~シリーズ最強の敵はヒロイン⁉︎今、運び屋ステイサムのラストランが始まる!~
つい先日、トランスポーターイグニションが公開され、世間のごく一部(主に俺)が色めき立ったのは記憶に新しい。
主人公がステイサムではない上に坊主じゃないとか、主題歌が何故か前髪が長いEXILEで坊主じゃないとか、イグニションについては色々と思うところがあるが、敢えてステイサム抜きでシリーズを走らせた男気は買いたいじゃないの!
賛否両論だとしても!
しかし、思い返せばステイサムのトランスポーターにも賛否両論の作品があった。
そうシリーズ最終作「トランスポーター3ー~アンリミテッド~」である。
相変わらず道交法無視のaudi。
強敵じゃないけど大物感のあるロバートネッパー。
vsK-1王者セームシュルトという好カード。
プロジェクトAのジャッキーばりにチャリで爆走し、もれなく乱闘で脱ぐステイサム。
だが、ある一点において、ファンの間でも不評の作品であった。
そう、ヒロインである。
俺も最初に観たときは、写真指名したにも関わらず、全然見た目が違うデリヘル嬢が訪ねてきた気持ちになったものだ。
扉を開けた瞬間、「チェンジ!!」と言いたくなるような。
しかし今見ると、これはこれで実に味わい深い作品なのだった。
というわけで、今回は『最強の敵はヒロインだった?』と思いたくなる「トランスポーター3アンリミテッド」を御紹介します。
前作の2にてアメリカにいたステイサム。
何を思ったのかフランスに帰ってきていた。
独り身が応えたのだろうか…
運び屋に復帰したものの、友人のタルコニ警部と釣りを楽しむなど、釣りバカ日誌な独身生活を楽しんでいたのだった。
そんなある日、ステイサムの家に車が突っ込んで来る。
普通であれば取り乱すものだが、ステイサムは違った。
「交通事故だ、家で。」と冷静に通報するステイサムであった。
この無駄に冷静な姿勢は、男なら明日から真似したくなる姿勢だ。
俺の家に突っ込んできたのは誰なんだと車を覗くステイサムだったが、それは、ある組織に自分が紹介した同業の運び屋であった。
というのも、ステイサムは前後して仕事の依頼を受けていたのだ。
しかし依頼相手は、メッチャ上から目線だった。
この態度を気に入らず帰ろうとするステイサムに「10秒以内に引き受けろ」と詰め寄る依頼相手。
これがまずかった。
「5秒以内に手をどけろ。」
と返すステイサムであった。
この姿勢は、職場や学校での無茶振りに対して真似したくなるセリフだ。
かつて俺もボディタッチの多い女の子にグラついてしまった過去があるが、何故このセリフで返せなかったのか・・・と、つい今更後悔してしまった。
この返答に素直に答えれば良かったものの、依頼相手は、デートした相手を終電に乗せないよう企む学生ばりにゴネる。
これもまずかった。
結果、漏れなく全員テキーラを飲ませたようなヘベレケの状態…つまりオツリが来るほどボコボコにするステイサムだった。
まあしかし流石にヘベレケにしたのを気まずいと思ったのか、代わりに知り合いの運び屋を紹介したステイサムだったが、家に突っ込んできたのは、その運び屋だったのだ。
そして目の前の運び屋はヘベレケになっている!
救急車に運び込まれるのを見届けたステイサムだったが、再び車の後部座席を見ると、そこには女が!
開口一番「車から離れるとブレスレットが爆発する」と伝えられるのだった。
先に言えよ!と早朝ギリギリのゴミ出しのように走り出すステイサムだったが救急車は目の前で大爆発!
謎の刺客にふいを突かれたステイサムは気を失う。
そして、目が覚めるとパンツ1丁。
腕には東映版スパイダーマンのようなブレスレット。
そしてロバート・ネッパー(cv.若本規夫)が立っているじゃないの。!
上から目線の犯罪組織に拉致されていたステイサムだった。
それだけでもカロリーの高い寝起きなのにある『赤い代物』をフランスからドイツまで運べとお願いされるのだった。
しかも昨日の女と一緒に。
また丁重に断ろうとするステイサムだったが車から離れると爆発するブレスレットを仕掛けられ有無を言わさず受けざるおえない状況に陥ってしまう。
誰がどう見てもキナ臭い依頼だ。そして愛想が欠片もない女!
こうしてシリーズ史上、最も面倒くさいラストランが幕を開けるのだった。
ましてやロバート・ネッパー(cv若本規夫)でもない。
それなりに陰謀とかも絡んでるのだが、それもどうでも良くなる。
俺としては、今作で1番厄介なのはヒロインだと断言する。
だが、本作のヒロインは開いた口が広がらなくなってしまうほどの最強の敵 という側面を持っているのは否めない。
例えばこうだ。
車を走らせるステイサムが「どういうことか説明してくれ。」
と言っても「知らない」と言って車外を見て仏頂面。
そこからステイサムが何を聞いても「特にありません。」と答えるヒロイン。
「ちょっと前の沢尻エリカか、お前は!?」 と言わんばかりの態度なのだった。
そんな気まずい空気の中、ハンドルを握るステイサム。
やっと口を開いたかと思えば「腹が減った」と。
ステイサムが「何が食いたいんだ」と尋ねると「仔牛肉。人参とビーツ添えのロースト。マデラソースたっぷりで。サラダはグリーンサラダ。モデナ産ビネガーの。飲むのはワイン。」 と答えるヒロイン。
美味しんぼの美食倶楽部か!?
思わず「お前はサイゼリヤの辛味チキンでも食ってろ!」と言いたくなる。
この後も「ブカレストは魚料理が最高なの。ルーマニア産のワインは最悪。」
と、人が必死こいてハンドルを握っているのに飯へのこだわりを語るのだった。
それだけなら、まだいい。
後部座席で勝手に寝る、車の中で化粧を直す、カーチェイス中にドラッグをやる、ガソスタに寄って店の中でスナック菓子を開けて酒を飲み始める、更に放尿する など真面目に仕事している人間からしたら「帰ってくれ」 と言わざるおえない状況が続く。
そして中盤、ステイサムが組織の連中に囲まれてしまうのだが「馬鹿なことは辞めたら?」と言って我関せずで窓を閉めるヒロイン。
「馬鹿はオマエだよ!」と言いたくなるが、ステイサムは並の男じゃありませんからね。
脱いで組織の刺客たちを千切っては投げます。
そんなステイサムをネットリした視線で見ていたかと思うと、「強いのね・・・でも不器用…」 などと手のひらを返すのだった。
見るものに「お前が言うなよ!」と思わせる瞬間である。
しまいには協力して死線を乗り越えたのなら、いざ知らず「さっきのストリップ、グッと来たわ。私とじゃ嫌?」 などと色仕掛けを放つ。
もう、お前は帰って寝ろ!と心がシャウトしてしまいそうになる。
いやねえ、基本俺自身は、どんな女の人にも優しくありたいと思いますよ。
いくら篠原涼子や江角マキコがドラマで態度デカイ役をやっても目くじらは立てませんからね。
だが、いくら何でも、このヒロインに関してはデンゼル・ワシントン並に人権派の俺でも弁護する気が無くなってしまう。
こういっては何だが、全方位レベルのブスとしかいいようがない。
思えば1のヒロイン、スー・チーには微妙ながらも何だかんだ可愛げがあった。
だが今作のヒロインに関しては全編通して「オマエいい加減にしろよ。」と誰もが思うだろう。
上から目線、手のひら返し、やたら高級な飯にコダワリを持つ、空気を読まずに色仕掛けをする・・・
など、これらの行為は女だろうが男だろうが虫酸が走るもんだ。
しかし、ヒロインとして見ずにシリーズ最強の敵として見れば納得できるのではないだろうか。
・・・・出来ないか!まあいいや!!
そんな最強の敵=ヒロインさえ丁重に扱うステイサム。
「何故!?」と観た当時、知ってる友達がとんでもねえビッチに引っかかって何とも言えないような気分 になったもんだ。
今作でステイサムはヒロインから「キスが下手ね。ずーっと一人で生きてきたのね。」 などと言われるのだが、ここに来て俺は思った。
「・・・・まさか、トランスポーターのステイサムは童貞だったのか?」
厳密に言えば四捨五入したら童貞なんじゃないかと。
だとすれば、このヒロインに対する寛容な態度も納得できる。
童貞は、その場の流れに弱いもんだ。
俺も、その場の流れで女性に関わってトラブる童貞を(俺を含め)何人も見てきた。
これはシリーズ通して、ヒロインに関わってトラブるステイサムも同じと言えよう。
それにしても何故冒頭のように、ヒロインに「5秒以内で手をどけろと」言えなかったのか…と思いましたが、今なら言えなかった気持ちが多少は理解出来る。
あまりにもヒドいヒロインを見て「俺が守らなきゃ」みたいな童貞特有の使命感が生まれたのかもしれない。
完全無欠のステイサムがシリーズ最悪のヒロインを通して、初めて需要と供給のニーズが一致したとでも言おうか…
たまに「何でオマエがアイツと付き合うの?」と言いたくなる円高ドル安みたいなカップルがいるが、恐らく構造は同じだ。
一見すると「趣味悪いなあ!」と言えなくない。ラストで景気よく爆死するのはロバートネッパーじゃなくヒロインだったら… と俺も最初は思いましたよ。
今になって思う。
他人からしたらどうかしてると思えても、敢えて火中の栗を拾って学ぶこともあるのだ、と。
ステイサムは、何を取っても全く守る気になれないヒロインを敢えて全力で守り、無茶振りに乗る。
紋切り型の人間関係の多い昨今。
この心意気はどうだ!?
すぐにチェンジ!と言わない姿勢は、これはこれで男なら明日から真似したくなる姿勢だ。
サブタイトルはアンリミテッド。
つまり限界を超えるという意味だ。
そう、今作のヒロインに対するステイサムの男気こそがアンリミテッドだったのだ。
そりゃあ3で限界を超えたステイサムがシリーズに復帰しなかったのも理解出来ない話ではない。
最初観た当初は「何だ、あのヒロインは⁉︎」としか思えなかったが、久しぶりに見返して、やっと真の意味が分かったのだった。
そんな訳で、巷ではとやかく言われがちな最新作イグニションも暖かい目で見れる日が来るかもしれない。いつか‼︎
その証拠に、今作のヒロインみたいな女と付き合えるか?と尋ねられれば、俺は笑顔で即答する。
「無理‼︎」と。
…って、ダメじゃねーか‼︎
ステイサムの器のデカさは分かっても、やっぱテメエはダメだ!と思うのだった…
いつ俺はヒロインを許せる日が来るのだろう…と思わず遠い目になってしまう。
ていうか、何だったんだろう、今までの話…
そんな明日から真似したくなる漢の映画である。