タイガースは とうとう 最下位まで落ちてしまった。
2001年以来だそうだが 私はあまり落胆していない。

この転落は今まで 生え抜きの選手を育ててこられなかった負の遺産を金本監督が引き継いでいるだけで 超変革はこれからなのだ。今の首脳陣達の通信簿が出るのは 来年、再来年の話になる。あの春の沖縄キャンプのように明るく・厳しい雰囲気で試合に臨んで欲しい。

ただ、現状の問題として、タイガースの打線は相変わらず 機能していない。

6月30日のベイスターズ戦、7月1日のドラゴンズ戦と共に3安打と先発投手を打ちあぐんだ。2日は勝利したものの4得点、3日は 3得点と、相手に先制や逆転を許すと敗戦のムードがベンチからも漂ってくる。

監督もじきじき 高山や中谷らのバッティング指導にあたっているが なかなか 結果が伴わない。その金本監督が若トラを指導する時に重要視しているのが「軸」である。

マスコミの報道にもあるように、この「軸」を作るのが 大変難しい、と監督自身のコメントにもある。29日の雨天中止時も 1塁ベンチ裏のスイングルームで高山や中谷に「軸」を意識した指導を行っている。

こういうことからも、金本監督のバッティングの基本は この「軸」であり、それに強い信念を持っていることがわかる。この事自体に何の異論もない。私も「軸」がバッティングの原点だと思っている。

しかしながら野球ファンの方々の中にはそもそも「軸って 何 ?」と思っている方もいるだろう。なので、今日のブログは 少々 マニアックになってしまうが バッティングにおいての「軸」を説明しようと思う。

まず、バッティングとは回転運動である。とは言っても、浅田真央ちゃんや羽生結弦さんみたいに何回転もするわけではない。しかし物理的には360分の10度でも360分の90度でも回転すれば回転運動に分類され、従ってバッティングも回転運動なのである。

回転運動には必ず「軸」が存在する。バッティングでは打者が投手寄りの足をステップさせ地面に着地した時、ここからが「軸」の話になる。

しかし、言うは易し行うは難しではないが、理想の「軸」を作るのは難しい。具体的に説明すれば、バッティングにおける回転軸は 前にも後ろにも、そして左にも右にも動かないのが理想だ。

この動かない「軸」の上に頭蓋骨があるから必然的に頭も動かない。動かない頭の中に目があるから目も動かない。

読者の皆さん、何となくイメージは出来ましたか? ところが、この「軸」の正体は 一つではない。肩を回す上半身の「軸」と骨盤を回す下半身の「軸」は共通しない。この共通しない2つの「軸」を1つにして使うので 非常に難しくなるのだ。

この2つの軸の結合部分はクネクネしていて まっすぐな筋の通った1つの「軸」にする事は ひと苦労である。

指導者の中には、「軸」を作る為に脊椎(背骨)を意識しろ、と言う人も多いが 脊椎は背中の皮膚に近い所にあるので実際の「軸」はもっと中寄りにある。 なので厳密には脊椎は「軸」ではない。

もちろん、十人十色なので脊椎を意識すれば上手くいく人もいるが脊椎を意識した為に投手寄りの肩が深く入ってしまう人もいるので 必ずしも「脊椎=回転の軸」にはならない。

ここで皆さんは、ボディ・マッピングという言葉をご存知だろうか?
プロの世界では非常に重要な言葉なのだが、直訳すると身体地図だが、端的に言うと、自分の身体や身体が働くのに必要な位置を正しく認識しているか?ということだ。正確なボディマッピングができているか、いないかで、選手のパフォーマンスは大きく変わる。

たとえば、プロ野球選手の多くが認識している「軸足の股関節」は、投手なら一本足になった時のプレートを踏んでいる足、打者なら捕手寄りの足で、要はそこに下半身の力を貯めようとしている部分なのだが、ほとんどの選手が股関節だと思っている場所は 実は鼠径部のことなのである。

鼠径部とは北野たけしさんが「コマネチ」とする部分で実際の股関節は もっと身体の深い部分にある。ここで正しく認識すべき股関節を勘違いで鼠径部を認識してしまうとこれは直接パフォーマンスに影響する。実際、普段、軸足にカが貯まらなくて苦労している選手は 本当の股関節を認識した途端、パフォーマンスは向上する事が多いのだ。

もうひとつ、「腕を振れ」と言われても なかなか 上手く腕を振る事が出来ない投手もいる。この場合も重要なのは肩と鎖骨の間に胸鎖関節があるのだが、この胸鎖関節から 腕を振ろうとすると肩の可動域が広がり 腕を強く振ることができる。そして、それを知って初めて正しく腕が振れてパフォーマンスが向上する投手もいる。

つまり、身体のどこかを正しく意識する事によってパフォーマンスが向上するというのがボディ・マッピングの真髄なのだ。

選手達は人それぞれ技術的な欠点を持っている。身体のほんの一部を意識する事でその欠点を克服していこう、というわけだ。

人間の骨は 206個ある。骨と骨を結合している部分が関節だ。その他、筋肉は大小合わせて600あり、それを繋ぐ腱もある。自分の身体のどこを意識すれば上手くなるのか、大変な作業だがこれを探す事も練習なのである。

バッティングの回転軸は 必ず 存在する。しかし、目には見えない。この見えない「軸」を身体のどの部分を意識すれば、前後にも左右にも動かない、まっすぐな筋の通った一本にできるか、若トラ達には その作業が待っている。

意識する場所は、たった一つかもしれないし、意外に多いのかもしれない。それは足の裏かもしれないし、内転筋かもしれない。そんな自分の身体の中にある宝箱を見つけて欲しい。

ひとつ忠告をすれば、それらを感覚だけで覚えてしまうと長続きはしない。感覚は すぐに変わる。極端に言えば、寝て 起きると感覚が変わっている事もある。感覚で覚えたものは 不安定なのだ。

自分の身体の一部に しっかり マッピングをし、自分自身が上手くなる為の方法を 一日でも早く見つけて欲しいと 切に願っている。