私は北条早雲(ほうじょうそううん)の子・幻庵(げんあん)です。
(早雲は最初は伊勢新九郎盛時(いせしんくろうもりとき)と名乗っています。)
盛時は駿河国に入り、妹の桃に再会しました。
盛時「義忠(よしただ)殿が討死とは…残った龍王丸(たつおうまる)はまだ幼いのに。」
桃「夫は武士です。戦で亡くなるのは本望だったことでしょう。ただ龍王丸には不憫でなりません。幼少の身で家督争いに巻き込まれるとは…。」
義忠さんは今川義忠さんのことで桃の旦那さん。2人の子が龍王丸くんだよ。
桃の話によると家督争いの相手は義忠の従兄弟・小鹿範満(おしかのりみつ)殿で小鹿側には今川氏の家臣である三浦氏(みうらし)や朝比奈氏(あさひなし)などが付いていました。
さらに…
桃「堀越公方の足利政知(あしかがまさとも)様の家臣の上杉正憲(うえすぎまさのり)殿や扇谷上杉家(おうぎがやつうえすぎけ)の家臣の太田道灌(おおたどうかん)殿まではこの家督争いに介入し、小鹿を押しているのです。」
扇谷上杉家って関東管領の上杉氏の庶家なんだ。ちなみに上杉氏の嫡流が山内上杉家(やまのうちうえすぎけ)。扇谷上杉家の太田道灌さんは武将としても学者としても一流の人物なんだよ。
盛時「やつらの目的は今川氏を関東側に付けておきたいのだろう。」
桃「我が方は不利では…。」
盛時「心配致すな。わしは幕府の命できておるのだぞ。策はある。」
盛時には確固たる自信があるようでした。そんな盛時を見て桃は安心したのです。
盛時は仕えるようになったばかりの小太郎(こたろう)に小鹿範満殿宛ての文を渡すように命じました。
盛時「文は小鹿と会う場所と日時を指定しておる。小太郎、頼むぞ。」
小太郎「お安い御用です。任せてくだされ。」
一刻後、小太郎は盛時の元へ戻ってきました。
一刻って、だいたい2時間くらいかな。
小太郎「盛時様、小鹿は文のとおりの場所と日時で会うことに承知しました。」
盛時「よし。では、わしも準備に入ろう。桃、筆と紙を用意してくれ。」
桃「兄上、何をするのです?」
盛時「ふふっ、まあ任せておけ。」
2日後、盛時は小鹿範満殿と会う場所、今川館に向かいました。
盛時の側には小太郎と新次郎(しんじろう)が武士の姿で付いておりました…。
つづく…
次回もお楽しみに〜