【ツルッと10代】





雪道でダチをバイクのケツに乗せて調子こいたら、いきなり天地が

ひっくり返った。

ガシャーン「痛て!」としかめた暗がりにバイクが

ガリガリ滑っていった。

裏道で幸い車は来てない、ゆっくり立ち上がるとオレは大笑いで

バイクを起こした。

渋い顔の友達に向かって「大丈夫、大丈夫」と意味もなく連呼して、

そのままケツに乗せて再びバイクを走らせたが、その後も結構危なかった。

10代は感覚が麻痺している。

そしてそれに輪をかけて無知だ。

それなのに自分は最速だなんて思ったりしている。

後で考えれば、命がいくつあっても足らないような事が何度もある。

この日も雪が降った夜、バイクで遊びに出ている。

朝は柔らかかった雪も、日が陰ると車輪の跡がガリガリ固まり

くぼみが凍る。

そこで油断すれば、アッどころか零コンマでツルッといく。

その夜、数度痛い目にあい、雪の日はバイクで出るもんじゃない事に

ようやく気がついた。




滑るとは違うが、ギャグがよくすべる。

それは学生の頃からうすうす気がついている。

だがこれは、10代とは逆に年齢が上がると麻痺する。

社会経験も増え、ギャグセンまあまあ来たろうと思いこみ

調子こいて言ったりするが、それがことごとくすべる。

トホホだゼ。

それどころか、こんな事だってある。

楽屋で前のバンドの演奏中にギャグをかますと、

直後、突然ステージのドアが開いていきなり爆音状態になり、

会話はどっかにすっ飛んで行って、

口を開けたまま、飛んでくるお菓子をパクっと

待っているかのようになり、楽屋の隅をにらんで途方にくれる。

まわりはそれを見てクスっと笑うのだが、ギャグ以前の問題で、

結局オレなんてそれくらいのもんだ。

その点ビリーのギャグはすごかった。

インターナショナルで、英語も通じないのに外人が集まって来て

ドッカ~ン、ドッカ~ンと爆笑が起き、ジョーダンセンセイと

あがめる奴までいた。

そのビリーが、思いっきり滑ったことがある。

大雪の札幌のツアーの時、到着のライブハウスの前で、

ポケットに手を入れたまま、絵に描いたように滑った。

固くなった雪の上で、スッテンっと二本の足が宙に浮いて、

ドサリンコンと腰から落っこちた。

みんな大笑いだ。

ビリーは苦虫をつぶしていたが、おかげでその夜のライブは、

楽しく激しく盛り上がった。





誰も人前ですべりたくはないが、

もうすでにすべりまくっている自分としては、

すべるのもわるくないと思っている。

すべる奴を見ても愛着がわくよ。

ただ今の時期、雪道はやっぱり気をつけてくれ。