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真っ白な紙に命を吹き込む

(C)砥上裕將/講談社

(C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会

線は、僕を描く


ある後悔を抱えた大学生の霜介(横浜流星)は、水墨画イベントの設営バイト中に展示されていた椿の絵に涙する。その会場で偶然、水墨画の巨匠篠田湖山(三浦友和)と出会い、突然弟子にならないかと誘われる。後日、断るために湖山を訪ねた霜介は初めて描いた水墨に魅せられ、弟子ではなく生徒になりたいと申し出る。


(C)砥上裕將/講談社

(C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会


真っ白い紙。黒い点がひとつ。それは小さい穴か、雪上の木の実か。一本の線は地平線、水平線、山の稜線、川の流れ、木々の枝。何もない白い紙に描き手が命を吹き込む。やがてそれは美しい花になり、壮大な大自然にもなる。


線と墨の濃淡だけで描く水墨。若い頃なら「地味」としか思えなかった芸術。ようやく大人の感性が芽生えたのか「水墨って深くて広い」と思えるようになった。そう、見る側の感性もそれぞれ。想像力を掻き立てられ、その解釈は無限に広がる。


(C)砥上裕將/講談社

(C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会


紙の上を筆が走る。その鋭く鮮烈な音。何だこの緊張感。消しゴムで消すことはできない。描き直しのきかない一発勝負のヒリヒリした感じ。美しくて、繊細で、清々しくて、気持ちのいい映像作品。ディレクションは「ちはやふる」の小泉徳宏


描かれるキャラクターは主に霜介と湖山、そして湖山の孫千瑛(清原果耶)。それぞれに思うところがある。その情報の出し入れ加減がうまい。湖山の自宅兼アトリエも印象的。日本家屋独特の空間と窓の多さ。この家も登場人物の一人。


(C)砥上裕將/講談社

(C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会


主演の横浜、アクションができるのは有名。なのにアクション作品は多くはない。本作も然り。内向する主人公の心象。キャリア史上屈指の演技。ヒロインに清原。彼女の出演映画ってハズレがない印象。本作も可愛かった。←好みの問題か?


二人の共通の師匠役が三浦。若い時からずっと衰退期なしで活躍を続ける。日本映画界の至宝の一人。江口洋介がナチュラルに近い気がする。「ドラゴン桜」以来成長著しい細田佳央太が主人公サポート。河合優実は映画界期待の新星っぽい。


(C)砥上裕將/講談社

(C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会


若い人が「和」や「伝統」に触れる。小泉監督の得意芸。古い、ダサい、と言ってるほうがダサいのかな。多様性の時代。何に打ち込むのかも人それぞれだ。みんなと同じじゃないといけない同調圧が薄くなってきた。日本人も変わってきた証か。


いい年齢になってきた。運動能力の制約が出てき時に、と「俳句」に興味を持っていた。またひとつ候補ができてしまったが、それまで感性を鈍らせないでいないとね。



 DATA

監督・脚本:小泉徳宏/脚本:片岡翔/原作:砥上裕將

出演:横浜流星/清原果耶/江口洋介/細田佳央太/河合優実/矢島健一/富田靖子/三浦友和



hiroでした。



ちはやふる←小泉監督代表作


流浪の月←横浜流星が嫌なヤツに


まともじゃないのは君も一緒←清原果耶にハズレなし