こんちは。 

めずらしく連投です(ノ´▽`)ノ ⌒

 

いける時にいっとかないとねっ(;´・ω・)

そんな訳で続きです。 

前回の限定記事をすっ飛ばしても、なんとかなるように書いたつもりです。 

 




 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

元カレ×元カノ

 

 

 

シャワーを浴びて寝室に戻ると、シーツの波の隙間から茶色の髪が少しだけはみ出しているのが見えて、思わず口元が緩む。

 

「相変わらずの蓑虫…」

 

ーーこうしていると、身体全部が包まれて安心するんです。

 

付き合っていたころ、そう言っていつも毛布を頭まで被って眠っていた。

暗い部屋の中で、いつも何かから身を守るかのように。

毛布なんて被らなくても、俺が全部包んで守るのに。

そう言うと、すごく嬉しそうに俺に微笑んだ。

それなのに…

 

俺がベッドに腰かけても気付かないくらい深い眠りについている彼女。

久しぶりに触れた彼女の肌は、思い出のそれよりも遥かに滑らかで自分の掌に吸い付くような柔らかさだった。 

一度触れたらもう止めることができなくて、しかも彼女から自分を求めてくれたことが嬉しすぎて。

少し激しく抱いてしまったかと些かの後悔を抱きつつも、

 

(止まらなかった…)

 

昨夜の彼女の媚態を思い出して口元を掌で覆った。 

艶やかに潤んでいた瞳は瞼に隠れ、赤く濡れた唇はピンク色に落ち着き少しだけ開いて規則的な呼吸を刻んでいる。

眠っている時のあどけなさが昨夜の出来事を幻だったのかと錯覚させたが、そっと掻き揚げた柔らかい髪の下、耳の後ろに紅い痕を見つけて、それが現実だったと再認識した。

 

シーツを掛けなおし、その上から頭を撫で続けていると、むずがるように眉間に皺を寄せたあと彼女が目を覚ました。

 

おはよう

 

「……敦賀さん」

 

驚いたように目を瞠る彼女。 

ひとつの予感が頭を過った。

 

「久しぶり…の方が正しい挨拶…かな?」

 

シーツから顔を出し、キョロキョロとあたりを見回す彼女。

寝起きの覚醒しきれていない彼女に畳みかけるように言った。

 

「身体は大丈夫…?」

 

「あの…」

 

「久しぶりだから、無理はさせないように手加減したんだけど」

 

「えっ、あ、ありがとう…ございま…す?」

 

「ぷっ…クククククッ…」

 

状況を飲み込めない彼女の様子に、大袈裟にベッドに突っ伏して笑い出した。 

 

「…本当に何も覚えてないの?」

 

「…すみません」

 

泣きたくなった。

彼女を抱いたことは現実なのに、なにもかもが幻だったのだ。

 

時季外れの誕生日プレゼントなんかじゃない。

社を挙げての一大プロジェクト成功のボーナスでもない。

掴みかけていた宝物が、指先から零れ落ちた。

 

「昨夜、酔ったキョーコを偶然拾ったんだよ。それでお持ち帰り」

 

俺の説明に青褪める彼女。

 

「こ、この度はとんだご迷惑を…あの…では私はこれで失礼しますっ」

 

どうにかここから逃げ出そうと視線を泳がせている。 

どうやら昨夜着ていた服を探しているみたいだ。

彼女の服は、昨夜公園のベンチで寝ていた汚れと、リビングで致した時の汗とかその他イロイロのせいで今は洗濯を終え乾燥中だ。

 

「あのっ私の服は…」

 

「返してほしい?」

 

慌ててこの場から去りたそうにする彼女に腹が立って、つい意地悪な物言いになってしまった。

たっぷりの艶を含んで意味深な気配を滲ませ、彼女の頬を撫でる。

 

視線が絡み合う。

頬に触れていた手を首筋へと滑らせ、まだ彼女が気づいていない昨夜の刻印を撫でた。

おとなしくされるがままの彼女の顔を引き寄せ、そのままくちづけた。

 

お願いだから

昨夜のことを幻にしないでくれ…。

 

抵抗する様子のない薄い唇を舌でなぞり、そのまま侵入する。 

舌と舌か触れ合った瞬間こそピクンと肩を震わせたものの、そのまま俺のシャツを握りしめて応える。

 

 

 

遠くで乾燥機が終わりを告げる音が聞こえた。 

 

ちゅっ…っと

音を立てて離れた唇。

 

「服…乾いちゃった…」

 

俺のその一言でハッとした彼女は、シーツを身体に巻き付けたままランドリールームへといそいで向かった。

俺はその後姿を見送って、深くため息をついた。

 

 

 

 

暫くしてリビングへと現れたキョーコは、昨夜の通りに服を身に着け身なりを整え終えていた。

 

「敦賀さん…」

 

「ん?コーヒー飲む?」

 

「いえ…」

 

俯きがちの視線はフローリングの床を当てもなく彷徨っていて、なんとも気まずそうだった。

 

「帰ります…。昨夜はとんだご迷惑をおかけしてッ…」

 

今にも土下座しそうな勢いで深く頭を下げる彼女。 

後悔がありありと見えるその様子に、ひどく胸が痛んだ。 

 

「そう…送って…」

 

「結構です!!」

 

「…っ!」

 

遮るように申し出は却下された。

 

「あの…え…っと、し、失礼しますっ」

 

最後の言葉を言い終える前に細い身体を翻し、彼女は玄関の向こうへと消えていった。 

 

 

彼女の姿が見えなくなって、静まり返った部屋の中はいつも以上に無機質で、俺は乱暴にソファに身を投げ出した。

足元に違和感を感じて見下ろすと、小さく光る水色のイヤリングか片方転がっていた。 

 

 





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