【二度寝とUFO】











どうもこの時期は二度寝の誘惑から逃れがたい。

一度起きてトイレに行き、ふだんならそのまま椅子に座り

目が覚めるのを待つのだが、部屋の寒さに身を震わせ、

布団に残るぬくもりを思い出せばもうだめだ。

二度寝魂がメラメラ燃え上がる。

どうせ10分か15分と思いつつ、サッと布団に身体を差し込めば、

気がつけば1時間とか1時間半だ。

でも不思議とこの時期、後悔より、満足感の方が多い。






高校の休み時間、二度寝を熱く語っていた奴もいた。

校舎三階の窓の向こうに、冬の白っぽさが広がる気持ちのいい

午前だった。

「めざましをふたつかけ、一度起き、敢えて再び寝る。

一度目は起きても、起きる不快感があるが、

もう一度寝る事で、寝たゼ-!っと寝た快感を味わう事ができるのだ」

窓をバックに、寝たゼ-!の所で両手ガッツポーズをしていたそいつを

よく憶えている。

でもオレもその通りの事をしていた。

こいつは激しく語っているけど、みんな似たようなもんなのだと

その時知った。






二度寝は短く眠りが割合浅いせいか、そこでみる夢は妙にリアルで、

結構よく憶えている事が多い。

つい先日の朝の事だった。

ただ、それが夢かどうかは今もわからない。

起きるとまだ暗く、当然二度寝した、すると布団がもぞもぞする。

何だろうと、寝ぼけた頭で顔をうずめ、布団の中の暗闇をのぞくと、

そこに宇宙があった。

星がちりばめられ、驚くより先に「何て綺麗なんだ!?」と思った瞬間、

その宇宙をUFOが飛ぶ。

するといきなり、宇宙人がにゅっと這い出てきたから驚いた。

「げげ、何だお前!」

「ケロケロ、また会ったな」

よく見るとオレが幼い頃から会っているカラスの顔をした宇宙人だ。

「てめえ性懲りもなく、また来やがったな!」

「お前らが二度寝するからわるいのさ」

「なに-!」

そいつの話だと、地球人が二度寝する時、宇宙とつながるワームホールが

布団の中にできると言う。

再びぬくもりを味わう地球人の至福の瞬間は半端じゃない。

そのため、心の中に緩やかなビックバンが起き、

それが無限大に広がると言うのだ。

「なるほど、だから布団の中に宇宙が生まれたのか!」

「フォフォフォそうなのだ、我々はここから地球に侵入する事にしたゾヨ」

「ぬぬ、恐るべしカラス野郎!」

オレは思わずカラスのクチバシに噛みついた。

「やめろ!このクチバシでまずお前の夢を操るのだ」

そいつがモゴモゴ言うには、布団から抜け出る前に

クチバシを地球人の耳に突っ込み、

怪電波をだして夢を操り、彼らにとって都合のいい夢を見せてから、

地球に侵入する作戦らしい。

「そうはさせるか!」

オレはただ闇雲に噛みついた。

すると、そうしているうちにクチバシは柔らかくなり、よく見ると

バナナのようになり、終いには皮をむいてパクッと食べた。

「おのれ!よくもやったな」

そいつはクチバシのあった場所を押さえ「憶えてろ!」と捨てゼリフを残し、

布団の奥に潜り返した。

オレは「待て!」と顔をうずめ追いかけるが、

そいつの姿はもうなくキョロキョロしていると、

UFOが星空の宇宙に飛び去って行った。

そして映画館の照明が落とされるが如く、布団の中はただの暗闇に

戻った。






目を覚ますと外は明るくなってきていた。

さていい加減起きなきゃな。

最初に起きた時間に起きていればとも思うが、やはり二度寝は

気持ちいい。

暖かくなるまで、しばらく二度寝は続くだろう。

あいつが狙っていても、やっぱりやめられそうにない。