私は北条早雲(ほうじょうそううん)の子・幻庵(げんあん)です。
(早雲は最初は伊勢新九郎盛時(いせしんくろうもりとき)と名乗っています。)
盛時は駿河国下向の許しを将軍・足利義尚(あしかがよしひさ)様から得ました。
自邸に戻った盛時は妻の陽子(ようこ)に胸の内を打ち明けました。
盛時さんの妻は将軍に仕える奉公衆の小笠原政清(おがさわらまさきよ)さんの娘なんだよ。あっ!陽子って名前は創作だからね。
盛時「わしは駿河国に下向するぞ。」
陽子「今川氏の争いを治めるのですね。」
盛時「それだけではない。わしはわしが治める国を作りたいのだ。だから…もう京には戻らん。」
陽子「殿の治める国?」
盛時「民と一緒に作り、わしが民を守る、そんな一国を作るのだ。」
陽子「将軍様に仕えるのを辞めるのですか?」
盛時「そうだ。幕府には先はない。陽子…わしに付いてきてくれるか?」
陽子「はい。私は殿の正室です。どこまでも一緒です。」
盛時は陽子の言葉で揺るぎない決心をしたのです。
盛時「よし!まずは駿河国の騒ぎを鎮めて、それからそなたと伊豆千代丸(いずちよまる)を呼ぶことにする。一緒に京を出たら幕府に怪しまれるからな。」
こうして盛時は京を出発し駿河国へ向かいました。
盛時は駿河国に向かう途中で伊勢国に寄りました。
それは伊勢神宮にお参りするためでした。
伊勢神宮には盛時の他にも武士や民らがお参りしていました。
盛時「こんな乱れた世、皆、何かにすがりたいのだな。」
その中で盛時は思わぬ人物に再会したのです。
それは大道寺重時(だいどうじしげとき)殿でした。
重時「盛時殿、久しぶりですな!以前会った時は
お互いに悩んで禅をくんでいる時でした。」
盛時「そうだった。重時殿は悩んだ結果は出たのですな⁈ 」
重時「わしの治める国を探したいと思い出奔しました。」
盛時は重時が自らと同じ思いだったことに驚きました。
盛時「わしも同じです。」
重時「そうでしたか。わしの他にも同じ思いを持つものがいます。盛時殿、今宵は一緒に飲みませぬか?是非語り合いたい。」
盛時「おぉ、飲みましょう!」
盛時は重時殿に誘われ同じ思いを持つものたちと一晩飲み明かしました…。
つづく…
次回をお楽しみに〜