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時代が支持したアウトロー

タクシードライバー


孤独な青年トラヴィス(ロバート・デ・ニーロ)は夜勤のタクシードライバーの仕事を始める。夜のニューヨークはドラッグや買春、暴力に溢れ、街に蔓延る「怠惰」に苛立ちを覚えるトラヴィス。街中でパランタイン上院議員(レナード・ハリス)の選挙事務所で働くベッツィー(シビル・シェパード)に一目惚れし、デートに誘い出すことに成功する。



マーティン・スコセッシ×ポール・シュレイダー×デ・ニーロによるレジェンド作を今ごろになって初見(笑)。いや、観たと思っていたのに全然知らなかった。なので初。映画音楽の巨匠バーナード・ハーマンは本作が遺作になる。


ドラッグ、コールガール、暴力…これら犯罪を取り締まるべき政治家も誰も真剣に考えていない。ベトナム戦争という国民的憂鬱をやり過ごした国民の怒りはどこへ向ければいいのか。トラヴィスの抱く怒りは国民の怒りだ。


優男に見える「普通の人」の内に秘める凶暴性。アナーキーな作品として高い評価を得ている。当時の時代背景ならさもありなん。ただし、公開から半世紀近く経ってからの初見という状況だと、正直ピンと来なかった。


暴力には暴力、悪には悪で対抗する病んだ世界。暴力が「英雄談」として讃えられる。「ジョーカー」と同じ基軸。環境で闇堕ちしたジョーカーに対してトラヴィスはナチュラルなのは大きな違い。架空の街でないリアルさも重かった。



スコセッシといえばデ・ニーロかディカプリオ。そのデ・ニーロ、1976年だから33歳。若い。シャイな見た目と裏腹な危険さは今も同じ。「ゴッドファーザーPARTⅡ」の2年後の作品で「ディア・ハンター」はさらに2年後。伝説の渋滞。


13歳のコールガールで話題のジョディ・フォスター。今や映画界の重鎮にまで成長。フォスターのせいで霞んだ感のあるヒロイン、シェパードは70〜80年代のアイドル的な人気者。ハーヴェイ・カイテルはスコセッシ組の長老。


ニューシネマの時代。、アメリカ人は社会や政府に抗うアウトローに歓喜した。そういう流れで受け入れられたトラヴィス。現代、悪をテーマにした作品は多い。見慣れたせいか、一歩下がって観てたかな。本作があったから今があるんだろうけど。


ピンとこなかったのは好みの問題かな。そういえば「ジョーカー」も凄いと思うけど好きではない。事件を起こしたタクシードライバーが無罪。相手がポン引きなら殺してもセーフ? そういう時代? 何気にそこが「衝撃のラスト」だったかも。



 DATA

監督:マーティン・スコセッシ/脚本:ポール・シュレイダー/音楽:バーナード・ハーマン

出演:ロバート・デ・ニーロ/シビル・シェパード/レナード・ハリス/ハーヴェイ・カイテル/ピーター・ボイル/アルバート・ブルックス/ジョー・スピネル/ジョディ・フォスター



hiroでした。



アイリッシュマン←スコセッシ×デ・ニーロ


ヒューゴの不思議な発明←もスコセッシ作品


ジョーカー←どうしても連想しちゃうよね