私は北条早雲(ほうじょうそううん)の子・幻庵(げんあん)です。
(早雲は最初は伊勢新九郎盛時(いせしんくろうもりとき)と名乗っています。)
盛時は今川館に入り、小鹿範満(おしかのりみつ)殿とその一派と会談に臨みました。
その場には小鹿範満殿を支持する堀越公方・足利政知(あしかがまさとも)の家臣、上杉正憲(うえすぎまさのり)殿と扇谷上杉家(おうぎがやつうえすぎけ)の家臣、太田道灌(おおたどうかん)殿もいました。
盛時「さて、此度の家督争い、幕府としては早く解決を望んでおる。」
範満「ならばわしが後を継ぐのが今川家の為になる。龍王丸(たつおうまる)殿はまだ幼い。当主にはなれぬ。」
盛時「しかし、龍王丸は亡き義忠(よしただ)の子、正当な嫡男である。それに今川家の為というが、なぜ今、争いが起きておる?」
正憲「今の状況で幼い当主では今川家は成り立たぬのだ。幕府が口出すことではあるまい!」
盛時「正憲殿!堀越公方は前将軍・義政(よしまさ)様が派遣したものではないか!幕府が口出すなとは何事か!」
盛時の一喝で上杉正憲殿は黙ってしまいます。
盛時「駿河国は関東に対するに、重要な地。争いが長引いては困るのだ。」
範満「ならばどうせよと…?」
盛時「これを見てくだされ。」
盛時は1通の書状を出しました。
盛時「これは義政様から龍王丸殿、家督相続を認めることの御内書。幕府は龍王丸殿に今川家を継がせるおつもりだ。」
その書状には義政様の花押が入っていました。
花押って署名の変わりに使用される記号、符号なんだ。署名した本人と他の人を区別するのに使われたんだよ。
盛時「ただ、範満殿が言われるとおり幼い龍王丸殿では心もとない。そこで龍王丸殿が成人するまで範満殿が後見人として当主を代行してほしいのだ。」
範満「わしが龍王丸の後見人になると?」
盛時「そうだ。平和的に解決するにはこれが良策と思うが。」
小鹿側は盛時の策にざわつていました。
盛時「これに反対するものは、どちらの陣営に関わらず、幕府に反抗するものとして罰せらまするぞ!」
また盛時が一喝したことでざわつきが治まります。
ここで盛時に従えていた小太郎(こたろう)が1つの太刀を出しました。
小太郎「盛時様は駿河国に来る途中に野盗に襲われました。この太刀はその野盗が落としていったもの。この太刀の持ち主を調べれば盛時様…いや幕府に反抗するものがわかりまする。」
小太郎の出した太刀を見て、一同は静まり返りました。
うつむいているものもいたのです。
盛時さんを襲った野盗の黒幕がこの中にいたんだね。
盛時「一同、意見もないようですな。では、今川家の家督は龍王丸殿が継ぐこと、そして範満殿が後見人として龍王丸殿成人まで当主を代行すること、これで決定致す!」
その場の一同は何もいえず、決定に従うしかありませんでした。
盛時は事の次第を妹の桃にいち早く知らせようと今川館を出ようとすると、1人の武士が盛時に声を掛けました。
それは太田道灌殿でした…。
つづく…
次回をお楽しみに〜