「リンゴ 」について
リンゴ(林檎)とは、バラ科リンゴ属の落葉高木で、またはその果実のことである。植物学上ではセイヨウリンゴと呼ぶ。
春に、白または薄紅の花が咲く。人との関わりは古く、紀元前から栽培されていたと見られて、16世紀以降に、欧米での生産が盛んになって、日本においても平安時代には書物に記述がみられる。
現在、世界中で生産される品種は数千以上といわれて、栄養価の高い果実は生食されるほかに、加工してリンゴ酒、ジャム、ジュース、菓子の材料などに利用されている。
西洋美術、特に絵画では、モチーフとして昔からよく扱われる。
「栄養価」について
果実は、ブドウ糖・果糖・蔗糖などの糖類と、リンゴ酸・クエン酸・酒石酸・コハク酸などの有機酸のほかに、ペクチン、フラボノイド(クエルセチン)、ビタミンA・B1・C、プロリンなどのアミノ酸、その他に、芳香物質を含んでいる。
食物繊維やビタミンC、カルシウム、鉄分、カリウムが豊富で、カリウムは高血圧予防によく、食物繊維のペクチンには、整腸作用がある。
有機酸や糖によるのどの渇きを止めて、清涼作用の効果と、タンニンがもたらす収斂作用によって、整腸・下痢止め作用がある。
滋養や保健に役立つとされて、食欲増進、消化促進、下痢の予防などの、滋養保健に果実を生食するのがよく、常食すれば動脈硬化に役立つといわれている。
「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」という諺があるように、リンゴは栄養価が高い果実として食されてきた。
リンゴに含まれるリンゴポリフェノールには、脂肪の蓄積を抑制する効果があるともいわれる。
生産者の間では広く知られているが、5月から6月に摘果した直径3 cm程度の未熟果の一部は、秋まで土の上で腐らず残っている。この成分はポリフェノールの一種が関係していることが研究の結果明らかになった。
「薬用」について
果実は、リンゴ鉄エキス、リンゴ鉄チンキなど、補血剤の製薬原料としても用いられている。
1835年に、リンゴの木の樹皮から、フロリジンが発見されている。同じく木の樹皮から抽出されるキニーネのように、フロリジンは当初、解熱薬や抗炎症薬、抗マラリア薬として使用されていたが、後に、腎臓の近位尿細管からの、ブドウ糖再吸収を阻害する作用を持つことが分かった。
SGLT受容体の阻害作用による効果であるが、フロリジンはSGLT2選択性が低く、医薬品とすることはできなかった。
フロリジンの分子構造を改良して、SGLT2選択性を高めて、副作用を低減した薬剤が糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬として2013年3月にFDAに認可された。
日本では2014年から初のSGLT2阻害薬として、イプラグリフロジンの販売が始まり、2016年までに6種類の薬剤が流通している。なお、リンゴの果実には血糖を下げる効果はない。
『本草綱目』第30巻においては、果実は小児の閃癖(せんへき)に良いとされていた。
薬用にする部位として、果実は林檎、葉は花紅葉(かこうよう)とも称する。
民間療法では、胃酸過多、胃アトニー、慢性胃炎、慢性下痢症に、生リンゴ果実1個分をすりおろして食べたり、ジュースにしたり、そのまま食べる。
子供は年齢に応じて量を加減する。乳幼児の下痢に、すりおろしたリンゴ果実の果汁を飲ませるとよく、下痢が止まったら母乳、ミルクに切り替えるとよいといわれている。
アメリカ北東部のバージニア州周辺では、りんご酢に蜂蜜を加えたものが保健飲料として、昔から飲まれている。あせもには、乾燥させた葉50グラムほどを、浴湯料にして布袋に入れてから、風呂に入れる。