NETFLIX


60年前に投じられた問い掛け

プルートゥ


人間の生活にロボットが欠かせなくなった時代。7体の世界最高水準ロボットのひとりモンブランが何者かによって破壊された。同じ頃、ロボット開発に関わるある科学者が殺され、担当捜査官となったユーロポールのロボット刑事ゲジヒトは二つの事件の関連性を指摘する。そんななか、2体目のロボットが犠牲となる。



手塚治虫の国民的SF漫画「鉄腕アトム」の中でも人気のエピソード「地上最大のロボット」を「20世紀少年」の浦沢直樹がリメイク。コミック全8巻は持ってる。そんな大好き作品をNETFLIXが待望のアニメ化。全8話、約8時間を一気見。


なかなかアトムが出てこない(笑)。初登場は第1話のラスト。未読の手塚版はどうなのかは不明だけど、本作はアトムと併せてゲジヒトがW主役。そして、逆サイドの主人公プルートゥもまた終盤まで姿を現さない。観るのにミステリー経験値は必須。



テーマは深い。ひとつはロボット=人工知能=AI。発達したAIは感情を持つのか。感情を持ってしまったAIはどういう行動を取るのか。原作が発表されたのは1964年。60年後の今、ようやくAIという概念が身近になった。手塚先生預言者論も納得。


「憎しみ」という感情を持ってしまったAIが人間に問う。人間は憎しみを消せるのか。「憎しみは何も生まない」というセリフは戦後20年の当時の人々に刺さったことだろう。そして、現代の人々にも。人間って成長しないものなのね。



浦沢の相棒長崎尚志がプロデュース。タブーとされた手塚作品のリメイクを許諾した手塚眞と手塚プロダクションの監修・協力でコミック化が実現。アニメ化にあたってはマッドハウス、MAPPAを立ち上げた丸山正雄の3つ目の会社M2が制作を担当。


「子ども向け」とは縁遠い深遠な物語。巨匠の預言と思われても不思議じゃないアイテムたち。2020年代の今、人気作家浦沢直樹が奮い立つのも納得。当時「子ども向け」だった「鉄腕アトム」の中でどのように展開されたのか、気になるところ。



60年前の「プルートゥ」が描かれた時代。そして今、再び必要とされる時代が訪れた…いや、たぶん、世界的にはあまり変わっていないままなのだろう。今、「手塚治虫」という世界的ブランドをワールドワイドに配信する意味は大きいと思う。


「怒り」に支配されたアトムは衝撃。やられたらやり返せでは、怒りが怒りを生むだけ。わかってはいる。じゃあ被害者家族ってどうすればいい? あの国とあの国の戦争は? いまだ100%納得の「正解」アンサーを聞いたことがない。難題だ。



hiroでした



MONSTER←浦沢直樹×マッドハウス


千年女優←マッドハウス作品


呪術廻戦←MAPPAの代表作