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    『三橋貴明の「新」日本経済新聞』

        2014/12/16




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From 藤井聡@京都大学大学院教授&内閣官房参与



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●『月刊三橋』12月号のテーマは「2015年の世界と日本はどうなる?」
世界はデフレ破局へと向かうのか? なぜ、マスコミの経済予測は信じてはいけないのか?

もし、あなたが、世界を正確に知り、嘘情報の被害に遭いたくないなら、、、

http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php


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この度の総選挙は、現与党の圧勝、という結果となりました。

この選挙結果は、安倍政権のこれまでの取り組みのおおよその方向が、国民によって支持されたことを意味していますが、とりわけ解散のきっかけとなった「2015年10月の消費税10%への引き上げの延期」の総理判断については、国民が強く支持したことを意味していると考えられます。

ただし、総理は増税延期の判断の際、「さらなる先延ばしは考えていない」と明言しておいででしたから、この選挙結果は、

「(よほどの事が無い限り)2017年4月に消費税を10%に『確実』に引き上げる」

ということを確定させたことを意味しています。

この度の8%増税の結果からも明らかな通り、デフレが完全に脱却しないままに増税すれば凄まじい「景気悪化効果」がもたらされます。したがって、万一2017年時点でデフレが完全に脱却しないままに増税されてしまうような事があれば、日本は取り返しの付かないほどの

「恐慌」

とも言いうる最悪の状態にたたき落とされることになることは必定です。そうなれば、財政再建どころの話ではなくなってしまうでしょう。

従いまして、総理が「確実に10%にする」と宣言されたということは、

「17年4月の時点までに、確実にデフレを終わらせる」

と宣言されたに等しい、と考えられるという次第です。

この点について例えば、本田内閣官房参与や小泉進次郎氏が

「総理は、退路を断たれた」

と表現しておられますが、まさに、そういうご判断だと言うことができるでしょう。

では文字通り「退路」を断った総理が背水の陣としてこれから「いの一番」に、その第一歩として成さねばならぬものが何かと言えばそれは、

「10兆円規模の大型補正予算」

の断行を措いて他にありません。

なぜなら、これまでも何度か指摘して参りましたが、第一の矢は既に凄まじい勢いで打ち放たれており、第三の矢は仮にその効果があったとしても、それは中長期的にしか発揮されるものにしか過ぎないからです。

(なお、さらには、第三の矢の打ち方を誤れば、デフレを促進してしまうものともなります。例えばクルーグマン教授は、「人々がかつて語ってたタイプの構造改革は──労働市場をもっと柔軟にして賃金カットをやりやすくしましょうとかって改革は──むしろ不況を悪化させる.」と指摘しておられます)


したがって、消去法で考えても、アベノミクスを継続するとするなら、現下の景気後退に大至急対抗するためには、「第二の矢」以外には、考えられないのです。

....というような主張をすると、「財政政策なんて、一昔前の古い経済対策だ」、と揶揄する声がしばしば上がるわけですが、そういう指摘をする者こそ、一昔前の古い論理に硬直的に頭を支配されているのだ、という事はこれまでに何度も指摘してきた通りです。
http://blogos.com/article/92975/

たとえば、ノーベル経済学を受賞したスティグリッツ教授も、「アベノミクスの第一の矢は成功したが、問題はこれからの第二の矢だ」と指摘しておられます。
http://shuchi.php.co.jp/article/2018

上述のクルーグマン教授のみならず、著名経済学者のルービニ教授も、緊縮財政こそが不況の根本原因であると指摘しています。
http://www.project-syndicate.org/commentary/world-government-reliance-monetary-policy-by-nouriel-roubini-2014-12

同様に、著名エコノミストのカレツキー氏も、財政政策の重要性は証明されたと主張しています。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0IO09C20141104?sp=true

そして、経済学者のジェフリー・サックスは、長期計画による賢明な公共投資こそが、民間投資を増やすと主張しています。つまり、効果的に第三の矢を推進するためにも、第二の矢の財政政策を活用していくことが得策なのだと示唆しておられるわけです。
http://www.project-syndicate.org/commentary/promote-sustainable-development-economics-by-jeffrey-d-sachs-2014-11

しかもしかも、かつて緊縮財政が主流だったIMFも、積極的な『公共投資』の必要性を強く主張しています。
http://www.sankei.com/economy/…/141003/ecn1410030010-n1.html

同様に、OECDまでもが、積極財政論を主張しはじめています。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0IO09C20141104?sp=true

。。。。

つまり、リーマンショック以後、それまで構造改革一辺倒だった海外の著名エコノミスト達や主要経済機関が、こぞって「財政政策こそが景気対策の要なのだ」と主張し始めているのであり、財政政策をめぐる空気は、完全に変わってしまっているのが、実態なのです。

では、どれだけの補正予算が必要なのかと言えば──そもそも、昨年度から本年度にかけては、

・消費税増税による、マイナス8兆円
・補正予算を10兆円強から5兆円強に縮小したことによる、マイナス5兆円

という、二つの景気冷え込み効果が明確に存在しています。

しばしばこれは、財政の崖、とも表現されてきましたが、その崖が合計で「13兆円」規模で存在していることになります。

したがって、この崖を登り詰め、さらに、それ以上の成長を果たし、来たるべく増税ショックにも負けない力強い成長を手に入れるには、やはり、少なくとも10兆円規模の補正予算を組んでいくことが必要となります。

つまり、二年前に安倍総理が果敢に断行された、あの10兆円の第二の矢と同規模の第二の矢が、8%への消費増税というネガティブ・インパクトを被った日本には極めて重要なのであり、これこそが総理がおっしゃった「この道しかない」、のまさにその「道」の第一歩となるべきものなのです。

無論、それだけの規模の財政政策を打つためには、投資や消費、そして、所得移転など、様々な項目を総合的に組み合わせていくことが不可欠です。

なお、少し前まで公共事業については「建設業は人手不足問題がある」などと盛んに言われ(未だに言われ続けていますが)、既に、その問題は大いに解消し、建設業の人手の受給状況は、民主党政権下の時よりも「人余り」といってよい状況にすら立ち至っている事を、私たちは絶対に忘れてはいけません。
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/591031560997791?pnref=story

そしてこの、第一歩を踏み出した上で、何よりも必要なのは、国土強靱化や地方創生、そして国土のグランドデザインといった、今、安倍内閣が進めようとしている様々な政治目標を達成するための大規模な長期的な公共投資プランの策定です。

10年で200兆円が難しいとしても、例えば5年で50兆円から70兆円、80兆円規模の「長期的な公共投資プラン」が策定されれば、先に紹介したサックス教授の指摘通りに民間投資が大いに促されると同時に、黒田バズーカと相まって人々の期待は一気に上向き、アベノミクス第二章が華々しく展開されていくであろうことは間違いありません。
http://www.project-syndicate.org/commentary/promote-sustainable-development-economics-by-jeffrey-d-sachs-2014-11

一方で、そうした果敢な抜本的政治判断が不在のままでは、10%の増税ショックは、日本経済をどん底にまで沈めてしまうことにもなりかねません──.

いずれにしても──デフレ脱却に向けて退路を断たれた総理が、この「道しか無い」とおっしゃる道───既にその道は、いくつもの分岐点に晒されているのです。

新しく誕生する第三次安倍内閣が、デフレが確実に脱却できる「正しい道」を正々堂々と歩まんためにも、こうした客観的な情勢を冷静に見据えた、的確な決断が下されますことを、心の底から強く祈念いたしたいと思います。

PS
なぜ、民間エコノミストの経済予測は信用できないのか?
経済学の「嘘」を見抜いて世界と日本の動きを正確に知りたいなら、、、、
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php



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