私は北条早雲(ほうじょうそううん)の子・幻庵です。
(早雲は最初は伊勢新九郎盛時(いせしんくろうもりとき)と名乗っています。)
1487年、盛時は小鹿範満(おしかのりみつ)を討ちました。
そして今川館に今川氏の正当な当主、龍王丸(たつおうまる)を迎える準備に入りました。
盛時「皆、戦で壊れたところは至急、修繕するのだ。そして館の中を綺麗に掃除もせよ。龍王丸殿を立派な館で迎えねばならん。」
そして、3日後、龍王丸とその母で盛時の妹・桃が今川館に入ったのです。
盛時「龍王丸殿、お待ちしておりました。ご覧のとおり、館は小鹿範満から取り戻しましたぞ。」
龍王丸「叔父上。此度の争い、叔父上がいなければ、こうも早く決着はつかなかった。本当に感謝しております。」
桃「兄上、ありがとうございます。」
盛時「なんの。わしだけでなく、一緒に戦ってくれた兵の力もあったからの。」
兵の中には民もいたのです。
盛時「今は亡き義忠(よしただ)殿が民に慕われていたのでしょう。その民が味方になってくれたおかげ。」
義忠さんは龍王丸くんのお父さんだよ。
龍王丸「叔父上、今後もこの駿河で私を補佐していただけませぬか?」
盛時「わしが駿河に?」
龍王丸「叔父上は我が身内。私はまだまだ経験不足。叔父上の力で支えてほしいのです。」
盛時「わしは幕府、将軍家に仕えるもの。幕府のお許しが入ることになる。」
桃「それは今川家から幕府にお許しを得ましょう。」
盛時「それならば、わしもありがたい。」
盛時は幕府の許しがあれば京に残っている妻の陽子(ようこ)や子の伊豆千代丸(いずちよまる)を堂々と駿河に迎えることができると考えたのです。
こうして盛時は正式に今川氏の当主となった龍王丸から領地と興国寺城(こうこくじじょう)を与えられました。
興国寺城は今の静岡県沼津市にあるんだよ。伊豆国に近い場所だね。
明けて翌1488年、盛時は興国寺城に妻、陽子と伊豆千代丸を迎えました。
陽子「殿!」
盛時「達者であったか⁈ 」
陽子「はい。伊豆千代丸も元気に育っております。」
盛時「うむ。小太郎(こたろう)、2人を守ってくれたこと大儀であった。」
盛時の忍び、小太郎は京に残り陽子と伊豆千代丸を守っていたのです。
小太郎「当然のことをしたまでです。これで盛時様の領地を得ましたね。」
盛時「うむ…いやまだまだ、これからだ。これで満足ではない。」
盛時の目標は自らの国を持つこと、これは盛時の第一歩だったのです…。
つづく…
次回をお楽しみに〜