今朝仕事に行くとき犬がいた
後姿がかつて飼っていた犬に見えて「ハッ」としたが、錯覚で全然違う犬だった。

そいつを飼いはじめたのは13年前。
当時結婚したばかりの私は、かみさんの親戚に子犬揚げると言われてもらいに行った。
2~3頭の雌犬がいっぺんに産んだらしく部屋中子犬だらけ。
その中で足のしっかりした子犬を選んだ。
色は白地に薄い茶色のホルスタイン型ぶち。
帰りに急ブレーキでシートから落ちてキャンキャン鳴いていた。

名前はポチにした。
安易といえば安易だが、他につけようのない「ポチ」らしい犬だった。
でも割と賢く、あまり悪さのしない犬だった。
歯の生え初めにかみつきまわるのは閉口したが…
ゴムの感触が気に入ったらしく、僕の帽子をいくつかぼろぼろにしてくれた。
犬のしつけは現行犯逮捕が鉄則。でもなかなかしっぽ出さないうえにまたやったので、
証拠物件だけで追及することにした。

ボロボロにしてくれた帽子を鼻に突き付け、「このバカ犬が!バカ犬が!」と尻を散々叩いた。
私の犬とオウムのしつけ方針は、かわいがるときはおもいきり、悪さしたらぼこぼこにである。
人の親となった今もそれを流用してます。
さてポチこはそれから噛まなくなった。
また下の処理も完璧だった。
一度だけ、嵐の晩が明けた朝に情けない顔をして二階に上がっていった。
隅っこに二本・・・雷が怖くて外に出れなかったのだろう。
「お化けが怖い小学生じゃないんだから・・・」とぼやきながら掃除した。

番犬としてはよく吠えたが、近所の人や犬にはフレンドリーだった。
ある日帰ると隣の犬が家に入り、ポチこのご飯を食べていた。
当然追い払った。
別の日ポチこが外から帰ってきた。後からこの前の盗み食い犬が付いてきてまたポチこのご飯を食べた。ポチこがこっちを見たので「そうかおごってやったのか」と声をかけた。

それから僕は今いるアドナラ島にと単身赴任となった。
月にいっぺんはクパンへと帰ることができた。
家に帰るとポチこが大喜びで迎えてくれた。
門まで飛び出し、二本足で立ち上がるので前足をつかんで撫でてやった。

ポチこのお気に入りの場所は、玄関のそばの飾り棚の横。
専用の足ふきマットの上によく寝ていた。
そばで僕が胡坐かいて本を読みだすと、当然といった態度で胡坐の上に丸くなって入ってくる。暑いので横にどけるが、すねた表情でこっちを見ている。
根負けしてひざをたたくと大喜びで入ってくる。

そんなポチこのポジションが微妙になったのは長女が生まれてからであった。