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攻める国民的大女優

(C)2021「いのちの停車場」製作委員会

いのちの停車場


大病院で救急救命の現場で活躍していた医師咲和子(吉永小百合)は医療事故の責任をとって退職。金沢の開業医まほろば診療所の雇われ医師となる。まほろばは仙川院長(西田敏行)の考えで在宅医療を中心に活動している。救命を是としていた咲和子は先端医療とは程遠い地方医療の実態に困惑するが、さまざまな患者と接して次第に仙川の考えを理解していく。


(C)2021「いのちの停車場」製作委員会


初見。最近の吉永さんの作品は攻めている。「最高の人生の見つけ方」などはコメディ色強めのミートヤング・ロードムービー。優等生イメージの払拭を図っていると思われる。本作、医療をテーマにしているが、医療界のタブーに触れる意欲作。


検査・治療・手術という画一的な医療ではなく、患者の望みに応じた医療。型にはめてマニュアルに沿って効率的に回す。医療経済がベースの考え方は理解する。が、人は誰しも同じじゃない。近頃、ようやく「終末医療」などは認知されてきた。


(C)2021「いのちの停車場」製作委員会


ケアもできないのに在宅医療を望む老夫婦。芸事ができなくなったら生きていてもしょうがないと主張する芸妓。仕事のために治療費に糸目をつけないIT起業家。咲和子は地方の開業医で長い医師生活では得られなかった体験を重ねていく。


難病の子どもがいる。助けたくてお金を工面する看護師の野呂(松坂桃李)。が、お金で完結させないところが印象的。原作力の高さが想像できる。ラストの咲和子の選択は現代医療でも倫理面でどうすることもできない難題に挑む。


(C)2021「いのちの停車場」製作委員会


60代前半の役の吉永さん。実年齢より若い役だけど、大きな違和はなし。固定され期待されるキャラを打ち破るのは至難。ベテランになっても挑戦する姿は眩しい。師弟関係に近い役の西田さん、キーパーソンの田中泯さんが最強アシスト。


並行して描く若手世代のストーリーは広瀬すず松坂桃李がリード。この二人、およそ1年後に「流浪の月」で衝撃共演。子役佐々木みゆちゃんは「万引き家族」のメインキャスト。ほか小池栄子石田ゆり子ら患者役も豪華。


(C)2021「いのちの停車場」製作委員会


人生の選択。どのように生きるか、は命をどう使うかと同意。治療の選択については、私事で恐縮だが両親の闘病時に直面した。現代医療の現場でも患者の人生、選択を尊重する考えはずいぶん浸透している印象をもっている。


そんな経緯があって自分の人生についても考えた。「どう生きるかは、どう死ぬか」。言い換えれば、死に方がその人の人生そのもの。そこまでは考えたのだが…。個人的な感想…本作ラストの締め方は、遺される人のことを無視した結論かと。



 DATA

監督:成島出/脚本:平松恵美子/原作:南杏子

出演:吉永小百合/広瀬すず/松坂桃李/小池栄子/松金よねこ/泉谷しげる/佐々木みゆ/南野陽子/柳葉敏郎/森口瑤子/伊勢谷友介/石田ゆり子/南らんぼう/田中泯/西田敏行



hiroでした。



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