松澤くれはのよくわかる観劇マナー | クレハズム

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こんにちは、松澤くれはです。

ただいま舞台本番中ですが、今日は観劇マナーについて書いてみようと思います。

劇場の客席に座ると、開演前に「携帯電話はお切りください」「おしゃべりはご遠慮ください」とアナウンスが流れます。小さい公演だと、係員の人が出てきて話す場合も多いです。

観劇にはルールがあります。

それを守らないお客様がいると「マナーが悪い!」と問題になるときもありますよね。

でも舞台を観はじめたばかりの方には「なんで駄目なの?」と思われるルールもあるかもしれません。

観劇マナーは何のためにあるのか。
それは「同じ客席に座るすべてのお客さんが舞台を楽しむ」ためです。

もし皆さんのお友達で「マナーが悪いなとは思うけどなかなか分かってもらえない」って人がいたら、この記事をオススメしてみてください。



それでははじめます。



1.携帯電話はマナーモードではなく「電源」を切る

一番よく言われるやつです。

音が鳴らなければよくない?迷惑じゃないよね?

そう思われる人が多いかもしれません。

ところが、バイブレーションのちょっとした振動も隣のお客さんには聞こえますし、暗い劇場では光の明滅もチカチカと目立ちます。静まりきった客席では、他のお客さんの集中を邪魔してしまう可能性が高いのです。

物語の世界にどっぷり浸っているときに、そんな些細なことで現実世界に戻りたくありませんよね?

また、スマートフォンのタッチパネルは、ポケットのなかでの誤動作が非常に多いです。日常生活でも、いつの間にかお友達に電話をかけていたり、同じLINEスタンプを大量に送っていたなんて経験、珍しくはないはず。

そんなつもりなくても、携帯電話が余計なことをしでかすことはあります。
ですから携帯電話は電源を切っておくのがベストです。


また、上演中に携帯電話をいじっている方も時おり見かけます。

これに関しては本当にやめてください。心からのお願いです。

まず、お近くのお客さんが迷惑します。

世の中には「携帯電話の電源を切れない職業」の方がいらっしゃるのを知っています。

常に連絡がつく状態にしていないと上司に叱られたり、芸能のマネージャーさんでもそれを求められる場合があるのも僕は知っています。別に携帯で遊んでるわけではないことも承知しています。事情はお察しします。

ですが、それでも言います。
舞台の本番中に携帯電話は触らないでください。

あなたがどれほど重要な案件を抱えていて、そのために「いま」連絡を取り合う必要があるとしても、そのために、ほかのお客さんの楽しみを損なう権利はありません。

客席での快適な環境を作るのは誰か。それは、お客さんなのです。
誤解を恐れずに言えば制作さんでもスタッフさんでもありません。
同じ客席に座った者同士の、共有意識にかかっていると信じます。

客席にはいろいろあります。
近い席、遠い席。中央の席、隅っこの席。
見え方は平等じゃなくても、同じ空間で共有する「観劇」という体験は平等のはず。

誰であろうとも。
誰かの楽しみを奪ってはいけません。

最後にもう一度。
携帯電話の電源はオフにしてください。


またこれは余談ですが、携帯電話をいじってるお客さん、実は役者が気づいてたりします。大きい劇場でも意外とお客さんの様子はわかっちゃうものです。そして凹みます。
「ちょっとくらい……」な一瞬を見られて、あなたの応援している俳優のテンションがた落ち、演技に支障が出る、なんてこともありえます。メリットがないのは確かです。



2.上演中のおしゃべりは慎む

面白いものを観たとき、いろいろしゃべりたくなるのは分かります。
仲の良いお友達と一緒にいるのなら、その気持ちはなおさらでしょう。
いますぐに共有したい。分かります。すごく分かります。

が、やめましょう。あとにしましょう。
観劇後に思う存分、カフェや居酒屋で語り尽くしてください。
むしろそのお楽しみのためにとっておいてください。

知らない人のおしゃべりは当然ほかのお客さんが気になりますし、何よりあなたがそうやっておしゃべりしているその瞬間にも、舞台では何かが必ず発信されています。

それを見落とすのはもったいない。

できることなら全部ぜんぶ持ち帰ってください。
僕ら作り手も、おしゃべりする暇もないくらい、たくさんたくさん詰め込んでお届けします。サービスしますから。



3.会場内での飲食の禁止

これどうして駄目なんですかね?
だって映画館では当たり前にポップコーン食べてコーラ飲むじゃないですか。
演劇だけ駄目なのって変じゃないですか?ねえ?なんで駄目なんですか?ねえ?ねえねえ?

と、言いたい方もいらっしゃると思います。

2時間の舞台観劇で水を一口も飲むなというのは、正直、僕ら主催側も申し訳なく思っていたりもします。

それで、映画は良くて演劇が駄目な理由を考えました。

まずこの前提が誤っています。

たとえば明治座さんの舞台公演などは、観劇しながらお弁当を食べてもいいです。ロビーでお弁当が売られてます。

演劇でも飲食OKなところはOKです。
つまり「映画は良くて~」ではなく、飲食を禁止している演劇が多いだけなのです。

じゃあどうして飲食を禁止するのか。
それはきっと「飲食しないほうが観劇に向いている公演」だと、作り手が考えているのではないでしょうか。

あえて映画と比べますが、大迫力のスクリーンに映し出される映像、大音響のスピーカーを通して聞こえる台詞と違って、舞台は目の前にある「生っぽさ」を大切にする傾向があります。どんなに大きい劇場でもその魅力は失われません。

皆さんの前にある役者のカラダからは、いろんな情報があふれ出ています。
そのなかには、ちょっとしたノイズで掻き消えてしまうものもあります。生だからこその繊細な表現は、時として大変か細かったりもするのです。
飲み食いしながらよりも、いまはただじっくり観てほしい。細部まで見届けてほしい。そんな思いが込められているかもしれません。

でもさあ。
ペットボトルの水くらいならいいんじゃないの?

というご意見もあるかと思いますが、そうなると線引きが難しくなります。どこまでが良くて何が駄目かの協議に終わりはありませんし、細かい規則を定められても場所によって違ったり細かすぎて混乱が生じます。
ですから一括りに「飲食禁止」とさせていただいている――あくまで推論ですが、少なくとも僕はそのように考えています。



他にも、いろんなマナーが劇場にはあります。

あんまり厳しくあれこれ言われても「じゃあもう舞台は観ないよ!うるさいな!」となってしまいかねません。
2.5次元舞台の人気に伴って、舞台に足を運ぶ若い人たちが増えているのはすごく嬉しいことだし、敷居が高いだなんて思ってほしくありません。



だから心がけてほしいのは一つだけ。

「隣の人も楽しんでほしいな」

そう思ってから、座席に腰をおろしてみてください。


もし隣の人が、自分の好きな俳優の出番で携帯をいじりはじめたら。
もし隣の人が、自分が熱中しているときにおしゃべりをはじめたら。
もし隣の人が、お芝居を壊すような勢いでごはんを食べはじめたら。

せっかく、わざわざ劇場まで来たのです。
誰かと同じものを観て、それぞれが、いろんな楽しみを味わってほしい。


舞台は一回一回「いま、ここ」にだけ存在する物語です。
あなたもお隣さんもそのまたお隣さんも、みんな等しく目撃者。


客席に座る皆さまにとって、より良い「観劇環境づくり」を。


舞台って楽しいですよね。演劇って最高ですよね。
みんなで気持ちよくそれを分かち合えたなら。
こんなに幸せなことはありません。



さて本日も、劇場でお待ちしています。