ、「誰も正解を知らない現在進行形の経営課題」に対し、「実践」と「議論」による徹底的な論理的考察を経ることで、企業が直面している「本質的課題」を明らかにし、「経営者の視点で意思決定」を行う』(p.8 Introduction より)
とある。
かなり「重量」のあるハンマーだが、このハンマーを日々振り下ろしていれば自ずと「腕」は太くなっていくだろう。
そう、このケーススタディは「経営の筋トレ」である。「RTOCS」というハンマーの「素振り」を重ねることで、あなたの「経営筋」は隆々と逞しくなるはずだ。
「いや、私は経営者でもなんでもないんで関係ないです」などと言わないで欲しい。「そんな大それたことなんて考えたことありません。ささやかな幸せが欲しいだけなんです」などと言い訳をしないで欲しい。
なぜならあなたの人生の「最高責任者」はあなたなのだから。
本書は、経営のみならず実はこうした視点を読むものに与えるものでもある。人生とは「命の経営」であるとするなら、「RTOCS」のメソッドは決して一部の人たちだけが学ぶべきものではないことがわかるはずだ。
同時にこれまで「お偉方」への批判、不平不満ばかりに時間を費やすばかりの我が身を振り返るいい機会ともなるだろう。
もしかすると、あなたの「反骨精神」は単なる甘えに過ぎなかったということが明るみに出るかもしれない。
そして、この「RTOCS」は経営に関する事柄だけでなく、自己認識にも有効に作用するはずだ。
「RTOCS」は、「誰も正解を知らない(あなたの)人生の課題」に対し、「現状の把握」と「未来の展望」を徹底的に考察し、あなたが直面している「本質的課題」を明らかにし、「自己の魂の経営者の視点で意思決定」を行うのだとわれわれに迫る。
「それ以外にない」と言う。
ヒョロヒョロまたはブヨブヨの身体でコタツにもぐり込みミカンを食べながら、全身を鍛え上げたボクサーの勝ち負けをあれこれ論評してもあなたの腹筋は一向に割れることはない。「常識」という脂肪の中で眠り続けている。
☞レビュープラス