フロイディアンが読むアガサ・クリスティ(2) | プログレッシブBBSの思い出_ピンク・フロイドmemorandum

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2014-04-23 03:34:29 執筆




「フロイディアンが読むアガサ・クリスティ(1)の続きです。


アガサ・クリスティは
、短篇を7割ぐらい読み終えたところで、
初期の長編を味わうことにしました。
トミー&タペンス、ミス・マープル、ポアロ
の初登場作品、ノンシリーズの『茶色の服を着た男』『チムニーズ館の秘密』はすでに読んでいましたが、初期の作品にはポアロ・シリーズが多いので、とりあえずそこからです。


まずは、数年前にPCゲームで楽しんだ作品です。邪悪の家』(1932年の作品。創元推理文庫では『エンドハウスの怪事件』)。
これを読みはじめたとき、主要登場人物の一人である二十代の女性、ニック・バックレイの名前に、ちょっと困惑してしまいました。
ニックというのは男性の名前だと思っていたのです。

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ピンク・フロイドのファンの方なら当然のように思い浮かぶでしょう、ニック・メイスンは男性ですし、このブログの過去記事でPVを紹介したミュージシャン、ニック・カーショウ、ニック・ベッグス(カジャグーグー)も男性です。

ちなみに、この小説のヒロインであるニックは愛称で、本名はマグダラといいますが、作中ではほとんどニックと記されています。両親が早くに亡くなったので一人で暮らしていますが、旧い屋敷の雰囲気の暗さを嫌ってよそに泊まっていることが多いのでした。
巻き毛の黒髪にダークブルーの瞳をもつ彼女は、退屈しのぎに友人たちと騒ぐのが好きで、ポアロの探偵談の語り手であるヘイスティングズは、ニックと出会った日に、妖精のような愛らしい令嬢という印象を記しています。

PCゲーム『Peril at End House』ではこんなルックスです。


Image Data: Halca's Screenshot

ちなみに、ニックが男性として登場する作品も、クリスティの短篇にはあります。
といっても、ニッキーというくだけた呼び方で、会話のなかに登場するだけで本人が姿を現わすわけではないのですけどね。

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『ヘラクレスの冒険』最終話
「ケルベロスの捕獲」に出てくる
ニッキー・ロサコフ。ロシアの伯爵夫人ヴェラ・ロサコフの一人息子でアメリカに住んでいます。
職業は建築家か実業家なのでしょうか、母親の話によると、彼は、“橋や銀行、ホテル、銀行、鉄道など、アメリカ人たちがほしがっているものを何でも
作っている、ということです。



次に読んだ長編ポアロは、奇想天外なトリックが賛否両論を巻き起こしたというのが気になって手に取った『アクロイド殺し』(1926年の作品。創元推理文庫では『アクロイド殺害事件』)。
主要登場人物の一人であるロジャーの名前が呼ばれるたびに、フロイドのファンとしては、ほんのちょっとですが、心の隅っこに引っかかるものがありました。


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ストーリーのなかで「ロジャーはああいう人だったから……」みたいに、家族の会話にしょっちゅう出てくるのです。
フルネームはロジャー・アクロイド。タイトルからもおわかりでしょう、誰かに命を絶たれてしまう富豪の老人。彼は、クリスティの作品にはよく出てくる、頑固で偏屈なので家族からは敬遠されているというタイプです。



その次に読んでみたのは、『ポアロのクリスマス』(1939年の作品)。これはクリスティ作品の中では中期に属すると思いますが、短篇の「クリスマス・プディングの冒険」がおもしろかったのと、お正月よりクリスマスのほうが好きなわたしなのでつい手に取ってしまった次第です。

ここには、デヴィッドがいました。


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デヴィッド・リー。彼は、富豪のお屋敷の三男坊で、なくなった母親を深く慕っていたので、彼女に冷たかった父親を嫌って別居する道を選んで、画家の道に進んでいます。
ピアノを弾くシーンも所々にあるので、音楽好きな青年でもあるようです。
デヴィッドのルックスは、母親譲りの見事なブロンドで青い瞳を持っています。
彼の兄弟が実業家や政治家になっていることもあって、家族はデヴィッドのことを夢見がちな繊細な青年というふうに評しているのでした。

そういえば、短篇にはギルモアという名字もあったような……と思い出して、探し出せたのが、二人のギルモアです。


ルイザ・ギルモア。
ロンドン郊外マートンシャに住む85才の老婦人。
「ディオメーデスの馬」(1940年に雑誌掲載)に登場。短篇集『ヘラクレスの冒険』に収録されています。


ギルモア・ウィルソン。
チェスプレーヤーの青年で、『ビッグ4』(1927年)第11章に登場します。名字ではなくファーストネームというのがめずらしいです。

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こんな感じならリチャードも出てくるのでは……と、買い置きしてあった長編を探してみたら、ポアロ・シリーズのなかにありました。『ブラックコーヒー』(1930年の戯曲。1997年に小説版発行)。


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著名な物理学者の息子、リチャード・エイモリー。
彼の場合は、父親がすでにひとかどの財産家になっているからなのでしょうか、これといった職業は持っていないようです。
軍人としてのキャリアを積んでいた青年ですが、父親の命令で退役して実家にもどってきました。父親は自分の研究を手伝わせるつもりでしたが、リチャードには物理化学に対する興味がないので、彼は家を出て独立する機会をうかがっているという状態です。
髪の色はくすんだ褐色、筋肉質のがっしりした体格。



というわけで、うれしいことに、ニック、ロジャー、デヴィッド、リチャードの4人がそろいました。

Image Data: http://www.neptunepinkfloyd.co.uk/



ニックはともかく、ほかの3人はよくある名前ですから、別の作品にも何人か登場するのではないかしら……と思うようになったのは言うまでもありません。
かくして、フロイドを愛聴するわたしとしては、アガサ・クリスティをどの作品から優先して読むか、というプロブレムで、再三の路線変更をしたのです。
マザーグースにゆかりのあるもの→初期作から順に→ニック、ロジャー、デヴィッド、リチャードの登場する作品を優先……というふうに。


クリスティのデータベースサイトで探してみたところ、彼らが主要登場人物(ほとんどは容疑者)として登場するケースが、未読の長編のなかにもたくさんありました。
そんなわけで、短篇も含めて、ひとまず現在わかっている範囲でまとめておくことにします。


  ※……2014.4.23.現在、未読作品

   (P)……ポアロ (M)……ミス・マープル

  複数の日本語版タイトルは
  前者がハヤカワ、後者が創元

参考:
http://www.deliciousdeath.com/indexj.html

http://en.wikipedia.org/wiki/Agatha_Christie_bibliography




アガサ・クリスティの著作に登場する
ニック、ロジャー、デヴィッド、リチャード
メイソン、ギルモア、ライト



♥ニック・バックレイ
  邸宅エンドハウスの跡取りの令嬢、24才ぐらい
  (P)『邪悪の家』/『エンドハウスの怪事件』
   (1932年)

♥ニッキー・ロサコフ
  伯爵夫人ヴェラ・ロサコフの一人息子、米国在住
  (P)「ケルベロスの捕獲」
   (
1940年頃の執筆、雑誌掲載なし)
    収録本:『ヘラクレスの冒険』(1947年)



♦ロジャー・ヘイヴァリング
  第5代ウィンザー男爵次男、狩人荘の主
  (P)「狩人荘の怪事件」/「ハンター荘の謎」
    (1923年に雑誌掲載)
    収録:『ポアロ登場』/『ポワロの事件簿1』

ロジャー・エンディコット
  クリスマスのホームパーティに招かれた親戚の青年
  (P)「クリスマスの冒険」(1923年に雑誌掲載)
    収録:『マン島の黄金』(1997年)

ロジャー・アクロイド
  富豪の地主の老人
  (P)『アクロイド殺し』/『アクロイド殺害事件』
    (1926年)

ロジャー・バッシントン・フレンチ
  富豪の治安判事ヘンリイの弟
  『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』
    /『謎のエヴアンス』(1934年)

♦ロジャー・ジェイムズ・ブライアント
  ロンドンに向かう旅客機の乗客、耳鼻科医師
  (P)『雲をつかむ死』/『大空の死』(1934年)

♦ロジャー・レオニデス
  富豪の老人アリスタイドの長男
  ※『ねじれた家』(1949年)

♦ロジャー・ウェザビイ
  ハンターズ・クロウズの住人
  ※ (P)『マギンティ夫人は死んだ』(1952年)



♠デイヴィッド・マカダム
  イギリス首相
  (P)「潜水艦の設計図」(1923年に雑誌掲載)
    収録:
    『教会で死んだ男』/『ポアロの事件簿2』

♠デイヴィッド・ウェルウィン
  クリスマス晩餐会主催者の孫の友人、物静かな青年
  (P)「クリスマス・プディングの冒険」
    (1923年に雑誌掲載)
    収録:
    『クリスマス・プディングの冒険』(1960年)

デヴィッド・リー
  富豪の息子、画家
  (P)『ポアロのクリスマス』(1938年)

デイビッド・アンカテル
  富豪の邸宅に招かれた客、学校を出たばかりの青年
  ※ (P)『ホロー荘の殺人』(1946年)

♠デイヴィッド・ハンター
  富豪の未亡人ロザリーンの兄
  ※ (P)『満潮に乗って』(1948年)

♠デイヴィッド・アーディングリ
  歴史学の講師
  ※『蒼ざめた馬』(1961年)

♠デイビッド・ベイカー
  実業家令嬢のボーイフレンド、画家
  ※『第三の女』(1966年)



♣リチャード・スコット
  狩猟家、探検家
  「窓ガラスに映る影」/「窓にうつる影」
   (1924年に雑誌掲載)
   収録:『謎のクィン氏』/『クイン氏の事件簿』

♣リチャード・ハーウェル
  花嫁を迎えたばかりの大尉
  「〈鈴と道化服〉亭奇聞」」/「鈴と道化服亭」
   (1925年に雑誌掲載)
   収録:『謎のクィン氏』/『クイン氏の事件簿』

リチャード・エイモリー
  物理学者の息子
  ※ (P)『ブラックコーヒー』
  (戯曲版1930年、
   チャールズ・オズボーン小説版1997年)

♣リチャード(ディック)・シミントン
  事務弁護士
  ※ (M)『動く指』(1943年)

♣リチャード・ベイカー
  秘密諜報部員カーマイケルの学友である考古学者
  ※『バグダッドの秘密』(1951年)

♣リチャード・コールドフィールド
  東洋帰りの実業家
  ※『娘は娘』
  (1952年 メアリ・ウェスマコット名義)

♣リチャード・アバネシー
  遺言を残したアバネシー家の主人
  ※ (P)『葬儀を終えて』(1953年)

♣サー・リチャード・ワイルディング
  旅行家
  ※『愛の重さ』
  (1956年 メアリ・ウェスマコット名義)

♣リチャード・ウォリック
  ウォリック家の当主
  ※『招かれざる客』
   (
戯曲版1958年、
    チャールズ・オズボーン小説版1999年)

♣リチャード・エジャトン
  エジャトン・フォーブズ&ウィルバロー事務所の
  弁護士
  ※ (M)『バートラム・ホテルにて』(1965年)

♣リチャード・ジェームスン
  観光バス乗客の建築家
  ※ (M)『復讐の女神』(1971年)

♣リチャード・アースキン
  退役した軍人(少佐)
  ※ (M)『スリーピング・マーダー』
    (1976年に出版、執筆は1943年頃)


 共演

♠デーヴィッド・キーリー
  郊外のレーデル屋敷の主
♦ロジャー・グレアム
  レーデル屋敷のホームパーティに招かれた青年
  「翼の折れた鳥」/「翼の折れた小鳥」
  (1924年に雑誌掲載)
  収録:『謎のクィン氏』/『クイン氏の事件簿』


♣リチャード・ケアリー
  遺跡調査隊員、中年の美形でイギリス人の建築家
♠ディヴィッド・エモット
  遺跡調査隊員、無口なアメリカ人の青年
   (P)『メソポタミヤの殺人』/『殺人は癖になる』
    (1936年)
    遺跡発掘隊員の宿舎では隣同士の部屋

 名字

♥エイダ・メイソン
  富豪令嬢フロッシー(キャリントン夫人)のメイド
   (P)「プリマス行き急行列車」/「プリマス急行」
    (1923年に雑誌掲載)
  収録:『教会で死んだ男』/『ポアロの事件簿2』

♥ジェーン・メイソン
  富豪令嬢ルース(ケッタリング夫人)のメイド
   (P)『青列車の秘密』/『青列車の謎』
    (1928年)

♠ギルモア・ウィルソン
  米国のチェスプレーヤーの青年
   (P)『ビッグ4』(1927年)第11章

♠ルイザ・ギルモア
  ロンドン郊外マートンシャに住む85才の老婦人
   (P)「ディオメーデスの馬」(1940年に雑誌掲載)
    収録:『ヘラクレスの冒険』

♣アルフレッド・ライト
  北部連合保険会社の支配人、ポアロの友人
   (P)「マースドン荘の悲劇」
      /「マースドン荘園の悲劇」
       (1923年に雑誌掲載)
   収録:『ポアロ登場』/『ポワロの事件簿1』


結果……

洋楽では何人もいるジョンやボブより、デヴィッドやリチャードが多いことがわかって、うれしくなりました。
それにしてもリチャード多いです。中期、後期の作品にもしばしば登場します。

それに、メンバー複数の共演もあったりして、調べた甲斐があったというか、(アガサ・クリスティや本格ミステリのファンにはどうでもいいことでしょうけど)フロイドのファンとしては、多作だったミステリの女王に感謝と尊敬の思いを抱いたのでありました。


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pink floyd - time (06:47)

Uploaded on 2014/03/08 by Studio Wild Sunflower



2014-04-23 03:34:29 執筆