結婚観は、年齢や環境とともに変化していきます。
37歳になった私ですが、「結婚しないの?」「結婚願望はあるの?」とまだ聞いてくれる人がいて、それに対する私の返事も、その時々で変化している気がします。
「興味ないなー」と答えることもあれば、「結婚願望、あるよ!」と答えることも。
最近、芸能人の結婚のニュースを見ながら、結婚について考えることがありました。
■「祝・結婚」ではなく、「祝 脱・独身」
4月28日、女優の菊川怜さんが、司会を務める朝の情報番組「とくダネ!」で結婚を報告しました。
小倉智昭さんはじめ、共演者に祝福されながら、大きなくす玉を割ったところ、出てきた垂れ幕に書かれていたのは、「祝 脱・独身」の文字。
菊川さんは、喜びで涙ぐんでおりました。
しかし、この模様にSNSでは批判的な意見が続出。
「独身じゃなくなって良かったね、は感じ悪い」
「演出がセクハラ」
「独身は脱却すべきダメな状態なのか」
独身者のひがみか?とも思ったのですが、既婚女性の声もあった。
確かに私も少し違和感を覚え、なぜ、「祝 結婚」ではダメだったんだろう?と考えたりしたのですが。
たぶん、それでは伝わらないニュアンスがあったんです。菊川さんは、「脱・独身」したかったんだし、小倉さんは菊川さんの「脱・独身」を祝いたかった。
ずっと番組で結婚をネタにしてきたふたりの人間関係があって、「脱・独身」というシニカルな表現こそ、あの場にはふさわしかったんだろうな、と私は思います。
「独身という生き方だって素晴らしい」ということを否定しているわけではありません。ただ、脱・独身したい人もいる。その両方を認めればいいのではないかと思うのです。
■熟年カップルが結婚する理由
「阿川佐和子 結婚!」というニュースが飛び込んできたのは、5月17日の夜。「ええっ!!!マジですか?」と私は固まりました。
交際相手がいるという報道は、数年前からありました。でも阿川さんは、「パートナーがいれば、〝結婚″という形はとらなくていいよね」という独身者の幸せの形を生きてくれる人だと勝手に思っていたのです。
佐和子さん、なぜ結婚しちゃったの? あぁ、もう独身の希望は、ジェーン・スーさんだけ……と悲嘆にくれる私。
阿川さんほどの人が、理由もなしに、結婚するはずがない。このタイミングには決定的な「何か」があるはずだ!と思いました。そこに、子供をもたない年齢のカップルが、今の日本で事実婚ではなく同じ籍に入る選択をするヒントが隠れている気がしたのです。
翌日、阿川さんが思いを綴った『週間文春』を熟読しました。8ページにわたる手記を読んで、なるほど!と私はおおいに納得。
阿川さんが結婚を決断した理由は、ひとつではありませんでした。
63歳の阿川さんの結婚相手は、69歳のS氏。
出会いは阿川さんが28歳のとき。大学教授だったS氏は、文章を指導してくれるような人生の先輩的存在。一度疎遠になったふたりは、阿川さんが40歳のときに再会します。それから少しずつ交際に発展していきました。
その後、ふたりが20年以上にわたり結婚という決断をしなかったのには、大きな理由がありました。
「パートナーと楽しく過ごせるならば、特に籍を入れなくてもいいかなと思っていたことは事実です。が、これだけの高齢になるまで結婚しなかった理由の一つに、はじめて出会ったとき、相手に家族がいたことは無視できません」(「手記から抜粋」)
28歳で出会ったとき、S氏は既婚者でした。40歳で再会したときは、離婚を前提とした別居状態。どう報道されるのかが気になった。
また、その後、S氏は離婚したとはいえ、「元の奥様に迷惑が掛かるのではないかという不安があった」と阿川さんはいいます。
結婚しなかった理由は分かりました。では、結婚した理由は?
まずは、この数年で報道が過熱したことで、「結婚するの?」と聞かれることが増え、「結婚」を意識し始めたといいます。
また、2年前、阿川さんの父の喪が明けたら、今度はS氏の母の喪に突入。ようやく今年の2月に喪があけたところ、元占い師の脚本家・中園ミホさんに「行動を起こすなら5月しかない!」と言われたとのこと。
生きているお互いの片親も高齢で、いつまた喪中に突入するか分からない。
さらに、阿川さんは「夫婦ではない“パートナー”と生きていくことは現状の日本では勇気のいることだろうと認識していた」と言います。
たとえば、自分の親の介護の用事をS氏に頼んだとき、相手から「この人誰?」と怪しい目で見られたりする。
さらに、自分がもし亡くなったときに「阿川佐和子、内縁の夫に看取られる」という記事が出ると思うと、なんだか親不孝な気がした。
阿川さんのまとめはこうです。
「そういう思いが積み重なった末、トンチンカンな噂も功を奏して、しだいに外堀を埋められて、なし崩し的に今回の決断に至ったという、まことに意志強固とはほど遠い結果となりました」
年を重ねるほど、物事は複雑になっていきます。だから「なし崩し」くらいでないと動けないこともある。つまりそれは、「期が熟した」ということなのかもしれません。あらためて、結婚っていつしてもいいんだよな、と思います。それはそれで、独身者の希望ですね。
■どんな選択にもメリット・デメリットがある
阿川さんが言うように、育児はもちろん、社会的な信頼、介護のしやすさなど、今の日本では、結婚という制度によって保障されるものは大きい。
一方で、自由だったり、お金と時間を自分のために使えるなど、ひとりで生きていくことにも、もちろんよい部分はある。
このメリットとデメリットは表裏一体で、両方を手に入れることはできません。
最近よく思うのは、「面倒だ」などと結婚に悲観的なのは、独身者のほうが多いということ。食わず嫌いな面もある気がします。
ネガティブな未婚者に比べ、結婚経験者の結婚に対する捉え方は、ポジティブなことが多い。壮絶な離婚を経験した人でも、「また結婚したい!」と目をキラキラさせていたりして「そんなに結婚はいいものですか!」と驚くほど。
このまえ、離婚した知人と、結婚の話になりました。
「結婚が幸せとは限らないよね」
と私が言うと、その人は、
「でも、幸せのひとつの形ではあるよね」と言いました。
ぐぬぬ、確かに……。
結婚経験者のこういうフラットな意見を聞くと、なぜか安心する私なのでした。
結婚情報誌『ゼクシィ』のCMが、女性たちの共感を集めています。
「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」
ほんと、これですよ! あれこれ頭で考えても、結局、女性たちが求めているのはきっと、マイナス面を理解してもなお、結婚したくなるほど好きになれる「誰か」なんですよね。
週刊文春 2017年 5/25 号 [雑誌]
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