母の覚悟
もう10年近く前のエピソードなんですが、
最近、よく、頭をよぎります。
30歳代後半の女性の患者さん。
肺癌の末期でしたが、
緩和ケア病棟(1)ができる1年程前でしたので
一般病棟(呼吸器内科)に入院されていました。
若くてとてもそうは見えなかったのですが、
早くに結婚・出産されたそうで、
中学生の娘が2人、よくお見舞いに来ていました。
若いので病状の進行も早く、
大部屋でしたので、
個室で過ごせるように環境調整を行いたかったのですが、
他の患者さんとのベッド調整が難しいのが現実で。
2人部屋を出来るだけ個室として使えるよう配慮していました。
症状がいよいよ辛くなってきて、
彼女は部分的なセデーション(2)を行いたいと希望しました。
日中に備えて、
家族がいない夜は深く眠って過ごしたい、と。
日中は辛くても、しっかり起きて家族と過ごしたい。
辛くてもできるだけ笑顔で娘達と一緒に居たい。
「これでも、お母さんだからね」
……当時、私はまだ21歳。
患者さんより、娘さんと歳が近く、
気持ち的にも娘さんの方に寄り添い易かったのを覚えています。
患者さんの歳に近付いて、娘を授かった今。
「これでも、お母さんだからね」
と、いう言葉が、
当時よりもずっと深く、心に入ってきます。
(1)緩和ケア病棟:
終末期医療。悪性腫瘍等で、根治的な治療が困難な場合、
症状を和らげる治療を中心としたケアに移ります。
私がいた緩和ケア病棟は、
余命が2~3ヶ月以内と医師に診断されている患者さんが対象でした。
(2)セデーション(鎮静):
苦痛が強い症状…具体的には呼吸困難感や倦怠感等が
どんな方法を使っても緩和出来ない場合、
薬を使って意識を落とし、眠った状態にする方法。
夜間等決まった時間だけ眠りについてもらう一時的セデーションと、
眠った状態を持続する持続的セデーション(多くは最後の数日)があります。
★参考;終末医療におけるセデーション
学士申請のレポートが掲載されました。
いつもありがとうございます