私は北条早雲の子・幻庵です。
(早雲は最初は伊勢新九郎盛時と名乗っています。)
西軍の大将になった足利義視様を見限った盛時は東軍に残り戦っていました。
しかし、盛時は虚しさを感じたままでした。
盛時「一体、いつまで戦えばいいのだ?この戦いに何の意味があるのだ…?」
長引く戦乱で京は焼け野原と化し荒廃しました。
そんな京に出没したのは盗賊でした。
焼け残っている寺社や民の家に押し入り強奪し殺害、火を放つものまでいたのです。
ある夜、盛時は家臣を連れ、市中を見回っていると盗賊が寺院に押し入ろうとする現場に出くわしました。
盛時「おい!何をしておる!」
盗賊は慌てて逃げようとしましたが、盛時が回り込み、逃がしませんでした。
その盗賊はわずか2人でした。
盛時「見たところ、10代半ばではないか…おまえら!何故盗賊などするのだ?」
盗賊「我らは兄弟。家を焼かれ父も母も殺された…おまえら武士にだ!食べるものも全て武士に奪われた!」
盛時「なんと……。」
盛時は返す言葉がありません。
盗賊「さぁ、殺せ!!」
盛時「…わしに付いてこい!」
盛時は盗賊の兄弟を室町御所に連れていったのです。
盛時さんは父の盛定さんが将軍申次を務めていて室町御所に避難していたんだよ。
盛時は盗賊の兄弟に食べ物を与えました。
盛時「こんなことで許してもらおうとは思わぬ…腹が空いているだろ。遠慮せず食べるがよい。」
盗賊「……。」
盗賊の兄弟はむしゃぶりつくように食べ始めました。
盛時は思いました。武士の戦が盗賊を生んでいるのだと…。そして、民から家、食べ物、家族まで奪っていると。
盛時は兄弟に食べ物といくばくかの銭を与えました。
盛時「よいか、盗賊などするな。今は京から離れるのだ。何処へ行けとも言えぬが…とにかく京から出ろ。」
盗賊の兄「…あの、お名前は?」
盛時「わしは伊勢新九郎盛時と申す。」
盗賊の兄「わしは小太郎。」
盗賊の弟「おいらは新次郎だよ。」
この兄弟は後にある人物になるんだ。今は内緒ね。
兄弟は室町御所から出ていきました。盛時は2人を見送りながら自分も京から離れたいと思いました。
時は流れ、戦乱は膠着した状態になりましたが続いていたのです。
そして1473年、西軍の指揮官・山名宗全殿、東軍の指揮官・細川勝元殿が相次いで亡くなりました…。
つづく…
次回をお楽しみに〜